異世界隠密冒険記

リュース

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第一部「六色の瞳と魔の支配者」編

プロローグ10

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 ここは、ブルータル王国のとある場所。




「・・・こんなところか。」


 そう言いつつ、湖から出て来た男。


「次は・・・レモニア王国。その後は・・・カラーヴォイス王国にするか。」


 この男は、次の目的地を気分で決めているようだ。


「カラーヴォイスでは・・・深淵の森あたりにしておくか。」


 その男、「魔王」カリスは、そう呟いたのだった。


 クロトとカリス。


 二人の邂逅は、そう遠く無いかもしれない。











 ここは、カラーヴォイス王国王都、梟の止まり木亭が一室。


 時刻は昼過ぎ。

 クロトとアクアは盛大に寝坊した。


 昨晩、天空島から帰って来た二人は、すぐに宿で結ばれた。

 二人とも、我慢の限界だったらしい。

 
「クロトさん。昨晩は、その・・・。」

「・・・ごめん、激し過ぎたね。」

「い、いえ・・・その、とてもよかったです・・・んむっ!?」


 クロトはアクアにキスをしたのだった。






「すっかり寝坊してしまったけど、約束の相手はリオンだし。まあ、いいよね。」

「ちっとも良くないよ!それに本人の目の前で言うのかい!?」


 本日は、正午過ぎからリオンとの約束があったのだ。

 寝坊とは、クロトらしからぬ失態だ。


「そうは言っても、ギリギリ間に合ってるよね?」

「・・・まあ、そうだけども。」


 渋々納得した様子のリオン。

 
「それで、何の用だったの?」


 この国の第一王子であるリオンは、それなりに忙しい。

 そんな中、クロトと話したいことというのは何なのか。


「単刀直入に言おう。学園に通う気はないか?」

「ない。」

「・・・そうか、残念だ。」




 そんな訳で、話は終わったのだった。




 クロトが帰った後、リオンは呟いた。



「学園の禁書庫に興味があるかと思ったんだけどな・・・。」

「その話、詳しく聞かせて?」

「うわあああっ!?」


 急に目の前に現れたクロトに、驚愕の声をあげたリオンであった。






 その後、詳しい話をリオンに聞いてみた。


 クロトを学園に誘ったのには、理由がある。

 なんでも、とある講義の試験があるそうなのだが、その試験が、二人一組。

 リオンはペアが居ない為、このままでは参加できないそうだ。

 そこで、クロトに学園へ入って貰い、ペアを組んでもらうつもりだった、と。


 それを聞いたクロトは、まず、こう言わせてもらった。


「リオン、友達いないの・・・?」

「それは言わないでおいてくれないかなっ!?」


 リオンは、第一王子であることを隠して学園に通っている。

 できるだけボロを出さない為にもと、人と距離をとっていた。

 そうしたらいつの間にか、自分だけ一人ぼっちになっていた。


「・・・そこから何とかしようとは思わなかったの?」

「割って入るのも申し訳ない気がして・・・。」

「・・・・・・。」


 第一王子がぼっちとは、この国の未来は暗いかもしれない。


「・・・それで、試験というのは?」

「実習訓練講義の試験なんだけど、簡単に言えば、冒険者とあまり変わらない。」


 試験の内容は、指定された場所へ行き、お題に挑戦するものらしい。

 例えば、ソフィーア雪山に行って氷獄結晶を手に入れろ、とか。

 例えば、ファイアード山へ行ってサラマンダーを倒せ、とか。

 そんな感じのお題らしい。


「僕に頼んだ理由は?」

「友達と言えるのが、クロト君しか居なくてね・・・。」


 頬を掻きながらそんなことを言ったリオン。

 とても恥ずかしそうだ。

 中性的な容姿なので、セミロングの金髪と相まって、女性のようにみえる。

 そしてクロトは、1つ気になることがあったので、聞き返してみた。


「・・・・・・友達?」

「えっ・・・・・・?」


 辺りに沈黙が漂う。


「それはさておき。」

「さておかないで!僕たちは友達じゃなかったのかい!?」

「・・・・・・友達だよ?」

「じゃあ、今の間は何なのさ!?」


 クロトはリオンから目を逸らしたのだった。


「それで、本題の禁書庫について聞かせて?」

「それが本題なんだ・・・。」


 リオンの話では、学園で優秀な成績を収めた者しか入れない書庫らしい。


(学園にある以上は、あまり期待はしない方が良いかな・・・?)


 とはいえ、念のために行っておきたいのは確かだ。

 クロトは、法理の種のことも考えながら、学園の仕組みについて聞いてみた。


 学園は、日本で言う大学のような場所で、自分の学びたいことを学ぶ。

 自分で受ける講義を選び、試験を受けて、単位をとる。

 単位が一定以上になると、卒業資格を得る。

 試験さえ合格すれば、好きな日に通うだけでいい。


 一通り聞いてみたが、かなり自由度が高いことが分かる。


 クロトは、学園へ通ってみることに決めた。

 好きな日に通うだけで良いというのが魅力的だったようだ。

 最悪、成績が悪くとも、禁書庫に忍び込めれば、それでいいのだから。

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