妖符師少女の封印絵巻

リュース

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二章 高校入学編

47 警察署での話し合い

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「―――以上の理由で、今回の件は妖怪<鎌鼬かまいたち>によるものだと推測されます」

「妖怪、か・・・。十年に一度あれば多い方だと聞いていたのだが、それが現れるとはな・・・」

「どういう経緯で生まれたのかは分かりませんが、外からきた可能性が高いです」


 あくまでも推測でしかありませんが、父と母が見落としていたとも思えません。
 最近になって外からやってきたと考えるのが自然でしょう。
 妖怪は二週間やそこらで発生するものではありませんし。

 それよりも、問題となるのは・・・。


「・・・どう思う?」

「人間にあれだけの物理的被害を与えている以上、それなりに力を蓄えているのは間違いないと思います」


 悪霊は人間に物理的干渉が出来ないので、その点も妖怪であるという根拠です。
 せいぜい、とり憑いて悪さをするくらいで、気を確かに持てば跳ね除けられる程度のものでしかありません。
 凪沙さんのお父さんは、経営の先行きが不安になったことで付け入るスキを生んでしまったのでしょう。

 そういう例外を除き、この世ならざるモノは現世の存在に勝てません。
 そして、そんな道理を捻じ曲げるのが<妖怪>という存在です。

 ただ、例え<妖怪>といえど、簡単にあれ程の被害を出せるはずがありません。
 こういう場合、高位の妖怪であるか、何らかの方法で力を蓄えているはず。
 一般的(?)なのは、自らが後押しして変化した悪霊を取り込むことですね。
 どういう理屈で、そうやって力が溜まるのかは分かりませんけど。


「ふむ・・・私はあまり詳しくないが、今の若葉くんに何とかできる相手か?」

「・・・そうですね。勝率は、多く見積もって、これだけです」


 私は柴田さんに向けて人差し指を一本立てました。


「っ、一割か・・・。流石にそんな無茶な賭けをさせる訳には―――」

「あ、違いますよ?一割ではありません」

「む?だが、君は指を一本立てて・・・?」


 どうやら、本当に詳しいわけではないんですね。
 まあ、<妖怪>がどんな存在かなんて、物語やアニメでしか分かりませんし、そういう想像になってもおかしくないですけど。
 物語では普通に主人公が倒したりしてますし。

 ですが・・・<妖怪>はそんな甘いモノではありません。
 土台、あそこまで進化してしまったこの世ならざるモノは、普通の人間にはどうしようもないモノなのです。

 私は<妖符師>ではありますが、それでもギリギリ人間の枠組みです。
 どこぞの陰陽師のように格好良く退治などできません。

 つまり、何が言いたいかといいますと・・・。


「勝率は一割、十パーセントではなく・・・一%です。どれだけ甘く見積もっても、それ以上にはなりません」

「・・・・・・」


 柴田さんは目を見開いて沈黙、そして驚愕。
 既に私が解決にあたることは話しているが故に、この反応なのでしょう。

 十中八九死ぬ戦いに自ら飛び込むのは、どう考えても正気の沙汰ではありませんもの。驚愕されるのも仕方ありませんね。


「・・・死ぬつもりなのか?」

「まさか。私は自殺志願者ではありませんので・・・」

「だが、戦えば生きては帰れないのだろう・・・?」

「絶対に勝てないとは決まってませんから。それに、このまま放置しても、より強くなるだけで、どんどん勝率は下がっていくというのが私の予想です」


 授業中に何度も試算してみましたが、逃げ続けて勝てるようになる日を待つという手は、現実的ではないと分かりました。
 どこかの誰かが負の感情を発し続けているせいですね。
 その人を見つけたら、一発くらいお見舞いしても許されると思います。


「早い話が、ここで何とかしなくては、この町は危険、ということです」

「ぐっ、だが・・・咲夜さんと紅葉さんに会わせる顔が・・・! それに、まだ若い君を死にに行かせるなど、そんな外道な真似は――――」

「町を守るトップが、そんな私情で動いてはいけないと思いますよ?」

「っ・・・」


 未来が無いのなら、少しの可能性に賭けて、送り出すのが正しいと思います。
 逆に、未来に勝機があるのなら、是が非でも引き留めるべきですね。

 ああ・・・一つ大事なことを言い忘れてました。


「そして何より・・・私自身が手をこまねいていて、守りたい存在を取りこぼすのは、絶対に嫌なんですっ・・・!」

「・・・・・・」


 言ってしまえば、私も私情で動いているようなものです。
 そういう意味では、町を守る<妖符師>として失格かもしれませんね。


「・・・分かった。こちらとしても、出来る限りの支援をさせてもらう。だから・・・どうか生きて帰って欲しい。君自身のために。そして、町の為にも、な」

「はい。最善を、尽くします・・・!」


 何とか納得させられたようですね。
 最後の一言は、私の主張を逆手に取った脅しですね。

 君が居なくなったら悪霊によって、この町がどうなるか分からないぞ、と。

 言われずとも、そんな事態にはさせませんよ。


「つきましては、いくつか手配して頂きたい物と、それと、捜査情報の確認をしたいのですが・・・?」

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