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リュース

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4章

228 決勝戦 VS ミレア 後編2

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 恐らく、勝負は長引かない。
 お互いに強力な切り札がある故に、精々十分かそこらで決着するだろう。

 僕としても、長引かせるつもりなど欠片もない。

 移動系スキルを駆使して、ミレアに急接近する。
 たった今取得した、【閃駆】というスキルのLv1アーツも使用して。


「『シャイニング・ムーブ』っ!!」

「っ、高速移動!?『エアリアルバースト』『トルネードウォール』!」


 咄嗟に発動させた魔法二つで、上手く奇襲を凌がれてしまった。
 風圧により空中に吹き飛ばされてしまった。

 だが、元よりこれだけで攻撃が入るとは思っていない。
 未見のアーツを使用した動きを囮にして、ここからが本命の攻撃。

 二段ジャンプによる空間移動でミレアに迫り、空中からの連撃を繰り出す。

 この【閃駆】というスキルのアーツ『シャイニング・ムーブ』は、そのクールタイムの短さこそが一番の武器。
 その代わりにAP消費は痛いが・・・ここは使う!


「『シャイニング・ムーブ』『トリニティ・ロード』っ!!」

「甘いよっ!『ロックウォール』!」


 ミレアは【閃駆】の弱点を早々に看破したようだ。
 このスキルでは、まっすぐにしか進むことができないので、壁を置かれるとそれだけで防がれてしまうのだ。


 ドガアッッ!!


 岩壁に激突して大ダメージを負った。
 HPバーが一気に半分を下回る。
 高速での突撃だった故に、ダメージが大きい。

 ・・・というか、物凄く痛い。


「もらったっ!『ライトニングボルト』『ライトニングボルト』っ!」


 地面に倒れた状態では迎撃負荷と見たのか、高速魔法を放ってきた。
 狙いたがわず二つの魔法が僕に命中し・・・・・・僕の姿は靄と消えた。


「・・・え?」

「―――背後の注意が疎かだ。『オラクレア・ペンタグラム』っ!」


 幻影の僕が消えた瞬間に、隠密系スキルを総動員して身を隠していた本体の僕が、ミレアの背後から襲撃。
 これで決まった・・・はずだった。

 僕の剣はミレアの体を切り裂いて・・・ミレアは靄と消えた。


「―――『スプラッシュメダリオン』『エッジブースト』『パラレル・ライン』!」

「っ、嘘だろっ!?」


 僕より更に後ろから本体のミレアが襲撃をかけてきた、だと!?

 まさかここまで読まれていたのかっ!?
 一体どんな頭してやがる!!

 おまけに短剣での接近戦だと!?
 今まで一度も使ってなかったのに、全部この時の為だとでも!?

 水紋魔法Lv1呪文アーツ『スプラッシュメダリオン』はかなり特殊な魔法だ。
 確か一定時間、己の魔法攻撃力と魔法防御力の半分を、物理攻撃力と物理防御力にそれぞれ上乗せする効果がある。

 つまり、いかな魔法職の物理攻撃と言えど、喰らったらヤバい!!
 下手したらこの攻防でHPが全損しかねない!!

 咄嗟に発動した『アクセラレーション』のおかげで時間はゆっくりと流れる。

 少しずつ背後にて短剣を動かしているミレア。
 魔法は使用意志を示すだけで発動するが、武器は自らが実際に振らねばダメージを与えられない。その違いに助けられた形だ。

 この状況を乗り切るには・・・・・・これしかないっ!!

 僕は全MPを使用し、夢幻魔法Lv1呪文アーツ『ファンタジアレプリカ』を発動。
 僕とミレアの間に、散々目にしてきた岩壁を生成。

 MPが足りないせいで中途半端な出来だが、他に手が無かったんだ!

 発動と同時に加速が終了し、ミレアの攻撃は一撃で岩壁を破壊。


「嘘っ!?そんな魔法知らないっ!!」

「おかげでMPがスッカラカンだよっ!!『フィフススローイング』っ!」

「しまっ・・・うあっ!!」


 僕の投擲は二発だけヒットし、ミレアの二撃目は僕のクリティカルポイントへ。
 火傷は・・・駄目か。

 僕とミレアのHPはお互いに一割を切った。


「はぁぁ・・・やっぱりお兄ちゃんは凄いね?完璧に勝ったと思ったのに、また予測を覆されちゃった。まあ、そういうところを好きになったんだけどね?」

「・・・済まないな。その想いには答えられそうもない」


 間近であるので、小声でそんな会話をした。

 僕の何処が良かったのか、甚だ疑問だったんだが・・・そういうことか。
 美鈴曰く、僕は美鈴の計算を悉く覆す存在だった、ということだ。

 ・・・思い出した。
 以前美鈴が一度だけ予想を外したのも、僕が関わったことだった。

 確か、テレビでやってた何かのレースの勝敗予測だったか。
 それ、僕はあんまり関係ないんじゃ・・・?


「ううん、もういいの。思いっきり思いをぶつけて、少しスッキリしちゃったから。私はもう大丈夫。これでようやく、お互いに前へ進めるね。こういう、ちょっと抜けてるけど私のことを真剣に思いやってくれるお兄ちゃんが、本当に本当に、大好きでした。ありがとう・・・アスト兄」

「・・・こんなやり方しか出来ない僕に、お礼を言われる資格なんて無いと思うが。それでも、感謝は受け取っておくよ、美鈴。こんな僕を好きになってくれて、ありがとう・・・ミレア」


 呼び方を元に戻し、決別の証とした。
 ミレアもきっと、そういう意図で呼び方を戻したのだろう。


「それじゃあ・・・決着といこうか。僕は<固有武技>を使わずにやるよ」

「じゃあ私も、<固有魔法>は無しでやるねっ!」


 お互いに一歩後ろに下がり、剣と杖を構える。
 最後は、シンプルにいこう。


「―――『パワースラッシュ』っ!」

「―――『パワースマッシュ』っ!」


 お互いの攻撃で微妙に狙いがズレ、お互いにクリティカルを外れた。
 そのせいで、二人ともほんの数ドットHPが残った。

 ミレア、接近戦も僕と同じくらいには強いんだな。
 勝つつもりだったのに、決めきれなかった。

 この状態からなら、リーチが短くて小回りの利く短剣の方が有利。

 つまり、このままだと僕は負ける。

 だが、僕にもう打つ手など・・・・・・。


「アスト兄には悪いけど、私の勝ちだねっ!」

「ああ、そうだな。ミレアの方が強かった。・・・もっとも、負けてやる気はないけどなっ!!」

「ぁ、えっ・・・?」


 僕は短剣を取り出したミレアを正面から抱き寄せ、彼女の背後から、自分諸共【精霊の剣】で貫いた。

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