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三章 水の怪異編
85 双蛇組の顛末と要望
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「そんなのは駄目ですっ! 若葉お姉さんも行ってきてくださいっ!」
「ええと・・・そう言われましても・・・」
時間は流れ、本日は木曜日。時刻は十七時です。
ふとした拍子に京都旅行について漏らしてしまい、咲良さんに問い詰められてしまいました。そして全てが芋づる式にバレて・・・はぁ。失敗しましたね。
気にされると嫌なので言わないように気を付けていたのですけど、咲良さんに怪しまれ、巧みな話術で引き出されてしまったのです。
流石は市議会議員の娘さんです。
「大事な時に私一人では頼りないというお気持ちは分かりますっ! 他でもない私が一番よく分かっています!」
「いえ、決してそういう訳では―――」
「ですがっ、そのせいで若葉お姉さんが青春の一ページを刻み損ねるなど、とても看過できませんっ・・・!!」
別に頼りないだなんて思っていませんよ・・・?
私はただ、咲良さんにお店を任せて自分だけ旅行に行くなど、申し訳ないと思ってしまっただけで・・・。
「私っ、残りの一週間でもっと頑張りますからっ! だから、お願いしますっ!!」
「咲良さん・・・・・・っ!」
私が悩んでいると、咲良さんはとうとう泣き出してしまいました。
あああ・・・これはいけませんっ!
咲良さんの為を思ってお断りしたのにっ、これでは本末転倒ですっ・・!!
咲良さんをあやしながら、私は考えを纏めました。
「―――分かりました。では、お言葉に甘えさせて頂きますね? あ、警察の方とも話がついたら、という条件付きになりますけど・・・」
「はいっ・・・!!」
私がその答えを告げると、咲良さんはとても嬉しそうにしていました。
はぁ・・・私は間違えてばかりですね。
先程のような選択をして、咲良さんが喜ぶはずもないのに・・・。
もし私が父と母に同じことをされたら・・・やはり泣いてしまうかもしれません。
今回のことは、反省が必要ですね・・・。
丁度この後、先日の<双蛇組>の件で柴田さんに呼ばれていますので、その話を聞く際にお願いしてみましょうかね・・・。
あ、咲良さんが頼りないのではないということをちゃんと説明して納得させなくてはいけません。あらぬ行き違いは不和の元ですからね。
それと、彼女が頑張り過ぎないように見張っておきましょう。
〇〇〇
「―――と、先日の一件についての顛末はこんな感じだ。この地の膿を減らすことが出来て良かった。若葉君には本当に感謝しているよ」
「いえ、あれは私の報復でしたので、感謝されるようなことでは・・・」
「それでも、だ。あんなおぞましいことが近くで行われていたのに気づけなかった私の代わりに、君が解決してくれたのだから。感謝してもし足りない」
「・・・そう、ですか」
そういうことであれば、感謝を受け取っておきましょう。
受け取らずにいて良いことなどありませんからね。
とはいえ、少しむず痒いものがありますね。
自分の怒りに突き動かされて行った報復の結果ですもの・・・。
「あ、組長を務めていた男が中々口を割らなかったんだが、君の言った通り狐の仮面の話をしたら、瞬く間にペラペラ話し始めてね。あの重傷といい・・・ははは」
私が気まずそうなのを察したのか、途中から笑ってごまかしてくれました。
笑い声は随分と乾いていましたが。
まあ、アレを人の手でやったとなれば、乾いた笑いも出るでしょうね。
私だってそう思うくらいですから、柴田さんは・・・。
「ついては、君に褒賞を出したい。鎌鼬の一件もそうだが、色々と恩が溜まり過ぎていてな。表立って与えることは出来ないし、私の裁量内で、という条件つきだがな」
「褒賞、ですか・・・?」
そういうものは特に求めていないのですが・・・。
どちらの件もお金の為にはたらいたわけではありませんし。
それに、妖怪<鎌鼬>の件では色々と準備してもらいましたらから、それで相殺でいいと思っていました。
ですから、突然言われても思い浮かぶものなど・・・・・・あ。
「でしたら、一つだけお願いしたいことがあります・・・!」
「おっ、そうかそうか! 断られるかと思っていたので、それは有難い! ささっ、叶えられるかどうかは分からないが、何でも言ってくれ!」
何故か柴田さんが嬉しそうです。
ですが、何故断られると確信していたのでしょうか・・・?
・・・想像の中の父と母が「俺たちが派手に断ったからだよ」と言っています。
首を振ってその想像を振り払い、私は柴田さんに要望を告げました。
「ではっ・・・私っ、お休みが欲しいですっ・・・!!」
「・・・・・・はぁ?」
柴田さん・・・何故そんな間の抜けた顔をするのでしょうか。
まるで、「この人、何間の抜けたことを言ってるんだろう?」みたいな顔です。
・・・納得のいく説明を求めますっ!!
「ええと・・・そう言われましても・・・」
時間は流れ、本日は木曜日。時刻は十七時です。
ふとした拍子に京都旅行について漏らしてしまい、咲良さんに問い詰められてしまいました。そして全てが芋づる式にバレて・・・はぁ。失敗しましたね。
気にされると嫌なので言わないように気を付けていたのですけど、咲良さんに怪しまれ、巧みな話術で引き出されてしまったのです。
流石は市議会議員の娘さんです。
「大事な時に私一人では頼りないというお気持ちは分かりますっ! 他でもない私が一番よく分かっています!」
「いえ、決してそういう訳では―――」
「ですがっ、そのせいで若葉お姉さんが青春の一ページを刻み損ねるなど、とても看過できませんっ・・・!!」
別に頼りないだなんて思っていませんよ・・・?
私はただ、咲良さんにお店を任せて自分だけ旅行に行くなど、申し訳ないと思ってしまっただけで・・・。
「私っ、残りの一週間でもっと頑張りますからっ! だから、お願いしますっ!!」
「咲良さん・・・・・・っ!」
私が悩んでいると、咲良さんはとうとう泣き出してしまいました。
あああ・・・これはいけませんっ!
咲良さんの為を思ってお断りしたのにっ、これでは本末転倒ですっ・・!!
咲良さんをあやしながら、私は考えを纏めました。
「―――分かりました。では、お言葉に甘えさせて頂きますね? あ、警察の方とも話がついたら、という条件付きになりますけど・・・」
「はいっ・・・!!」
私がその答えを告げると、咲良さんはとても嬉しそうにしていました。
はぁ・・・私は間違えてばかりですね。
先程のような選択をして、咲良さんが喜ぶはずもないのに・・・。
もし私が父と母に同じことをされたら・・・やはり泣いてしまうかもしれません。
今回のことは、反省が必要ですね・・・。
丁度この後、先日の<双蛇組>の件で柴田さんに呼ばれていますので、その話を聞く際にお願いしてみましょうかね・・・。
あ、咲良さんが頼りないのではないということをちゃんと説明して納得させなくてはいけません。あらぬ行き違いは不和の元ですからね。
それと、彼女が頑張り過ぎないように見張っておきましょう。
〇〇〇
「―――と、先日の一件についての顛末はこんな感じだ。この地の膿を減らすことが出来て良かった。若葉君には本当に感謝しているよ」
「いえ、あれは私の報復でしたので、感謝されるようなことでは・・・」
「それでも、だ。あんなおぞましいことが近くで行われていたのに気づけなかった私の代わりに、君が解決してくれたのだから。感謝してもし足りない」
「・・・そう、ですか」
そういうことであれば、感謝を受け取っておきましょう。
受け取らずにいて良いことなどありませんからね。
とはいえ、少しむず痒いものがありますね。
自分の怒りに突き動かされて行った報復の結果ですもの・・・。
「あ、組長を務めていた男が中々口を割らなかったんだが、君の言った通り狐の仮面の話をしたら、瞬く間にペラペラ話し始めてね。あの重傷といい・・・ははは」
私が気まずそうなのを察したのか、途中から笑ってごまかしてくれました。
笑い声は随分と乾いていましたが。
まあ、アレを人の手でやったとなれば、乾いた笑いも出るでしょうね。
私だってそう思うくらいですから、柴田さんは・・・。
「ついては、君に褒賞を出したい。鎌鼬の一件もそうだが、色々と恩が溜まり過ぎていてな。表立って与えることは出来ないし、私の裁量内で、という条件つきだがな」
「褒賞、ですか・・・?」
そういうものは特に求めていないのですが・・・。
どちらの件もお金の為にはたらいたわけではありませんし。
それに、妖怪<鎌鼬>の件では色々と準備してもらいましたらから、それで相殺でいいと思っていました。
ですから、突然言われても思い浮かぶものなど・・・・・・あ。
「でしたら、一つだけお願いしたいことがあります・・・!」
「おっ、そうかそうか! 断られるかと思っていたので、それは有難い! ささっ、叶えられるかどうかは分からないが、何でも言ってくれ!」
何故か柴田さんが嬉しそうです。
ですが、何故断られると確信していたのでしょうか・・・?
・・・想像の中の父と母が「俺たちが派手に断ったからだよ」と言っています。
首を振ってその想像を振り払い、私は柴田さんに要望を告げました。
「ではっ・・・私っ、お休みが欲しいですっ・・・!!」
「・・・・・・はぁ?」
柴田さん・・・何故そんな間の抜けた顔をするのでしょうか。
まるで、「この人、何間の抜けたことを言ってるんだろう?」みたいな顔です。
・・・納得のいく説明を求めますっ!!
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