異世界隠密冒険記

リュース

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第一部「六色の瞳と魔の支配者」編

法理の種

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 マリアは自分の感情に戸惑っていた。


 クロトと恋人になり、キスをした。

 それだけのことなのに、何故これほどまでに幸せな気分なのか。


 初めてのキスは、とてもいいものだった。

 気持ちよくて、幸福で。

 なぜ今まで、ただの友人で居ることに満足していたのか、理解できない。

 一度味わってしまったら、もう二度と離れられないと思うほどに、甘美だった。


 結局戸惑いは、戦闘が始まる直前まで続いたのだった。





 クロトとマリアは、法理の種を探していた。

 そして、たった今、それが生成されるだろう場所をみつけたのだが・・・。


「何か居るね・・・?」

「ええ、何か居ますわね。」


 そこには、キメラのような魔物が居た。


 解析結果は・・・獣皇帝、レベル74。

 レアスキル「獣皇帝の咆哮10」と「獣皇闘術7」が注意ポイント。

 体は、ライオン、トラ、ヘビなどの合わさったような形だ。


「どうやら、法理の種を狙ってるみたいだね。」


 そう言っている間に、敵もクロトたちに気づいて襲い掛かって来た。


「マリア、後衛を!」

「了解ですわ!」


 クロトが前衛、マリアが後衛となり、獣皇帝と戦う。

 この二人で様子見をするときの基本戦術だ。


 獣皇帝の能力値は、筋力と速力が高め。

 その代わり、魔力は低めだ。

 ゆえに、魔法属性に振った魔法剣を用いて戦う。

 
 対する獣皇帝は、手や足、尻尾の蛇での物理攻撃や、噛みつきなどで戦う。

 とてもシンプルだが、獣皇闘術の効果か、かなりのキレがある。

 動きも立体的で、読み辛い。

 シンプルであるがゆえの強さだと言えるだろう。

 
 しかし、今回は相手が悪かった。

 戦っている二人は、既に人外級の強さなのだ。


「天魔法術・魔縛!」


 獣皇帝が着地した瞬間を狙って、拘束魔法が発動。

 それを間一髪回避する獣皇帝。

 しかし、本命は次の天魔法術だった。


「天魔法術・天縛!」


 空中に突如、光る帯が出現。

 先程の魔縛をギリギリで回避した獣皇帝は、回避など出来ずに捕縛される。

 持ち前の筋力でなんとか脱出するも、その瞬間を狙っていたクロト。


「極天八奏連閃・全絶!」


 八連撃が、拘束から逃れた瞬間の獣皇帝に炸裂。

 拘束から逃れた直後は、どうしても隙が出来るものだ。

 獣皇帝は大ダメージを喰らい、動きが鈍くなった。

 これで、当てづらかった攻撃も当たるようになる。


「天魔法術・天魔必縛!」


 光と闇の帯が同時に出現し、獣皇帝の捕縛に入る。

 この天魔法術は、拘束力が強い代わりに速度が遅め。

 そのため、これまでは使い辛かった。


 拘束される獣皇帝。

 そこへクロトが一撃。


「極天一閃・全絶!」

「ガアアアアアアッ!?」


 クロトが獣皇帝の尻尾となっている蛇を切り落とした。

 獣皇帝は初めて悲鳴をあげる。


 尻尾を切り落とされた獣皇帝は、尻尾での攻撃ができなくなり、戦闘力が激減。

 拘束を破って、切り札となるスキルを発動させた。


「・・・グガアアアアアアアアアアアアアッ!!」


 レアスキル「獣皇帝の咆哮」

 これは、咆哮を耳にした者を怯えさせ、竦ませる効果がある。

 どれほどの強敵でも、数秒は確実にとまるはずの切り札。

 だがしかし、クロトにはまるで効果が無かった。

 精神系統のスキルなのがいけなかった。


 寧ろ、咆哮していた獣皇帝は隙だらけだ。

 
「極重雷連閃・天絶!」


 咆哮している数秒の間に準備していた剣技を叩き込んだ。

 
 と、その時、周囲から魔物が集まってきているのが分かった。

 咆哮にはそういう効果もあったようだ。


 それらに対応するのは、クロトの分身。

 待機させていた天落を発動し、魔物たちを圧殺する。

 皇帝種も居たのだが、それらも圧殺。


 いよいよ打つ手が無くなって来た獣皇帝を、攻め時と見たマリア。

 
「クロト、あれをやりますわ!」

「了解!」


 マリアの言葉を聞いたクロトは、獣皇帝を剣で弾き飛ばした後、退避。

 マリアが戦闘開始時から少しずつ構成していた天魔法術を完成させる。


「天魔法術・境界崩壊!」


 周囲一帯の空間が崩れていくような錯覚に襲われる獣皇帝。

 効果が終了した時には、満身創痍だった。


「極天一閃・全絶!」


 クロトにとどめを刺され、獣皇帝はその生涯を終えたのだった。

 
 境界崩壊は、巻き込まれると存在にダメージを受ける。

 クロトが使う必殺の一撃と似たような性質を持っているということだ。


 クロトの方は、当てづらい代わりに確殺できる。

 マリアの方は、当てやすい代わりに確殺はできない。

 おまけに、いくら当てやすいとは言っても、普通に使っては回避される。


 クロトとの連携が必要不可欠な天魔法術だった。

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