異世界隠密冒険記

リュース

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第一部「六色の瞳と魔の支配者」編

砂漠へ

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 次の魔法陣学講義まではやることが無いクロト。

 
 現在、ヴィオラとともにラシアルドの町に来ていた。

 
「ヴィオラと二人っきりというのも久しぶりかな?」

「・・・そうだな。最近は少なかった気がする。」


 ヴィオラは、気持ち声を弾ませながら肯定した。

 バレていないと思っているようだが、クロトからすれば分かりやすい部類だ。

 微笑ましく思いながら、ラシアルドに来た目的について話し始める。


「それで、精霊神殿のことなんだけど・・・本当に良いの?」

「・・・問題はない。クロトになら、何をされても良い。」


 頬を赤く染めながらも、そんなことを言ってくれるヴィオラ。

 この場で押し倒したい衝動に駆られるが、ここは往来。

 なんとか耐えて、話を続ける。


「そっか。それにしても、精霊神殿という名前から予想してたけど・・・。」

「・・・まさか、そんな条件があるとは。」


 精霊神殿での目的を果たすには、とある条件が必要になってくる。

 その条件についてなのだが、精霊の泉のことを覚えているだろうか。

 
 精霊の泉では精霊結晶というものが手に入る・・・のだが。

 そのためには、泉で異性と、肉体的に結ばれる必要がある。

 そして今回の目的地は、砂漠のオアシスにある精霊神殿。

 当然の如く、その手の行為を要求される。

 さらに、行為に関するおまけ要素もあるのだが・・・。

 クロトは、正直なところ意味不明だと思った。


 とりあえず、宿をとって一泊する。

 出発は明日の朝だ。



 


 昨晩は、ヴィオラとほとんどイチャつくこともなく眠りに落ちたクロト。

 少しでも気を抜けば、お互い、相手を求めてしまいそうなのだから仕方ない。

 探索の前日に疲れるのは論外だ。


 早朝から、ヴィオラと共に砂漠へ向かう。


 精霊神殿のあるオアシスは、砂漠の中心より、やや北にある。

 王城の書庫で手に入れた情報だ。

 その場所へ向かうまでに、1つだけ関門と呼べる場所がある。

 それは、通称・蟻地獄、と呼ばれているらしい場所だ。


 その辺り一帯は、突然砂の中に引きずり込まれる危険な領域。

 引きずり込んだ敵の正体は不明。

 引きずり込まれた人間は、誰一人として戻って来ていない。

 ゆえに、精霊神殿を目指す人は殆ど居ない。


 クロトは、その領域に入る前に、歩くのをやめて空を移動した。

 ヴィオラは飛べないので、クロトがお姫様抱っこをしている。

 初めは背負っていくつもりだったクロト。

 しかし、以前ヴィオラにお姫様抱っこのことを教えていたせいなのか。

 そちらの方をを望まれてしまった。

 どちらであっても余り変わらないので、クロトはそれを了承した。


 そして現在、その領域の上空を移動しているのだが・・・。


「それらしき反応は見当たらないね。」

「・・・ただの偽情報だった?」

「断言はしないけど、感知系スキルを誤魔化していると考えるべきだね。」


 いくらなんでも、そんな危険な領域に感知系スキル無しで挑むとは考え辛い。

 その上で、誰も戻って来なかったのだ。

 誰か一人くらい、感知した段階で逃げることを選択しただろう。

 だが、逃げ切れなかった。

 ならば、感知を誤魔化されて不意を打たれたと考えた方が良い。

 確証もない推測だが、楽観視するよりはマシだろう。


 そんな内容の説明をヴィオラに伝えたクロト。

 
「・・・やっぱり、クロトは凄い人。」

「そうかな?それほど・・・っ!」

「・・・?きゃぁ!?」


 クロトは天感に従い、回避行動に出た。

 ヴィオラの可愛い悲鳴が聞こえた気がするが、気にしていられない。

 
 次の瞬間、クロトの居た場所を、砂でできた槍のようなものが通過した。

 天の瞳には何も映っていない。

 だが、何かが居るのは間違いないので、槍が飛んできた方向の砂へ解析を使用。


 解析結果は、砂皇帝レベル74。レアスキルに砂漠魔法8を確認。

 その他に特筆すべき点は無い。


 砂漠魔法を詳しく確認すると、天の瞳に反応が無い理由が分かった。

 砂漠魔法は、周囲にある砂を自由自在に操ることができる。

 そして、周囲に砂が存在する限り、存在自体を隠蔽できる。

 クロトの存在遮断や、六皇騎士が居た部屋の保護色に近い性質を持っている。

 
 恐らくそんなところだろうと考えていたクロトは、焦ることなく言葉を紡ぐ。

 
「断絶空間、発動!」


 クロトを基点に、周囲の空間が断絶した。

 馬鹿の一つ覚えのようだが、これが一番有効な手段なのだ。
 

 クロトの目の前には、砂の巨人が存在していた。

 これが、砂皇帝の正体だ。

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