異世界隠密冒険記

リュース

文字の大きさ
上 下
57 / 600
第一部「六色の瞳と魔の支配者」編

獄界の穴4

しおりを挟む
「・・・マリアって可愛らしいよね?」

「突然何ですの!?」

「いや、だってさ・・・?」


 なぜクロトがそんなことを言い出したのかというと、少しだけ前の事。




 堕天使サマエルを倒し、回復を済ませた二人は、洞窟から出て来た。


「きゃぁぁぁ!?」

「えっ・・・?」


 悲鳴を上げて、いきなりクロトに抱き着くマリア。

 
 ・・・どうやら、幽霊の存在を忘れていたようだ。

 
 そして、出し抜けにそれが現れて、思わず抱き着いてしまった、と。


「・・・うん、可愛らしい反応だね。」

「だから、突然何なんですのっ!?」


 顔の赤いマリアを、微笑ましく思いつつ見守るクロト。


「いい加減揶揄い過ぎですわ!わたくしを何だと思っているんですの!?」


 マリアの言葉を聞き流しながら、サマエルから手に入ったものについて考える。


(悪意の欠片・・・。悪の魂と関りが・・・集めると、悪意の塊に?)


「クロト、聞いていますの!?わたくしを何だと思っているんですの!」

「・・・・・・悪意の塊、か。」

「悪意の塊!?そんな風に思っていたんですの!?」

「えっ・・・?」


 猛るマリアの誤解が解けるまで、相当な時間がかかったのだった。






「結局、断絶空間内で一泊、か。」

「・・・わたくしのせいですの?」


 現在、断絶空間内で休んでいるクロトとマリア。

 サマエルとの戦闘で時間を掛けたからであって、マリアのせいではない。


「それは置いといて、今日はもう寝よう?さすがに眠いから。」

「・・・寝台が1つしか無い様ですわよ?」

「・・・カレンのときと同じだね。」

「あなた達、そんな関係でしたの・・・?」


 マリアは、クロトに次いで、カレンと仲がいい。

 マリア本人は認めないと思うが。

 あんな反応をするから、ツンデレと言われるのだ。


「カレンとは、そんな関係ではないよ?」

「やっぱりクロトはおかしいですの・・・。」


 結局、同じベッドで寝ることになった。

 お金には頓着しないが、必要性の薄い物は買わない性格が災いしたのだ。

 

 マリアはクロトの近くで横になりながら思考していた。


(クロトは、おかしな男ですわ・・・。この状況で何も思わないとは・・・。)


 マリアの視界には、スヤスヤと眠るクロトの姿が映る。


(ある意味、あの男と似てますわね。性格は、ほとんど違いますけど。)


 そう思いながら、マリアも眠りに落ちた。







 翌日、目を覚ました二人は、今日の行動について話す。


「・・・じゃあ、残りの2つの小部屋も探索するってことで。」

「了解しましたわ。」




 その後、残り2つの洞窟を探索した二人。


 どちらの洞窟にも堕天使が居た。

 相変わらず、ステータスは殆ど見えなかった。

 分かったのは、どちらもレベル90台前半ということ。

 堕剣術と堕法術を使用してくること。

 名称が、堕天使「アザゼル」と堕天使「ベリアル」ということ。

 それくらいだろうか。


 どちらも強かったのは間違いない。


 だがクロトたちは、これらの堕天使たちを倒した。

 もちろん、二人とも無事だ。


 なぜ、大した怪我もなく勝てたのかと言うと・・・



「クロト、あなたの精神はどうなってますの・・・?」

「えっ?・・・普通じゃないかな?」

「普通なわけありませんわっ!あんなっ、あんな精神攻撃を・・・!」



 ・・・そう、どちらの堕天使も、精神攻撃しかしてこなかったのだ。


 より詳細に言うと、

 アザゼルが、性欲?方面の精神攻撃。

 ベリアルが、堕落?方面の精神攻撃。


 精神攻撃の種類は違っていたが、クロトには大差ない。


 ベリアルの方は、マリアも耐えられたのだ。

 揺るがない信念を持つだけはある、ということだ。

 何もしたく無くなる気分を抑え込んで、ベリアルを討伐。


 ベリアルは剣も下手では無かったが、サマエル程ではない。

 生成した4本の堕剣を全てクロトに破壊される前までは拮抗していた。

 臨界突破系のスキルも使ってきた。

 逆に言うと、それを使っても、拮抗にしかできなかったわけだが。

 堕剣を破壊された後は、一方的な展開に。

 
 時間こそ掛かったが、サマエルのときよりも安定して戦えた。

 堕天使との戦闘経験の有無も大きかった。


 
 そして、問題のアザゼルなのだが・・・。


「マリアにあんな一面があったのは意外だね。」

「今すぐ、その記憶を消させてくださいまし!」

「ん?マリアにそんな能力は無いよね?」

「ああ・・・!なぜこんな目にあってばかりなんですの・・・!」



 こちらはある意味、酷い戦いとなった。 


 アザゼルの堕法術は、二人の性欲を刺激してきた。

 男女のペアだったのは、幸運だったのか、不幸だったのか。

 互いのことを、性的な対象として見てしまうようになったのだ。

 この二人に精神攻撃を通すのは至難の業。

 さすがは、ステータスを把握しきれない堕天使。


 そのせいで、マリアはクロトに向かって、とても恥ずかしい発言をした。

 ゆえに、顔を赤くして、かつてないほどに悶えているわけだ。


 クロトはというと、それはそれとして、アザゼルに攻撃。

 アザゼルの表情が呆然としていた気がするのは、気のせいでは無いだろう。
 
 咄嗟に生成した1本の堕剣を破壊され、あっという間に討伐された。

 

「確か、「わたくしを滅茶苦茶にしてくださいまし・・・!」・・・だっけ?」

「・・・・・・・・・・・・。」


 耳を塞いで聞こえないふりをするマリア。


 クロトは、軽い意趣返しができたと思い、矛を引っ込めた。


 クロトとて、性欲を刺激された状態でマリアのあの発言は、結構こたえたのだ。


 橙の瞳を潤ませ、クロトに縋りつき、性的行為を懇願してくるマリア。

 普段なら問題なかったかもしれない。

 だが、アザゼルのせいで、マリアを性的対象として見てしまっている状況。

 

 意趣返しくらいは、許されるのではないだろうか?

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

切なさを愛した

BL / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:6

その距離が分からない

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:7

【R18】この恋止めて下さいっ!!

BL / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:41

思い出を売った女

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:4,146pt お気に入り:744

【完結】失くし物屋の付喪神たち 京都に集う「物」の想い

キャラ文芸 / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:7

可愛いだけが取り柄の俺がヤクザの若頭と番になる話

ivy
BL / 連載中 24h.ポイント:134pt お気に入り:872

ヒロインではなく、隣の親友です

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:18

孤独

BL / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

おもらしの想い出

大衆娯楽 / 連載中 24h.ポイント:262pt お気に入り:15

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。