異世界隠密冒険記

リュース

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第一部「六色の瞳と魔の支配者」編

処遇

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 クロトは、国王の執務室へやって来ていた。


 この場に居るのは、国王とクロトの他に5人。

 ギルドマスターのガイア、第一王子のリオン、王妃、レスター。

 そして、気絶したマリア。

 全て、国王の許可を得て部屋の中に居る。


「では、話を始めるが・・・まずは、口調を直してもいいか?」

「問題ないと思いますよ。」


 国王が王妃に尋ね、王妃が肯定する。


「んじゃ、そういうことで。」

「父上・・・。」


 突然、国王としての威厳の欠片も無くなった父親に、リオンが頭を抱える。

 息子の様子を気に留めることなく、国王は話し始めた。


「初めまして。俺が、エドワード・アイズ・カラーヴォイスだ。」

「私はエドの妻、アイリスと申します。」


 クロトは、突然雰囲気の変わった国王に苦笑しながら、自己紹介を行う。


「僕は、S+ランク冒険者のクロトと申します。」


 ガイアの自己紹介も済ませ、本題に入る。


「それで、そこに居る元魔人、天魔人だったか。その処遇についてだが・・・。」


 沈黙が流れ、周囲の者に緊張が走る。








「・・・まぁ、放免してもいいんじゃないか?」

「軽っ!?父上、もう少し威厳というものを・・・!」


 余りにも呆気なく出された無罪放免宣言。

 クロトは確認を取る。

 
「ありがたい事ですが、よろしいのですか?」

「構わんよ。ご丁寧に内政もやってくれたから、いい休みになった。」

「・・・そういえば、不思議なくらい、国内に乱れがありませんでしたね。」

「ああ。寧ろ、城内の膿が無くなった分、プラスなんだな、これが。」


 そんなことをのたまうエドワード。

 クロトは、どうしても聞いておきたいことを尋ねてみた。


「深淵の森の派兵については・・・?」

「あれは魔人のせいではないぞ。俺の耳に届く前に握り潰されたんだ。」

「握り潰した人間はどうなりました?」

「丁度その時に、そいつが来てな。そいつが殺してしまった。」


 マリアを見ながらそう告げたエドワード。

 これで、マリアを助けるのを躊躇う理由は無くなった。


 話は、ドレファトの町防衛戦のこと。

 マリアのせいで、ドレファトの町に援軍が来なかったのなら、蟠りが残る。

 だが、そうでないなら、何の問題もない。



「では、本当に無罪放免ということでいいのですね?」

「ああ、いいぞ。アイリスもそれでいいか?」

「いいですよ?久しぶりに、エドとゆっくりできましたし・・・。」


 少し顔の赤いアイリス。

 どうやら、夫婦仲はかなり良いようだ。


「母上・・・?軟禁されていたのでは・・・?」

「部屋から出なければ、何をしていても良いと言われましたから・・・。」

「食事やら何やらも運ばれて来たしな。普通に快適だったぞ。」


 リオンは、心配して損した、と言った表情だ。


「んでよ?そいつがその時に言った言葉が・・・。」



 と、何かを言おうとした時、マリアが目を覚ました。


「ん・・・わたくしは、一体・・・?」

「おはよう。よく寝ていたね。」

「えっ・・・?」


 クロトが言葉を掛けるも、いまいち状況を呑み込めていない様子のマリア。

 そこに、エドワードがちょっとした意趣返しを兼ねて、マリアに話しかける。


「よう。「愛し合う者たちを引き離すなんて出来ませんわ!」だったか?」

「えっ・・・?」

「何というか・・・意外と乙女な所もあるんだな?はっはっはっ。」



 

 ・・・・・・・・・・・・。





「・・・ああああああっ!?そのことは忘れてくださいましっ!?」



 どうやら、状況を理解したようだ。

 マリアは、洗脳と支配を解くつもりなど無かった。

 それ故に、あんな恥ずかしい発言を臆面もなく言えたのだ。

 だがしかし、支配が解けているとなれば、話は違う。

 途轍もなく恥ずかしい。

 マリアは、恥ずかしさからか、顔が真っ赤である。


 忘れてくれと頼まれたエドワード。

 この上ないニヤニヤ顔で、こう告げた。



「はははっ!・・・一生覚えておくとしよう!」



「ああああっ!?何でわたくしはあんなことを言ってしまったんですのっ!?」


 悶えるマリアにクロトは・・・


「・・・マリアって・・・ロマンチストなんだね?」

「いっそ殺してくださいましっ!?」


 マリアは暫くの間、悶え続けた。

 それを、暖かい目で見守る一同と、ニヤニヤと見守るエドワードだった。







 



「・・・本当にわたくしを放免するなんて、正気ですの?」

「放免されるのは嫌か?」

「そういう訳ではありませんわ。ですが・・・!」


 マリアは、自分の処遇に納得していないようだ。

 仮にも、王城を支配しておいて放免などとは、正気の沙汰とは思えない。

 そんな感じのことを、たどたどしく伝えた。


 すると、正気を疑われて、少しだけイラついたエドワードが・・・


「「愛し合う者たちを引き離したくはありませんわ!」だってよ?ププッ!」


「あああああっ!?もうやめて欲しいのですわっ!?」

「処遇に納得するか?」

「それとこれとは話がち「愛し合う者た・・・」ああああ!?納得しますわっ!」



 そんな訳で、マリアは無罪放免となったのだった。

 一応、公表は避け、極秘扱いにするそうだが。





 これは後日の話。


「マリア、1つ聞いてもいいかな?」

「なんですの?」

「どうして真面目に内政なんてやったのかな?って。」

「べっ、別に!人間の為なんかではありませんわっ!」

「なるほど。マリアはツンデレさんなんだね?」

「なぜそうなったんですのっ!?」


 というやりとりがあったとかなんとか。


 そんな訳で、クロトの周りに待望のツンデレキャラ?が加わったのだった。


 世紀の人魔決戦が、こんな終わり方で良かったのだろうか?


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