妖符師少女の封印絵巻

リュース

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一章 妖符師誕生編

19 完治と遭遇

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「ッッ・・・!血液みたいに・・・!」

「あと少しです、咲良さん・・・!」


 十分程経過したでしょうか。
 咲良さんは妖力を一周させることに成功しました。
 ここまでくれば、あとは同じことの繰り返しです。そう難しくはないでしょう。


「・・・・・・っ!これで、出来て、ますか・・・?」

「ええ、出来てますよ。では、私からしている干渉をやめますので、そのまましばらく続けてください」

「はい・・・!」


 もう必要ないと判断して、咲良さんの妖力に対する干渉をやめました。
 あとは、咲良さん次第です。
 循環を自然に行えるようになれば、目が見えるようになるはずです。

 いえ、目自体は妖力の塊を排除してからすぐ、見えるようになっているはずです。ただ、彼女は目を瞑っている上、妖気循環に集中していますので、そのことを認識していませんので。


 それから更に二十分後。
 妖力の循環はかなり自然に行えるようになってきました。
 無意識で、という領域にはありませんが、一先ずはこれで十分でしょう。
 これから毎日欠かさずにやっていれば、その内習慣になって負担にもならないはずです。それに、一日一回十分でも循環させれば、滞りは発生しませんから。


「咲良さん、ゆっくりと、目を開けてください」

「っ・・・!ですが・・・!」

「大丈夫。必ず見えるようになっていますから」


 これで見えないままだったらと思うと、怖くて目が開けられないのでしょう。
 でも大丈夫です。私の目が節穴でもなければ、間違いなく治っていますから。


「っ・・・あっ、ああっ・・・!見えます・・・!目が、目が見えます・・・!」

「はい。これでもう大丈夫です。最低でも一日一回は循環をしてくださいね。疲れずに自然と出来るようになる回数は多い方が良いです」

「はいっ・・・!ありがとうございます、お姉さん・・・!」

「わわっ・・・!?」


 いきなりのことで咲良さんに抱き着かれてしまいました。
 疲れていなければ回避できた・・・いえ、その必要はありませんね。

 嗚咽が聴こえますので泣いているようです。
 しばらくこのまま泣かせてあげましょう。

 ・・・泣いている中でこんなことを思うのは不謹慎かもしれませんが、ここまでの反応を見せられると、とても嬉しいですね。

 私・・・<妖符師>になって良かったです。








「あの、ありがとうございました・・・!」

「どういたしまして。繰り返しになるけど、一日一回はその流れ・・・妖力を循環をさせてくださいね」

「はい、忘れずにやります・・・!」


 一度コツを掴んでしまえば難しくはないですから、きっと大丈夫でしょう。
 念のため、また見に来る必要があるでしょうか・・・?


「それで、お願いなんだけれど、私がここに来たことは秘密にしてもらえますか?」

「お姉さんがそれを望むなら、誰にも言いません。私の恩人なんですから」

「ん、ありがとう、咲良さん」


 さて、これにて一件落着ですね。家に帰りましょう。

 ・・・んんん?

 違います、ここには凪沙さんのお父さんの様子を見にきたんです!
 治療が大仕事だったので、すっかり目的を終えた気になっていました!


「それでは、私は本来の用事がありますので、これで失礼します。あ、扉から出ていくので、部屋の鍵を閉めておいてくださいね」

「あ、はい!本当に、ありがとうございました・・・!」

「どういたしまして」

<ボクも失礼するコン>


 私はベッドの上にあやかし屋の名刺を置いて、部屋を出ました。
 さて、凪沙さんのお父さんのお部屋はどこでしょうね。


「・・・あれ?もう一人の人の声は誰だったの・・・?」


 ・・・そういえば、フォーンの紹介をしていませんでしたね。
 というより、私も名乗っていませんでした。

 ・・・まあ、いいですよね?









 そろそろ三時になります。
 凪沙さんのお父さん、沢渡修二さんのお部屋、その前に私は居ます。

 ここに来る前にマスターキーを拝借してきましたので、侵入は楽々です。
 完全に犯罪行為ですね、はい。

 ですが、実行しないという手はありません。
 何故なら・・・


<若葉、ギリギリ中位悪霊だけど、高位になりかけてるコン!気を付けるコン!>


 ええ。部屋の中に悪霊が居ると分かっていたので、侵入しない選択肢はありませんでした。
 では、戦闘開始です。


「壱ノ舞・悠扇!
 弐ノ舞・硬扇!」

「!!!!」


 幾ら高位間近といえど、中位は中位。個体差の範疇に過ぎません。
 存在の格が上がる高位悪霊とは比べ物になりませんね。
 多少動きは良いですが、機能の中位悪霊と比べても、やはり誤差の範囲。
 それに、私だって日々強くなっていますから。

 程なくして、中位悪霊は存在を保てなくなったので、<白符>で封印しました。
 これで凪沙さんから依頼(『悪霊退散のお守り・松』の購入)のあったお仕事は終了ですね。他に悪霊も見当たりませんし、これで帰れます。






 ・・・ゾクッ!!


「なっ・・・!?」

<若葉!何かが高速でこちらに来るコン!!>


 背筋に悪寒が走ったかと思えば、何かがこちらに急接近してくるのを感知。
 目の前に現れるまで、時間にして一秒ほどのことでした。


<若葉っ、逃げるコン!!
 高位悪霊!それも、妖怪になりかけてるコン!!今の若葉じゃ勝てないコン!>

「うん・・・分かってるよ。さっきから、体の震えが、止まらないもの・・・」


 間違いなく私より強いであろう、妖怪になりかけている<高位悪霊>。
 正直、怖い。今すぐ逃げ出したい。戦うべき相手じゃない。

 でもね、フォーン。

 この高位悪霊・・・どう見ても、見逃してくれそうにない・・・!!


「キィィィィィィィィイイッ!!!!」

「っ、あっ・・・!」


 敵の突進がっ・・・避け切れないっ!?

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