異世界隠密冒険記

リュース

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第一部「六色の瞳と魔の支配者」編

危険海域に突入

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 その後、一日遅れでダイダル海域へ突入した。


「ようやくダイダル海域か・・・。」

「ここからが危険なはずなのに、既に皆、死にそうだぜ?」


 Aランクの冒険者二人、シェンドとドランが愚痴を漏らす。


「つか、いくら何でもヤバすぎるぞ?」

「そうですね。何だって皇帝種がうようよ出てくるんだ・・・?」


 ダイダル海域に入る前だというのに、既に二桁数の皇帝種と戦っている。

 この二人もAランクだけはあって、力を合わせれば撃退くらいはできる。

 しかし、あの数が連続して襲ってきたら、対応は不可能だ。

 黒白の翼が居てくれてよかったと感謝の気持ちが絶えない。

 もし自分たちだけだったら、とうに壊滅していたのは間違いないのだから。


「それにしても、アクアさんは可愛かったな・・・。」

「だな。あれ程の女は滅多にいないぜ。」


 二人の脳裏に浮かぶのは、クロトに抱きしめられてあぅあぅ言っている姿。


「まあ、お似合いの二人だよな。」

「そうですね・・・はぁ、羨ましい。」


 まだ二十代と若いシェンドはため息を吐いた。


「そういえば、マリアとかいう金髪の美女もクロトの恋人だってよ。」

「ええっ!?やっぱりモテるんですね・・・。」

「まあ、あの容姿にあの性格、何よりあの強さだからな。」

「皇帝種がいつの間にか真っ二つになった時は、顎が外れるかと思いました。」

「S+ランクってのは凄いんだな・・・。」

「あれは人間と思ってはいけませんね。」

「失敬な。ちゃんとした人間だよ?」

「「うわぁぁぁぁっ!?」」


 突然、声が聞こえたかと思えば、目の前にはクロト。


「それで、誰が人間じゃないって?」

「「すんませんっした!」」


 ドランとシェンドは平謝りしたそうだ。








「それで、これからのことなんだけど。」

「あ、ああ。なんだ?」

「皇帝種ってあんなに沢山出るの?」

「んなわけあるか。明らかに異常だ。」

「だよね・・・。」


 そうだろうということは分かっていたので、特に驚きもしないクロト。

 
「ダイダル海域に入ったら更に危険な目に会うから、覚悟しておいてね?」


 クロトは気になる事を言い残して、いつの間にか消えていた。


「・・・更に危険なことって何ですかね?」

「俺が知るか。伝説級の魔物でも出てくるんじゃないか?」

「ははは・・・。冗談にしても笑えませんね・・・。」

「だな。はっはっはっ!」




「それが冗談では済まない可能性があるんだよね・・・。」


 クロトの呟きは誰にも聞かれることはなかった。












 翌日、ダイダル海域に入ってから半日。

 いきなり問題が起こった。


「・・・魔物の群れが近づいてくるよ。」

「数はどれくらいだ?」

「えっと・・・・・・約1000体。」

「・・・・・・。」


 カレンが面倒そうな顔をしながら沈黙。

 マリアとアクア、ナツメは、苦い顔をしている。

 クロトはそんな四人を尻目に、ドランに問いかける。

 
「そういう訳なんだけど、どうする?」

「どうするって・・・まあ、千体くらいなら何とかなるだろう。」


 黒白の翼が居れば、それくらいは大したことないと思っているようだ。

 だがしかし、そうは問屋が卸さない。

 クロトは衝撃の発言を口にした。


「・・・全部皇帝種なんだけど?」

「「「「・・・・・・なっ、なんだってーっ!?」」」」


 ヤバすぎる状況に、冒険者たちが一斉に叫ぶ。

 皇帝種は、一体現れただけでも大事件なのだ。

 それが千体となると、国が滅びて然るべきだ。

 皇帝種の単独討伐は、A+ランクは必要だ。

 A+ランクの冒険者は、世界全体で50人。

 到底敵わないだろう。

 厳密に言えば、勝てないこともないのだが、その前に国が滅ぶ。


「それは、異常過ぎはしないか・・?」

「うん、僕もそう思うよ。原因に心当たりはあるけど。」


 クロトの脳裏には、某赤髪の魔王の姿が浮かぶ。

 考えていても仕方が無いので、行動に移す。


「マリア、一緒に来て?」

「分かりましたわ。」


 クロトとマリアは翼と羽を生成し、空へ飛び立つ。

 二人は魔物たちの居る海の上空へ。

 目の前に、魔法陣を刻印した全天結晶を置く。 



「じゃあマリア、合わせてね?」

「言われずとも、そのつもりですわ。」


 白のロングコートを風になびかせながら、肯定の返事を返すマリア。

 そして、二人は魔法を放った。


「天神法術・天落世界!」

「天魔神法術・地落世界!」


 クロトのユニークスキル「天神法術」とマリアのユニークスキル「天魔神法術」。

 この二つは、特殊条件6「共鳴する魂」により取得した。

 取得したのは、二人が全力の模擬戦をした時だ。


 天落世界は、天が落ちてくるかのような法術。

 地落世界は、世界の上下が反転し、地が落ちてくるかのような法術。


 そして二人は手を繋ぎ、本来は不可能なはずの、別人間での合成を始めた。

 数分後、その法術は発動した。


「「二重合成法術・天地邂逅!!」」


 上下から迫る二つの法術に挟まれて、魔物たちは圧殺。

 文字通り全滅した。



 両者が合成に成功したのは、魔法陣の効果だ。

 クロトが使ったのは、一定範囲で融合と合成を多重連鎖させる魔法陣。

 これにより、無理やりに合成したのだ。

 消費が大きいのが難点なので、改良は必須だろう。


 なお、地面はアクアが凍らせた海があれば十分のようだ。







「ところでマリア、よくあれだけで分かったよね?」

「あれくらい分かりますわ。」

「絶対分からないと思っていたんだけどな・・・?」

「では何故そんな分かり辛い言い方をしたんですのっ!?」

「マリアのそういうツッコミを求めていただけだよ。」


 クロトは唐突にマリアにキスをして、船に戻った。

 不意打ちを喰らったマリアは、何も言えなくなってしまった。

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