異世界隠密冒険記

リュース

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第一部「六色の瞳と魔の支配者」編

神水晶

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「エメラ・・・クロトがいじめますわ・・・!」

「ん・・・。自業、自得・・・。」


 マリアがエメラに助けを求めるも、スルーされた。

 エメラの言う通り、自業自得だ。




「そろそろ断絶空間を解除するから、準備してね?」


 クロトが隠密者を発動させながら、二人に声を掛けた。

 すると二人は、即座に真剣な雰囲気に切り替わった。

 このあたりの切り替えの早さは、流石一流と言える。



 断絶空間を解除して、空間の出口まで進む。

 入口から近かったからか、途中でゲイザーを見ることもなく、辿り着いた。

 そして、空間を脱出。


 直後に、ドレファトの町まで転移して、ようやく一息吐いたのだった。


 三人が向かったのはグレンの工房。

 神水晶を剣の進化に使ってもらうのだ。


「グレンさん、神水晶を持ってきましたよ。」

「なにっ?よし、貸してみろ。」


 クロトから神水晶と星影の龍剣を受け取ったグレンは、1つ尋ねて来た。

 
「神水晶が余るが、そっちの二人の剣を強化した方が良いか?」

「そう、ですね・・・。では、お願いしてもいいですか?」

「任された。ただ、どんな完成形になるかは分からんぞ?」

「完成形が分からない、ですか・・・?」

「ああ、そうだ。」


 その後のグレンの話では、神水晶は、使い手によって性質が変化するそうだ。

 クロトの場合は、それが隠蔽効果だった、と。

 
「ですが、どうやって作成段階で、使い手の事を知るんでしょうか?」

「恐らく、ゲイザー討伐時の記憶だろう。他に考えつかん。」


 つまり、討伐に関わらなければ、神水晶は無意味な代物ということだ。

 そんなことまで解析していたとは、流石としか言えない。


 だが、グレンは満足していないようだ。

 防具作成のときの誤算もそうだが、一度鍛え直すべきか思案中だそうだ。


 


 後日、クロトは星影神の龍剣を受け取った。

 その数日後、エメラとマリアも、剣を受け取った。


 エメラの剣の銘は、風雷神の烈剣。

 マリアの剣の銘は、天魔神の混剣。


 二人はその支払い金額に顔を引き攣らせていた。

 あのエメラでさえも、だ。

 貴族の税収より格段に高かったようだ。


 また、これでも半額以下になっているとクロトに聞かされて、更に驚愕。

 
 足りない分は、クロトが適当に包んだ恩恵三種セットで払った。

 グレンはご満悦だ。


 エメラとマリアはとても申し訳なさそうだったが、クロトに支払いを任せた。

 こうなることを分かっていて黙っていたクロト。

 ため込んでいても仕方が無いので、使いたかったのだ。

 主に、アイテムボックスの容量を圧迫している恩恵類を。


 なお、マリアは大空の恩恵を持っているが、それでは払わない。

 いずれ必要になるかもしれないと、クロトが押しとどめたのだ。

 




「ん・・・。クロト・・・ごめん、ね・・・?」

「申し訳ないとしか言えませんわ・・・。」

「謝らないで?僕がやりたいからやってるんだし。」


 クロトは二人に謝罪をやめさせた。

 クロトは、やりたくないことはやらないタイプだ。

 それを良くわかっている二人は、ようやく謝るのをやめた。






 三人は王都の宿へ。

 梟の止まり木亭にて、エメラとマリアの武器、そのお披露目が始まった。


「・・・良い剣、羨ましい。」

「私は剣は使いませんが、途方もない力を感じます・・・。」


 ヴィオラは同じ剣士として、二人の剣を羨ましがっていた。

 アクアは、持ち前の感知で、剣の強大さを理解したようだ。


 また、ゲイザー戦の感想を聞いて、自分たちにはまだ早いと再認識したようだ。


 アクアとヴィオラも、レベルは80台後半。

 もうしばらくしたら、二人も連れて挑んでみようと決めたクロト。

 目標は、限界突破の使用無しでの勝利だ。






 現在、アクア&エメラ VS ヴィオラ&マリア という模擬戦が行われている。


 エメラとヴィオラが前衛、アクアとマリアが後衛だ。


 前衛の戦いは、エメラ有利かと思いきや、意外と拮抗している。

 やはり、ヴィオラの因果誘導は強力だ。

 エメラが攻めきれない。


 後衛の戦いは、アクアが僅かに優勢。

 魔法専任かどうかの違いが現れているのだろう。

 マリアも魔法の使い方は相当上手い。


 しかし、それに輪をかけて、アクアの技術は高い。

 適切なところで適切な魔法を、即座に選択し発動する。

 また、予想外の事態に備えた待機魔法も、常に3つ以上存在させている。


 その待機魔法の選択には、クロトも感嘆する。

 自分も同じ選択をするだろうと、自信をもって言えるからだ。



 全体としては、互角の攻防。

 ヴィオラがエメラに攻撃を喰らいそうな時は、マリアが牽制を入れる。

 アクアがマリアにできた隙を突こうとすると、ヴィオラから誘導が入る。



 結局、勝負がつかないまま引き分けとなったのだった。

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