異世界転生? いいえ、チートスキルだけ貰ってVRMMOをやります!

リュース

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4章

234 昨日の顛末

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 今日は月曜日。
 美鈴が居ない影響なのか、やけに寝覚めが悪い朝になった。

 そういえば、昨日あれからログインしていないのだが、どうなったのだろう?
 色々と恥ずかしいことを口走っていたような気がするのだが・・・。
 どこまで聞かれていたのか分からないので不安だ。

 今日は闘技大会ギルド戦の予定だが、未だに内容は不明になっている。
 分かっているのは九時から開催ということと、市街戦ということくらいか。

 色々と予想しながら朝食の支度をする。


「おはようお兄ちゃんっ!」

「ん、おはよう、美鈴。あと五分くらいで完成するから、少し待っててくれ」

「はーい!」


 しばらくすると美鈴が降りてきたので少し待ってもらうことに。
 態度や雰囲気はいつも通りに見えるが、真相は不明だ。
 僕にはそこまで見分けることができないからな。

 仮に見分けられたとしても、言えることなんて何もない。
 そこに触れず、いつも通りに接するだけだ。

 と、目玉焼きに付け合わせ野菜の盛り付けもして・・・完成。


「「いただきます」」


 ご飯と味噌汁を口に運びながら、昨日泣いていた美鈴の姿を思い出す。

 胸が締め付けられるように痛むが、これは忘れてはいけない痛みだ。
 自己満足ではあるが、一日一度は思い出すようにしよう。


「・・・お兄ちゃんって不器用だよね」

「・・・はっ?」


 突然何を言いだすのやら。
 確かに不器用であることは否定できないが、何故に今それを?

 不器用なお兄ちゃんなんて大っ嫌い! みたいな感じか?
 それはそれで泣ける。

 ・・・いかん。思考がネガティブになってる。


「あんな賭けをしなくても、普通に優香と付き合えばいいのに。別に思い悩む必要なんて無いんだよ?私の横恋慕みたいなものだった訳だし・・・」


 横恋慕、か。
 そこについてはとりあえず置いておこう。

 確かに、今時色恋沙汰なんてそう重い話でもない。
 ちょっとお試しで付き合うような男女も増えているし、それにとやかく言う人も少なくなっている。
 恋愛観の変化というやつだな。
 流石にまだ非難はされるが、二股をかける男もそれなりに居る。

 第一、女性の想いを受け止めなかったからといって、責任を感じるのは筋違いなのかもしれない。

 だが、僕はそこまで割り切れそうもない。
 そういう性分なのかもしれないが、悲しむ人は少ない方が良いと思っている。
 自分に想いを寄せてくれる人となれば、尚更真摯に接したい。

 そう考えている割には、碌な解決も出来ない駄目男なわけだが、僕は。
 とりようによってはただの八方美人だし。


「・・・まあ、それが僕の在り方みたいなものだからな」

「はぁ・・・お兄ちゃんも損な男だよねぇ・・・」


 僕はそうは思わないが・・・傍から見ればそう見えるのかね?

 こんな時、あの父親ならどうするんだろうか・・・。
 父も昔はそういう悩みがあったのだろうか。

 そういえば以前の手紙に、二人とも幸せにしろ、と書かれていたな。
 あれはこの時のことを暗示していたのか?

 ・・・だとしたら、とてもそんな展開にはもっていけそうもない。
 どうやって二人とも幸せにすればいいんだよ。

 どちらかの想いを受け入れれば、もう片方は拒絶するしかない。
 拒絶した方の女性・・・美鈴を幸せになど、できるはずがないだろう。



 〇〇〇



 朝食後、FSOにログイン。
 降り立ったのは・・・アライアの町の転移水晶。
 運営が気を利かせてくれたのだろうか。

 町を歩いてウェザリアに向かう・・・途中で視線を感じた。
 それも、かなりたくさん。

 ・・・昨日の件が影響しているのか?

 表彰式はギルド戦の後で纏めて行われるそうだし、すっぽかしてはいない。
 他に注目される理由に心当たりが無い。

 掲示板を覗いてみたいが・・・見るのが怖い。


「―――そこに居るのはアストか?」

「ん?ああ、フラン。お前も今ログインしたのか?」

「ああ、そうだ。その・・・昨日は大変だったな?」

「・・・それはどれについてだ?」


 遭遇したフランから不穏なことを言われてしまった。

 あのフランがこんなに気まずそうな顔をするって・・・一体何があったんだ。
 本人そっちのけとかどういうことだよ・・・。


「まだ掲示板は見ていないか?」

「ああ。見るのが怖くてな。・・・そんなにボロクソに言われてるのか?」


 だとしたら、今すぐログアウトしてしまいたい気分に駆られる。
 このあとギルド戦なのでそんなことはしないけどさ。


「いや、別にそういうことではないぞ? チート疑惑が噴出して、それにまつわる論争で一部掲示板が炎上したらしい。運営が否定をしたことで鎮静化したがな」

「ああ・・・そういう。他には何かあるか?」

「・・・いや? ああ、レインとの関係を邪推する輩が居るが、ごく少数だ」


 うーん・・・。
 多分聞かれたのは、レインに対する告白云々の部分だけ。
 ミレアに言及した時は、土煙などが酷くて音声も通らなかったのだろう。

 不幸中の幸いといったところか。

 チート云々の話をもう少し詳しく聞くと、疑惑の出所は幾つかあるとのこと。
 ギルド《龍の咆哮》や《神聖騎士団》あたりがメインらしい。

 争点となったのは<固有武技>や<固有魔法>について。

 人間にあんなことができる訳ない!
 これはチートだ!
 即刻アカウントを停止しろ!

 みたいな意見が山ほど出たらしい。
 後からそれらが、先に挙げたギルドメンバーばかりだと明らかになり、論争に。

 だから何で本人たちそっちのけなんだよ・・・。
 そもそも、否定の仕方がおかしいし。
 やはり後で掲示板を覗いておこう。


「それはともかくとして、だ。優勝おめでとう、アスト」

「ああ、ありがとう、フラン。・・・お前に優しくされるなんて、午後からは槍でも降りそうだな」

「一言余計だっ!!何故素直に賞賛を受け取れないのだっ!」


 何でって、そりゃあ・・・恥ずかしいからだろうよ。

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