異世界隠密冒険記

リュース

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第一部「六色の瞳と魔の支配者」編

赤・黄・緑

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 クロトが青皇騎士を倒す直前、残りの三名も皇騎士に挑んでいた。


 最も余裕をもって倒せたのはヴィオラ。

 彼女の未来視は、部屋の保護色効果と相性が良い。

 現れた瞬間に真っ二つにされ、抵抗もできずに、黄皇騎士は倒された。





 逆に、感知を得意とするアクアとマリアは苦戦した。

 保護色で消えた状態だと、一切の感知が通用しないのだ。

 厳密に言うと、消えている間は存在すら消失しているので、感知も何も無い。

 限定的に、クロトの隠密者を発動しているようなものだ。


 自分の感知能力に自信があったからこそ、苦戦することになった二人。

 そこに何もなければ、ないと判断してしまう癖がついているのだ。

 決して悪いことでばかりでは無いのだが、ここでは悪い方に転んだ。




「っ!厄介ですわね・・・。」


 マリアは前衛も得意なので、急に現れる騎士の攻撃を、よく回避している。


「天魔剣・辺獄!」


 マリアの、光と闇を纏った高速の一撃は、保護色で回避される。

 その数秒後、マリアの背後に現れた緑皇騎士。

 雷を纏った、高速の一撃を放つ。


 これがアクアだったら喰らっていたかもしれない。

 だが、そこはマリア。

 レベル90台の身体能力と磨き抜かれた反応速度は、伊達じゃない。

 体を逸らして回避しカウンターの一撃。


「天魔剣・天穿!」


 マリアの技の中で1,2を争うほど鋭い刺突技。

 保護色での回避がギリギリ間に合わず、胸を貫かれる。

 その直後、再び消失する緑皇騎士。

 
「剣で貫いていても消えるんですのね。」


 苦戦はしているものの、負ける気はしていない。

 そして、部屋の効果で消失することが分かってから、少しずつ準備していた術。

 天魔法術を発動させる。


「天魔法術・天玉!」


 途方もない数である光の玉が、部屋中にばら撒かれた。


 どこに現れても、確実に玉に当たるよう配置されている。


 騎士は、最も当たる数の少ない空間に現れた。

 光の玉に当たった瞬間、騎士は五感を失った。


 そこへ、マリアの攻撃。


「天魔剣・魔刃!」


 闇を纏った剣技が放たれたことにも気づかないまま、緑皇騎士は絶命した。



 天玉の恐ろしいところは、直感の類いすら失ってしまうことだ。



「はぁ。手こずりましたわね・・・。」


 クロト辺りは、既に先に居るだろうと確信しているマリア。

 仲間たちを待たせていないことを祈りつつ、魔法陣へ乗った。








 アクアは非常に苦戦していた。


 アクアにとって赤皇騎士は、六皇騎士の中で一番戦いやすい相手のはずだ。

 だがそれでも、負けが見えるくらいには苦戦している。

 マリアの苦戦とは度合いが違い過ぎる。


 とはいえ、それも仕方の無いこと。

 後衛のアクアが、高い技量を持つ敵の接近を許したら、相当危険なのだ。

 慎重にもなるというものだ。


 そこへ、保護色による消失も加わると、危険なんてレベルではない。

 
 襲い来る敵の炎弾を氷壁で防ぐ。

 防いだと思ったら、背後に敵が。

 
「・・・っ!?」


 回避は間に合わないと見て、腕で受ける。

 もちろん、生身の腕ではない。

 自分の腕を氷で包んだ上で受けたのだ。


 炎を纏った剣と激突し、甲高い音があがる。

 滑る氷の力で、途中から受け流しに移る。

 受け流し終わると同時に、騎士から距離をとる。

 攻撃しないのは、どうせ回避されるのが分かっているからだ。


 痛む腕を放置し、再び消えた騎士に備える。

 

 同じ攻防を数度繰り返したアクア。

 冷たさと剣のぶつかる衝撃で、腕の動きが鈍くなってきた。


 そんな時、ようやく魔法を構成し終わり、すぐさま発動した。


「氷獄魔法・氷結領域!」


 魔法の発動後、部屋全体が氷漬けになった。


 アクアのブーツは、氷の上でも滑らないアーティファクト級の装備。

 しかし、騎士の方はそうもいかない。

 急に氷の上に現れなどしたら、当然の如く、滑って転ぶ。


 そうなることを狙っていたアクアは、氷針を放つ。

 騎士は転んだ状態ながらも、保護色で回避する。

 
(やはり、崩れた体勢でも消えることは可能のようですね。)


 アクアとしては、それならそれで問題は無い。


 消えては出現し、転ぶ。

 氷針は、転んだまま消えて回避。


 その攻防を何度も繰り返し、ようやく準備が整った。


 再び消える騎士を確認して、魔法を準備。


 波紋感知す群青の瞳を全力で行使し、敵が現れた直後に発動。


「氷獄魔法・氷針地帯!」


 部屋全体に撒いておいた氷針のもとが、一斉に伸びる。

 赤皇騎士は、全身を串刺しにされて絶命。


 事前に床を凍らせて、氷針の元を撒いて置く。

 それによって、瞬間的な魔法の発動を可能にしたのだ。

 ここまでしなくては、保護色で回避されていただろう。


 また、二度目は警戒されるため、一度目で勝負をつける必要がある。

 その準備の為だと、腕の負傷は受け止めるしかない。


「大分時間が掛かってしまいましたね・・・急ぎましょう。」


 アクアは急いで、魔法陣に飛び乗ったのだった。

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