異世界隠密冒険記

リュース

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第一部「六色の瞳と魔の支配者」編

獄界の穴の考察

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 ミレアイルドの町で買い出しをしていると、声を掛けられた。

 以前、この町で会った冒険者たちだ。 


「あれっ?クロトさんですか?私です、イリスです。」

「ん?ああ、イリス。久しぶりだね。」

「はい。お久しぶりです。」


 確か、ハーピーの群れに追われていたのを助けた形になった冒険者だ。

 男女二人ずつで、パーティー名は、風の導き。


「イリス?どうしたの?・・・って、クロト、さん?」

「ああ。ケイト、だっけ。久しぶり。」

「あ、うん。久しぶり。この町に何か用なの?」

「まあね。ウィンフィート渓谷まで用事があるんだ。」


 男性陣二人は居ない。

 女性陣二人で買い物のようだ。


「そういえば、そちらの女性は恋人さんですか?」


 マリアを見て、そんな予想を立てるイリス。


「違いますわ。わたくしとクロトは・・・・・・何なんですの?」

「それを僕に聞くんだ・・・?ん、マリアとは友達で良いんじゃないかな?」

「・・・そうですわね。それが一番しっくりきますの。」

「「・・・?」」


 よく分かっていない様子のイリスとケイト。

 クロトは、少しおかしかったかな、と想い、フォローを入れる。


「僕とマリアは最近出会ったから、関係性が定まって無くてね・・・。」

「「ああ、なるほど。」」


 上手くフォロー出来たようだ。


「それより、少し聞きたいんだけど・・・。」




 



 イリスとケイトから情報を手に入れて、別れた二人。

 イリスからは前回同様、デートのお誘いを受けたが、丁重にお断りした。



 クロトたちは町での買い物を終えて、ウィンフィート渓谷へ向かうのだった。




「クロト、何故あんなゴミを買ったんですの?」

「ゴミって・・・。漆黒石のことだよね?」

「ええ、そうですわ。あれをゴミと言わずになんと言うんですの?」


 クロトが町で購入したのは、漆黒石という石ころだ。

 何の使い道も無いため、捨て値で売られていたのを購入したのだ。

 クロトとしても、もしかして、という程度のものでしかない。

 天の叡智の解析結果には、漆黒の闇を受け入れ云云かんぬんと表示された。

 全く意味は理解できなかったが、何かありそうなのは間違いない。


 ただ、何の確信も無いので、マリアには端的に説明する。




「(今のところは)ただのゴミだよ。」

「クロトは端的に言い過ぎなんですわ!もう少し説明してくださいまし!」


 マリアが金髪の縦ロールを振り乱して詰め寄って来た。







 結局、考えていることを全て説明することになった。


「あなたの頭はどうなっているんですの・・・?」

「・・・何かおかしいかな?」

「・・・いえ、なんでもありませんわ。」


 言っても無駄だろうと、諦めることにしたマリア。

 それに対するクロトの返答は・・・


「僕の思考が異常だという事?」

「そんな所まで理解できるなら、もっと分かりやすい説明をしてくださいまし!」


 クロトは何故怒られたのか、まるで分からなかったとか。






 クロトがミレアイルド付近を怪しいと思った理由。

 それは、このあたりにダンジョンが無いからである。


 レベルの低いダンジョンは、あちこちにあるのに、それが無い地域。

 それを偶然で片づけないのがクロトである。


 ダンジョンの由来は、いまいち分かっていない。

 だが、莫大なエネルギーが使われているのは分かる。


 そして、一定の区域で使用できるエネルギー量は、ある程度決まっている。

 ・・・というのが、クロトの推測だ。


 なぜクロトはそう思ったのか。

 それは、レベルの高いダンジョン周辺は、ダンジョンが少ないからである。


 例えば、レクスシールの町。

 あそこは天使の迷宮と悪魔の迷宮があるが、それ以外のダンジョンは殆どない。

 他にも例はあるが、それは置いておく。


 では、その高レベルのダンジョンすらないミレアイルド周辺は?


 どこかしらに、エネルギーが使われ、他に使えないのではないか。

 そしてそれが獄界の穴なのではないか。

 そのように推測したわけだ。


 とはいえ、それが獄界の穴とは限らないし、今まで見つかっていないのも妙だ。

 ゆえに、何か特別な条件が必要であり、その候補として漆黒石を持ってきた。

 ウィンフィート渓谷が第一候補なのは、なんとなく怪しいから。

 これで駄目なら、次はアースフォルト山へ向かうつもり。


 クロトがマリアにした説明はこんな感じだ。



 クロトの頭がどうなっているのか気になったマリアは、至って正常だろう。



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