妖符師少女の封印絵巻

リュース

文字の大きさ
上 下
45 / 91
二章 高校入学編

45 授業開始と桜

しおりを挟む
 月曜日。授業が本格的に始まります。

 そのせいか、一限目を前にして、みんな少し緊張気味です。
 誰しも、授業についていけるか不安になりますよね。


「凪沙さん、私が落ちこぼれたら一緒に頑張ろうねっ・・・!」

「何で私が落ちこぼれる前提なの!?」

「「「ぶふっ!?」」」


 そんなこんなで担当の先生がやってきて、授業が始まりました。







「んんっ・・・ふぅ」


 午前の授業が終わりましたので軽く伸びをします。
 今の授業は数学Ⅰでしたので、私の頭では少々難しかったです。
 あやふやな部分もありますので、家で復習する箇所に印をつけておきます。

 細かいところまで印をつけて・・・お終いです。
 随分多くのチェックがついてしまいました・・・。
 時間だけは沢山ありますから、頑張って復習しましょう。


「若葉っ、凪沙っ、一緒にお昼ご飯食べよっ!」

「お友達と一緒にお昼ご飯・・・・・・!」

「若葉さん? ・・・ダメ、トリップしてる」


 ハッ!?いけません、せっかく誘ってもらえたのに返事もせず・・・!
 えっと、えっと・・・・・・。


「私、今まで生きてきた中で一番幸せです・・・!」

「「そこまで言うのっ!?」」


 今のはお世辞というやつですが・・・分かってますよね?
 と、机を少しだけ移動させて、お弁当を取り出します。
 私たちの机は横一線に並んでいますから、本当に少しだけです。


「わっ、若葉のお弁当、凄く綺麗!」

「本当だね。もしかしなくても自作だよね・・・?」

「はい。朝早くに起きて作りました。私としては、凪沙さんや凛のお弁当の方が美味しそうに見えますけれどね」


 そこはかとなく、お母さんの愛情を感じます。
 きっと、娘の話題作りのために頑張ったのでしょう。


「ところで、先程の数学・・・どうだった? 私はあやふやな部分が多くて・・・」

「私は・・・後半が怪しいかも? あはは、いきなり危ないかも・・・」

「展開とは何ぞや、て感じだった・・・」


 やはり高校生の勉学は難しいですね。
 二人とも苦戦しているようです。

 補習だけは勘弁願いたいところで・・・。









「――――という訳なんですが、何かいい方法は無いでしょうか・・・?」

「・・・知らん。そんな方法があれば誰もが使ってるだろ。勉強で悩む奴なんてこの世からいなくなるぞ」

「やはりそうですか・・・」


 放課後、桜の木を訪れて確認するついでに尋ねてみました。
 当然の如く、そんな方法はないとのご回答を頂くことになりましたが。


「・・・大体、何故それを俺に聞く」

「知人の中で一番物知りそうだからです」

「・・・知人が少ないんだな」

「ううっ・・・気にしていることをハッキリ言われてしまいました・・・」


 中学までは交友関係そのものが存在しませんから、どうしても・・・。
 でも、これから巻き返していけばいいんです・・・!


「そういう訳ですので、私とお友達になってください・・・!」

「断る」

「そんなっ・・・!?」


 呆気なく断られてしまいました・・・!
 もう少し段階を踏むべきだったかもしれません・・・。
 きっと一年ぐらい時間を掛けて仲良くなるべきだったのです・・・!


「・・・そこまで落ち込むことか?」

「はい・・・。両親が事故で亡くなった時以来の悲しさです・・・」

「っ・・・そこまで言うか」


 おや?少し表情が崩れましたね?
 今の会話に何か思うところでもあったのでしょうか?


「大体がして、何故俺に関わろうとするんだ?」

「それは・・・何となく、気になるからですね」

「はぁ・・・?」


 上手く言えませんが、何故か気になるのです。
 放っておけないといいますか・・・不思議な感覚ですね。


「・・・あ、この間はありがとうございました」

「・・・何の話だ?」

「私に教えてくださったではないですか・・・この桜のことを」

「・・・っ!?」


 と、そろそろ時間切れですね。


「バスの時間が迫っているので、今日はこれで失礼しますね」

「っ、待て。お前、この桜のことが・・・って、速っ!?」


 安倍晴幸くんが桜から慌てて降りてきた時、既に私は遠く離れていました。


「ととっ、私のことが知りたいのでしたら、お友達になる決意を固めた後で、今度はそちらから私を訪れてくださいね?」

「なっ・・・!?」


 言いたいことだけ言って、私はバスに飛び乗りました。
 色々なことが分かりましたし、今日は実りの多い一日でした。

 それにしても・・・・・・いえ、邪推はやめておきましょうか。






「・・・友達、か。断っておいて、今更そんなこと言いにい行けるかよ・・・」

しおりを挟む
感想 105

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

押しかけ付喪神 〜追憶の仲春〜

松林ナオ
キャラ文芸
ある日、家に帰ると「父親」と自称する付喪神が住み着いていた。

人形の中の人の憂鬱

ジャン・幸田
キャラ文芸
 等身大人形が動く時、中の人がいるはずだ! でも、いないとされる。いうだけ野暮であるから。そんな中の人に関するオムニバス物語である。 【アルバイト】昭和時代末期、それほど知られていなかった美少女着ぐるみヒロインショーをめぐる物語。 【少女人形店員】父親の思い付きで着ぐるみ美少女マスクを着けて営業させられる少女の運命は?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

後宮なりきり夫婦録

石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」 「はあ……?」 雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。 あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。 空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。 かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。 影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。 サイトより転載になります。

処理中です...