異世界隠密冒険記

リュース

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第一部「六色の瞳と魔の支配者」編

王城の書庫

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 クロトは、王城の書庫で本を読み漁っていた。




 つい先日、謁見が行われ、クロト含む数名が参加した。

 そこで、冒険者たちへの報酬が、正式に渡された。

 内容については、莫大な金額が動いたとだけ言っておく。


 国王エドワードの雰囲気は大変厳かで、ここまで変わる人間も珍しい。

 カレンたちはとても緊張していた。

 クロトはやはり平常運転だったが。

 なお、冒険者に報酬を渡すことに文句を言う貴族はいなかった。

 マリアがほぼ一掃してしまったからだ。

 中々手を出せない問題だったので、エドワードは、とても嬉しそうだった。

 責任はすべて魔人に押し付けた。

 抜け目ない国王である。

 テンプレイベントの不発は、今更だ。


 クロトも、通常の報酬の他に、王城の書庫への立ち入りを許可された。

 こちらは、リオンからの報酬という扱いだ。



 クロトはすぐに、書庫に籠ったのだが・・・。




「・・・なぜわたくしが手伝わされてますの?」

「うん?他に手の空いている人がいないからね。一人だと効率が悪いし。」


 そう、クロトの調べものに、天魔人となったマリアが付き合わされていた。


「王城には・・・大変居づらいのですわ・・・。」

「ちゃんと隠蔽を掛けてあるから大丈夫。」

「そういう問題ではなく、良心が咎めるんですのよ・・・。」


 王城の支配について、未だに気にしている様子のマリア。

 クロトは、被害も出ていないのだから気にしなくても良いのではと思っている。

 寧ろ、国にとって良い結果にしかなっていない。

 深淵の森の件についても、関わって居なかった様であるし。

 なお、その件については、正式に国王からの謝罪やら何やらがあった。


 自分を責める趣味でもあるのだろうか?

 クロトはそんな疑問を、端的に、マリアに突き付ける。


「マリアって変態なのかな?」

「どういう思考を辿ったらそうなったんですのっ!?」


 マリアが叫ぶ。

 
 閑話休題。


「それはさておき、流石に情報が詰まってるね。」

「・・・・・・必要な情報は見つかりましたの?」


 マリアは何か言いたそうだが、蒸し返されても困る。

 ゆえに、目的を果たせたのかを尋ねた。


「法理の種については分かったんだけど、悪の魂については分からないね。」

 
 法理の種は、一年の内で一日だけ、花の咲く植物から手に入る。

 その植物のある場所と言うのが・・・。


(まさか深淵の森とはね・・・。灯台下暗しだよ・・・。)


 そう、深淵の森の深層部なのだ。

 時期は、今から3か月程後。


(先に、悪の魂からかな・・・。あそこに行かないとね、)


 あそこというのは、おとぎ話の、獄界の穴のことである。

 では、それがどこにあるのかと言うと・・・。


(目指すは、ミレアイルドの街。そして、ウィンフィート渓谷。)


 そう決めたクロトは、本を閉じた。





 現在クロトが居るのは、ミレアイルドの町。

 随行するのはマリア。


「ですから、なぜわたくしが、手伝わされるんですの?」

「人手が足りないから。後、私物の買い出しに丁度いい。王都は避けたいよね?」

「っ・・・。それならそうと、先に言ってくださいましっ!」

「言ったはずだよ?」

「「そういう訳で、ちょっと付き合って?」としか言われてませんわっ!」

「・・・言葉が足りなかったね。」


 そんな訳で、まずはマリアの私物の買い出し。

 元魔人のマリアは、そんなものは殆ど持っていない。

 人間として暮らしていくのに、それは不便過ぎる。

 なおかつ、何が必要なのかも分かっていない。

 ゆえに、クロトが付き合うのだ。


 女性特有のものは、ヴィオラとカレンから聞いている。

 カレンは、微妙に恥ずかしそうだったが。

 彼女たちに任せてしまわないのは、時間を取らせたくないからだ。

 自分がついでにやってしまうのが、一番効率が良い、という理由もある。



「あの、1ついいですの?」

「ん?何か気になる事でも?」

「あなたのことを、何と呼べばいいですの?」

「普通に名前で良いよ?」

「・・・分かりましたわ。」



 そして、買い出しを行う二人。


「ク、ク、クロト。これは何ですの?」

「・・・名前で呼ぶの慣れてないの?」

「そこは見て見ぬ振りをしてくださいましっ!」


 恥ずかしいのか、顔が赤い。


「・・・それで、どうなの?」

「・・・天魔人になってから、感情の制御に苦戦してますの。」

「なるほどね。徐々に慣れていくしかないね。」

「・・・頑張りますわ。」


 ちなみに、マリアが、これは何か?と聞いてきたのは、女性特有のものだった。


 そんなものを男性に聞くなと思うかもしれないが、クロトは臆面もなく答えた。

 寧ろ、尋ねたマリアの方が恥ずかしがっていた。


 こんなところでも、全くブレないクロトであった。

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