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4章

231 最上階と告白

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 階段の中ほどで、優香の尋ねられた。
 ここまでは観光を楽しんでくれていたと思うが、流石に疑問に思うよな。


「飛鳥さんって、本当に何者なんですか・・・?私、以前両親に連れてこられたことがあるんですけど、その時は980Fまでしか行けませんでした。そこから先は、一部の人しか立ち入れない、って」

「僕としては、優香のご両親がそこまで立ち入れることに驚きなんだが・・・。
 前も言ったと思うけれど、親の七光りだよ。僕自身が凄いわけではないから。
 だから、そんなにかしこまった態度はやめてもらえるとありがたいな・・・」

「っ、御免なさいっ!つい、無意識的にっ・・・!」


 うん。そんな態度だとちょっとだけ悲しいからな・・・。
 癖みたいなものだろうし、そこまで気にしてないけども。

 こうなる恐れがあったので、優香をここに連れてくるのは少し迷った。
 でも、やはりあの景色を見てほしかったのだ。

 告白の場としては、これ以上ない場所だからな。


「・・・仮に、僕が少し特殊な生まれだとしたら、優香は僕を嫌いになるか?」

「そんなことはあり得ませんっ!!怒りますよっ!?」

「ふふっ。そうだな、疑うのは失礼だよな・・・・・・すまなかった」

「あっ、いえっ、謝らせたかった訳では・・・!」


 優香が少し怒った表情から、オロオロする姿へ瞬間的に変わった。
 やっぱり可愛いな・・・。

 ・・・と、そろそろ最上階だ。

 最上階はワンフロアのみとなっていて、その部屋はドーム状だ。
 パレスという名称はここからきているんだ、多分。


「優香、心の準備はいいか?」

「えっ?心の準備が必要なんですかっ?」

「まあ、必要といえば必要だな。じゃあ、開けるぞ」

「あっ、まだ心の準備がっ・・・!」


 僕は、最上階への扉横にある認証装置に身分証を置き、扉を開いた。



 〇〇〇



 そこは、一面の星空だった。


「・・・・・・。」


 優香は呆然と宙を見上げている。
 部屋の中に入ったら星空だったなど、この反応になって当然だ。

 かくいう僕も、初めて来たときは同じように呆然としたものだ。

 優香を大部屋の中に一つだけある大椅子に誘導し、一緒に腰掛けさせる。
 そこまでいっても、未だに呆然としていたが。

 地面以外の、僕たちの周囲四方八方は、そこを見ても星の海。
 それも、プラネタリウムのようなものではなく、本物の星空だ。

 何をどうやったらこんなことが可能なのか、僕にはまるで分からない。
 父は望遠がどうこうとか、遠近法が云々とか、空間の接続がなんちゃらと説明していたが、半分くらいしか理解できなかった。
 最終的に、VRと同じような技術と言われて納得した。


「綺麗・・・!」


 僕の右に座る優香が呆然としながらも、そんな言葉を呟いた。
 目が輝ていることだし、気にいってもらえたようだ。

 僕の力ではなく親の七光りなのが本当に残念なところだ。

 僕たちは、しばし星空を堪能する。
 何度見てもいいものだな・・・これは。

 手が早いと言われるかもしれないが、優香の体に後ろから手を回して抱き寄せる。
 さっきから心臓がバクバク鳴ってるし、自分を抑えられる気がしなかったので。

 普段はこんなこと出来ないだろうに、ムードの力って凄い。


「あっ・・・飛鳥、さん・・・」


 優香の抵抗は・・・無かった。

 手を払いのけようとはせず、そのまま僕にもたれかかってきた。
 それどころか、僕の腕に抱きついてきた。

 もう嬉しいなんてものじゃないが・・・。
 心臓の鼓動が優香に聞こえてしまわないか心配だ。


 そんな幸せな時間が、どれくらい過ぎたのか。
 長かったようでもあり、ほんの一瞬のようでもあった。

 僕を現実へ引き戻したのは、右隣から聞こえてきた声だった。


「―――飛鳥、さん」

「どうし、た・・・っ!?」


 優香の顔が目の前にあった。
 その綺麗な顔を強制的に見させられて、嫌が応にも心臓の鼓動が跳ねる。

 整った顔立ちに、優しそうな表情。
 今回はそこに、情欲の色も覗いているように思われる。

 綺麗な黒い瞳が、涙で潤んでいる。

 彼女が何を求めているのか、嫌でも理解させられた。
 否、全く嫌ではないのだが、それは言葉の綾で・・・。
 でもそれはまだ許されていることではなく、まずは言うべきことが・・・。

 ・・・頭が熱くなり、思考が麻痺していくのを感じる。

 僕は本能のままに、口から言葉を紡ぎだす。


「優香・・・。君のことが・・・好きだ。僕と、付き合ってほしい」

「―――私、嫌な女ですっ。
 嫉妬もするし、できることなら飛鳥さんを独り占めしたいと思ってしまうっ。
 もし、飛鳥さんが、そんな私でもいいと言ってくれるならば・・・喜んでっ」


 優香から肯定の返事をもらった瞬間、タガが外れるのを感じた。
 その華奢で柔らかい体を抱き寄せて・・・。




「優香っ・・・!」

「飛鳥さん・・・んっ」




 そっとその唇に、口づけをした。

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