異世界隠密冒険記

リュース

文字の大きさ
上 下
100 / 600
第一部「六色の瞳と魔の支配者」編

クロトとマリア

しおりを挟む
「僕のこと?僕は、君が尊敬するマリアの恋人だよ?」

「何言ってますの!?ねえ何言ってますのっ!?状況理解してますのっ!?」


 クロトの空気を読まない発言に、マリアが猛りだす。

 カリスも、口を半開きにして呆然としている。

 
 クロトをポカポカと叩くマリアに、マリアを撫でるクロト。

 そしてそれを、唖然としながら見つめるカリス。


 一言で言えば・・・・・・カオスである。

 
 さっきまでの空気はどこへやら。

 

「クロト!大事な所で空気を読めない癖は何とかなりませんの!?」

「無理。」

「即答ですの!?もっと悩んでくださいまし!」

「・・・・・・・・・・・・無理。」

「ためを作っても結局は同じですわよ!」


 まるでコントである。

 人間を侵略しようとしている魔王の前でやるあたり、相当肝が太い。


 正気を取り戻したカリスが、クロトに問いかける。


「マリアと恋仲なのは分かった。結局、貴様は何者なのだ?」

「僕の名前はクロト。どこにでもいるただの冒険者だよ。」

「「どの口が(言うのか)(言うんですの)・・・。」」


 誰にも信じてもらえ無かったクロトだった。






「・・・貴様からは、ごく僅かだが、奴の気配がする。」


 カリスがそんなことを言ってきた。


「奴?・・・奴って・・・奴だよね・・・?」


 クロトは瞳のバケモノを思い出しながら確認をした。

 
「ああ。我々の上位存在であり、人と魔物の争いを強要する存在だ。」

「その気配が僕からするっていうと・・・。」


 クロトは、1つだけ思いついたことがあった。


(そう言えば、ゲイザーはあれの眷属みたいな気がするから・・・。)


 クロトは、月影神の龍剣をアイテムボックスに収納してみた。


「・・・奴の気配が消えた?」

「そういうことなら、今、僕が収納した剣が原因じゃないかな?」

「剣が原因、だと・・・?」


 いまいち納得できていない様子のカリス。

 クロトは詳しく説明をすることにした。


「この剣には、ゲイザーという魔物の素材が使われているんだけど・・・。」

「ゲイザー?聞いたことがないのだが?」

「とある遺跡の中で見つけたよ。見た目は、空飛ぶ目玉かな。」

「なっ・・・!」


 カリスはクロトの言わんとするところを理解したようだ。


「まさか、そのゲイザーという魔物が、奴の眷属のような存在だと?」

「その可能性が高いね。」

「・・・・・・。」


 カリスは考え込み始めた。

 そして数分後。


「・・・にわかには信じられんが、嘘を吐いている気配はしない。」

「まあ、情報漏れを覚悟で、本当のことを話してるからね。」


 本当はそんなことはしたくないが、説明しなければ納得しなさそうなのだ。


「・・・分かった。一応納得しておこう。」


 クロトについての話は、そこで打ち切られた。








「さて、そろそろお暇しようかな。」


 クロトは、早く法理の種を探したいようだ。


「・・・そうか。私もやりことがあるゆえ、これで失礼しよう。」

「そういえば、あなたは何をしに来たんですの?」


 マリアが思い出したかのように尋ねた。

 カリスは、隠すつもりもないのか、素直に話した。


「この辺りに居る魔物の強化だが?」

「っ!そうでしたわね・・・あなたは侵略を・・・。」


 カリスは人類を侵略するために、魔物を強化し続けていたのだ。


「あと五か月もあれば準備は整う。上級魔人たちとともに、侵略を開始する。」

「・・・別の手を考えるつもりはありませんの?」

「無いな。既に他の手はやりつくしている。」


 どうやら、カリスは侵略をやめる気は無いようだ。

 カリスは聞く耳を持たず、転移で立ち去ろうとする。

 そんなカリスに一矢報いるため、マリアはこんなことを言った。


「・・・上級魔人、わたくしたち以外は全滅しましたわよ!」

「・・・・・・・・・は?」


 カリスは問いただそうとするも、転移が発動。

 急いで戻ったときには、その場には誰も居なかった。


「・・・久しぶりに拠点へ帰るか。」


 カリスは後程、シンクレア王国の拠点へ戻ることを決めたのだった。









 一方、クロトたちはというと・・・


「クロト・・・先程の、その、恋人というのは・・・?」

「うん?・・・ああ、ごめんね。咄嗟の事でね。」


 そこでマリアは、あることに気づいた。

 クロトがほんの少しだけ汗をかいている。


「「魔王」カリスか・・・勝てるかな・・・?」


 今まで出会った中で、最強の存在なのは間違いないと感じたクロトだった。





「そういう訳で、マリア。」

「何ですの?端的に言うのは無しですわよ?」


 あらかじめ予防線を張っておくマリア。

 クロトはそんなことは意に介せず、こう言った。


















「あなたの事が好きです。僕と、付き合ってください。」




「・・・・・・・・・・・・え?」


 呆然とするマリア。

 そんな中でも、マリアはこう思った。


 今の関係では、もう我慢できない。

 クロトと、先の関係へ進みたい。


 答えは自然と、口から零れていた。







「わたくしでよろしければ、喜んで。・・・好きですわよ、クロト。」





 クロトは返事を聞くと、頬を赤く染めたマリアをそっと抱き寄せて





 優しく口づけたのだった。





しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

切なさを愛した

BL / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:6

その距離が分からない

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:7

【R18】この恋止めて下さいっ!!

BL / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:41

思い出を売った女

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:4,146pt お気に入り:744

【完結】失くし物屋の付喪神たち 京都に集う「物」の想い

キャラ文芸 / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:7

可愛いだけが取り柄の俺がヤクザの若頭と番になる話

ivy
BL / 連載中 24h.ポイント:134pt お気に入り:872

ヒロインではなく、隣の親友です

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:18

孤独

BL / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

おもらしの想い出

大衆娯楽 / 連載中 24h.ポイント:262pt お気に入り:15

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。