異世界転生? いいえ、チートスキルだけ貰ってVRMMOをやります!

リュース

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4章

242 ギルド戦準備 その3

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 選択を終え、システマの見送りを受けて転送されたのは、風の都郊外。
 目の前には大きな城が聳え立っている。

 僕たちが拠点に選んだのは、風の都ウィーンフライトから少し離れた場所にある、この辺りで一番高い山の山頂にある西洋風の城だ。

 少人数用の拠点であり、天然の要塞。
 山を登ってここまで辿り着くことさえ面倒極まりない位置。
 侵入推奨箇所は西門一つだけであり、そこも急斜面になっている。

 早い段階で議論が纏まったのは、この拠点が自分たちにぴったりだったからだ。
 反対意見も出ず、早々に決まってしまったのである。


「残り二時間三十分ね。全員、城の設備確認を急いでちょうだい。それが終わったら作戦会議とフラッグの位置決めをするわよ」

「「「「「了解!」」」」」


 そして、全員で城の設備確認を開始した。


「―――ねぇアスト、どうして西洋風のお城なのに日本風の内つくりなのかな?」

「そんなこと僕に聞かれても知らんよ・・・と、ここは見張り台に使えるな」


 そんなこんなでツッコミどころは満載だったが、一通りの確認は終わった。

 城の構造は見た目に反して三階建て(意味不明)だった。
 山の頂上だけあって、天守閣からは周囲が一望でき、敵の接近を見つけやすい。
 唯一の侵入箇所と思われる西門から先は急斜面で、そこで戦うのは大変そうだ。

 そんな感じで内部状況の共有を終えて、作戦会議へ移った。
 ちなみに場所は天守閣。


「―――それで、基本方針を決めたいのだけれど、なにか意見はあるかしら?」

「うぃ、全員で立てこもって籠城戦」


 真っ先に意見を出したのはミア。
 この城を見た後だと、それも案外悪くないと思えてしまう。
 僕とミレアを含めて全員で守れば、そうそう陥落はしないだろうし。

 あ、陥落というのは比喩だ。
 フラッグを奪われる状況のことを指している。
 一度目を許したら、その後の難易度は随分下がりそうだしな。


「でもそれだと、ポイントを稼げないよね? 私は全員で攻めるに一票!」

「シエラ、貴方は少し黙っていて頂戴」

「何でっ!?」


 はぁ・・・「何でっ!?」じゃないだろう。
 コイツ実は深く考えずに一番楽しそうなのを選んだな?

 基本方針として、全員で守りはアリでも全員で攻めはナシだろう。
 そんなことしたら、いくら天然の要塞でも陥落させ放題だろうに。
 シエラはそんなことも分からないのか。


「・・・アストから熱い視線を感じるんだけど?」

「・・・はぁ」

「今のため息は何なのかなぁっ!?」


 もういい、コイツは放っておこう。
 ミアのアイデアについてだが、意外とちゃんと考えられている。

 僕たちは少人数故に、二十四時間生き延びて最後まで残ることも困難だ。
 試合展開次第ではあるが、守備一辺倒というのも悪くない。

 例えば、最終成績がどこもマイナスポイントだらけなら、ゼロポイントでも上位に食い込める可能性は無きにしも非ずだ。


「最初は様子見を兼ねて守備重視でいいと思うよ? 攻め辛いという情報が敵に伝われば、くる人数は減りそうだからねっ! そしてそこからが攻撃の好機っ!」

「・・・序盤は守備重視で、状況次第で攻め手を出す、ということでいいかしら?」

「僕はそれに賛成です。守備ばかりでもつまらないですからね」


 ミレアの意見に賛成しておく。
 他のメンバーからも反対は出なかったので本決まり。

 その後、幾つかの方針が決定した。

 まず、僕かミレアのどちらかは常に拠点内に残ること。
 これは防衛戦力的に仕方がないことだろう。
 フラッグ喪失によるポイントは、フラッグ獲得で得られるものの三倍だからな。
 どれだけフラッグを奪っても底が見える以上は、守りは非常に重要なのだ。

 だって、二十四時間で六人が奪える数なんて、たかが知れているだろう?
 一時間で一つ奪って持ち帰っても二十四個。
 八回フラッグを持ち帰られたら、総合ポイントはプラマイゼロなのだ。

 このゲームで重要なのは、如何に失点しないか、らしい。(ミレア談)
 まあ、拠点が隣り合っていたりすれば話は別なのだが、残念ながらこの辺りに他の拠点は無いので。

 途中に魔物が出ないにしても、どの程度の時間でどの程度の距離を移動できるかは完全に未知数だ。途中で敵と遭遇することなど珍しくもないだろうし。

 そういう、どれくらい得点できるか分からない点からも、防衛の大事さが窺える。

 なお、フラッグの設置場所については・・・ミレアの案を採用した。
 最初そのアイデアを出された時は、全員ポカンとしてしまったがな。

 本当にそれでいいのかと聞きたいが、出来た以上はアリなんだろう、多分。

 そして現在、僕とレインは二人で土石魔法&土魔法で大石を大量に生産している。


《第四職業が〖土石魔法士Lv7〗になりました》
《熟練度が一定に達し【土石魔法】スキルがLv7になりました》
《熟練度が一定に達し【魔力制御】スキルがLv6になりました》
《熟練度が一定に達し【魔気】スキルがLv13になりました》


 おっと、また上がったな。
 地味な作業だが、何気に熟練度の溜まり方が良さげだ。
 色々な工夫を凝らしているのがいいのかもしれない。


「・・・・・・。」

「・・・・・・。」


 レインと二人っきりなのだが、黙々と作業をしている。
 お互いに相手をチラチラと窺いながら、無言で石を生み出し続けている。

 ・・・何だろう、これ。
 物凄く甘酸っぱい感じなのだが。

 いや、色々と話したいことはあるのだが、こうして改めて二人っきりになると妙な緊張をしてしまうというか。

 直ぐ隣からレインの静かな息づかいが聴こえてくる。
 普段なら気にならないものなのに、今は何故かそれがドキドキを加速させる。

 そして、徐々にこちらに近づいていたレインが僕の方に頭をもたれさせ――――


「―――好きです、アストさん・・・」

「っ!?」


 やばいやばいやばい。
 何がヤバいって、心拍数がヤバい。
 このまま心臓が破裂するんじゃないかと思えるくらいに鼓動が激しい・・・!

 気づいたら僕は、レインの手に自分の手を重ねていた。
 重なり合ってからようやく気付くなんて、いよいよもって彼女に対する欲求の抑えがきかなくなっている。


「っ・・・アスト、さん・・・」


 レインが、そこはかとなく喜びが籠っている声を漏らした。

 どうしよう・・・。
 僕、明日死んでもいいかもしれないくらいに幸せなんだが・・・。

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