妖符師少女の封印絵巻

リュース

文字の大きさ
上 下
85 / 91
三章 水の怪異編

85 双蛇組の顛末と要望

しおりを挟む
「そんなのは駄目ですっ! 若葉お姉さんも行ってきてくださいっ!」

「ええと・・・そう言われましても・・・」


 時間は流れ、本日は木曜日。時刻は十七時です。
 ふとした拍子に京都旅行について漏らしてしまい、咲良さんに問い詰められてしまいました。そして全てが芋づる式にバレて・・・はぁ。失敗しましたね。

 気にされると嫌なので言わないように気を付けていたのですけど、咲良さんに怪しまれ、巧みな話術で引き出されてしまったのです。
 流石は市議会議員の娘さんです。


「大事な時に私一人では頼りないというお気持ちは分かりますっ! 他でもない私が一番よく分かっています!」

「いえ、決してそういう訳では―――」

「ですがっ、そのせいで若葉お姉さんが青春の一ページを刻み損ねるなど、とても看過できませんっ・・・!!」


 別に頼りないだなんて思っていませんよ・・・?
 私はただ、咲良さんにお店を任せて自分だけ旅行に行くなど、申し訳ないと思ってしまっただけで・・・。


「私っ、残りの一週間でもっと頑張りますからっ! だから、お願いしますっ!!」

「咲良さん・・・・・・っ!」


 私が悩んでいると、咲良さんはとうとう泣き出してしまいました。
 あああ・・・これはいけませんっ!
 咲良さんの為を思ってお断りしたのにっ、これでは本末転倒ですっ・・!!

 咲良さんをあやしながら、私は考えを纏めました。


「―――分かりました。では、お言葉に甘えさせて頂きますね? あ、警察の方とも話がついたら、という条件付きになりますけど・・・」

「はいっ・・・!!」


 私がその答えを告げると、咲良さんはとても嬉しそうにしていました。

 はぁ・・・私は間違えてばかりですね。
 先程のような選択をして、咲良さんが喜ぶはずもないのに・・・。

 もし私が父と母に同じことをされたら・・・やはり泣いてしまうかもしれません。
 今回のことは、反省が必要ですね・・・。

 丁度この後、先日の<双蛇組>の件で柴田さんに呼ばれていますので、その話を聞く際にお願いしてみましょうかね・・・。

 あ、咲良さんが頼りないのではないということをちゃんと説明して納得させなくてはいけません。あらぬ行き違いは不和の元ですからね。
 それと、彼女が頑張り過ぎないように見張っておきましょう。



 〇〇〇



「―――と、先日の一件についての顛末はこんな感じだ。この地の膿を減らすことが出来て良かった。若葉君には本当に感謝しているよ」

「いえ、あれは私の報復でしたので、感謝されるようなことでは・・・」

「それでも、だ。あんなおぞましいことが近くで行われていたのに気づけなかった私の代わりに、君が解決してくれたのだから。感謝してもし足りない」

「・・・そう、ですか」


 そういうことであれば、感謝を受け取っておきましょう。
 受け取らずにいて良いことなどありませんからね。

 とはいえ、少しむず痒いものがありますね。
 自分の怒りに突き動かされて行った報復の結果ですもの・・・。


「あ、組長を務めていた男が中々口を割らなかったんだが、君の言った通り狐の仮面の話をしたら、瞬く間にペラペラ話し始めてね。あの重傷といい・・・ははは」


 私が気まずそうなのを察したのか、途中から笑ってごまかしてくれました。
 笑い声は随分と乾いていましたが。

 まあ、アレを人の手でやったとなれば、乾いた笑いも出るでしょうね。
 私だってそう思うくらいですから、柴田さんは・・・。


「ついては、君に褒賞を出したい。鎌鼬の一件もそうだが、色々と恩が溜まり過ぎていてな。表立って与えることは出来ないし、私の裁量内で、という条件つきだがな」

「褒賞、ですか・・・?」


 そういうものは特に求めていないのですが・・・。
 どちらの件もお金の為にはたらいたわけではありませんし。

 それに、妖怪<鎌鼬>の件では色々と準備してもらいましたらから、それで相殺でいいと思っていました。

 ですから、突然言われても思い浮かぶものなど・・・・・・あ。


「でしたら、一つだけお願いしたいことがあります・・・!」

「おっ、そうかそうか! 断られるかと思っていたので、それは有難い! ささっ、叶えられるかどうかは分からないが、何でも言ってくれ!」


 何故か柴田さんが嬉しそうです。
 ですが、何故断られると確信していたのでしょうか・・・?

 ・・・想像の中の父と母が「俺たちが派手に断ったからだよ」と言っています。

 首を振ってその想像を振り払い、私は柴田さんに要望を告げました。


「ではっ・・・私っ、お休みが欲しいですっ・・・!!」

「・・・・・・はぁ?」


 柴田さん・・・何故そんな間の抜けた顔をするのでしょうか。
 まるで、「この人、何間の抜けたことを言ってるんだろう?」みたいな顔です。

 ・・・納得のいく説明を求めますっ!!

しおりを挟む
感想 105

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

押しかけ付喪神 〜追憶の仲春〜

松林ナオ
キャラ文芸
ある日、家に帰ると「父親」と自称する付喪神が住み着いていた。

人形の中の人の憂鬱

ジャン・幸田
キャラ文芸
 等身大人形が動く時、中の人がいるはずだ! でも、いないとされる。いうだけ野暮であるから。そんな中の人に関するオムニバス物語である。 【アルバイト】昭和時代末期、それほど知られていなかった美少女着ぐるみヒロインショーをめぐる物語。 【少女人形店員】父親の思い付きで着ぐるみ美少女マスクを着けて営業させられる少女の運命は?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

後宮なりきり夫婦録

石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」 「はあ……?」 雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。 あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。 空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。 かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。 影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。 サイトより転載になります。

処理中です...