妖符師少女の封印絵巻

リュース

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三章 水の怪異編

88 狐仮面のファン誕生?

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 柴田さんに手配をお願いして、私は翌日も学校へ。
 手配完了が土曜日ですから、決行は日曜日になりますかね・・・?

 とにもかくにも、土曜日まではやることが殆ど無いので学校へも行けるのです。

 今回は前回ほど緊張していないからか、凪沙さんや凛に気づかれることはありませんでした。咲良さんには簡単に話しましたが、また泣かれてしまいました。
 
 あまり緊張していないのは、決死の覚悟ではないからですね。
 前回よりは勝算がありますし、撤退についても考えてありますから。


「―――それでですね、その時の『狐仮面フォーナ』さんが格好良くてっ・・・!」

「はいはい、そうですねぇ・・・」

「影山さ・・・若葉さん、聞いているのですかっ!?」


 今はお昼休みですが、愛華さんに『狐仮面フォーナ』のことを語られています。
 非常にお気に召して頂けたようで、目を輝かせながら語ってくれています。

 例えば、颯爽と現れて助けてくれた姿が凛々しかった、とか。
 例えば、話し方が中性的で、もし男性だったらどうしよう!? とか。
 例えば、自分を後ろに庇ってくれた時が格好良くてキュンときたっ! とか。

 本当にもう・・・何の拷問かと。
 自分の所業を客観的に聞かせられるのがこんなに恥ずかしいとは・・・。
 愛華さんは美化し過ぎだとおもいます、はい。
 まともに聞いていると顔から火が出そうになるので聞き流すようにしています。

 愛華さんの目は、まるで恋する乙女のようで・・・。
 ・・・そんな目をされても困ってしまいます。

 はぁ・・・どうしてこうなったのでしょうか。
 理由を教えてくれた方には私愛用の狐仮面(レプリカ)を進呈しますよ?

 それにしても愛華さん、先日の昼食時を経て随分と打ち解けましたね。
 言葉遣いは丁寧なままですが、壁が無くなって遠慮も薄くなった気がします。
 それ自体は大変結構ですし喜ばしいことなのですが・・・。


「聞いてるよ? その『狐仮面フォーナ』さんがナイフを持って襲い掛かってきた男性から庇ってくれたんだよね?」

「うん、そうなんですっ! ・・・って、あれ? そんなことまで話しましたか?」

「・・・・・・うん、話したよ? 興奮していたので忘れてしまったのでは?」

「そうだったかなぁ・・・と、まあいいです」


 ほっ・・・何とか誤魔化せましたね。
 思わず口が滑ってしまって、危うくバレるところでした。
 冷や汗を掻きそうになりましたね・・・。

 別にバレてもそこまで問題は・・・・・・ありますね、ええ。
 仮面をつけて行動する時に制約ができてしまうのは困りますし、色々派手に活動していますので、身バレは危険です。
 そしてなにより、正体がバレると非常に恥ずかしいです。

 ですので、余程のことがなければ隠しておきたいですね。


「それでですねっ、私・・・いても立ってもいられず、今度『狐仮面研究部』という部活動を発足させるという案を考えているのですが、どうでしょうっ!?」


 どうもこうも、そんな案は丸めてゴミ箱に捨てるといいと思いますよ?



 〇〇〇



「今週も一週間ご苦労様でした。来週の水曜日からゴールデンウィークですが、月曜日と火曜日は忘れずに登校してくださいね?」


 帰りのホームルームにて先生からそんなお言葉を頂きました。


「先生!月曜と火曜を休んでゴールデンウィークを十連休にしていいですか!」

「駄目に決まっていますっ!! そんなことをしたら怒りますよ!?」


 藤井遊星君の質問に先生が呆れながら答え、プンスカしています。

 はぁ・・・どうしてこんなに可愛らしいのでしょうか。
 やはり先生の映像は惜しかったですね・・・。

 と、先生が私の視線を感じたのか、こちらの方を向きました。
 何やら微妙な表情をしていらっしゃいますが・・・?


「影山さんも分かりましたね? そんなことをしてはいけませんよ?」

「善処しますっ・・・!」

「そこは明言してくださいっ! それは実質出来ないという回答ですよねっ!?」


 すみませんが、今週末は激戦が控えておりますので。
 残念ながら保証はできかねます。
 怪我をすれば数日動けなくなりそうですし・・・。

 あ、もしかしたら、そのこともあって微妙な表情だったのでしょうか。
 私が危険な仕事をやっていて怪我する恐れがあることを知っている故に、できれば来週も元気に学校に来てほしいという願いを込めていたのかも・・・?

 だとするならばもう少しハッキリと・・・いえ、駄目ですね。
 担任として個人に肩入れはできないので、遠回しに言ったのかもしれません。

 だとするならば私の答えは――――


「両手両足の骨折くらいなら頑張って来ますのでご安心くださいっ・・・!!」

「どこにも安心できる要素がありませんけどっ!?」


 クラスに笑いの渦が巻き起こり、先生は赤い顔で咳払いした後、話を締めました。

 さて、早めに帰って<上位符変換>をしましょうか。
 今回は気絶せずに済むといいのですが・・・。


「あのっ、影山さんっ・・・少し話をいいですかっ・・・?」

「伊集院君? ええ、時間はありますので大丈夫ですよ?」


 帰ろうとしていると、隣の席の伊集院 彰くんに呼び止められました。
 一体どのような話なのでしょうか・・・?

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