異世界転生? いいえ、チートスキルだけ貰ってVRMMOをやります!

リュース

文字の大きさ
上 下
228 / 264
4章

227 決勝戦 VS ミレア 後編1

しおりを挟む
「アスト兄、気づいてっ・・・!?」

「―――『オーバーアクセル』っ!」

「っ!?」


 ミレアが動揺した隙に二度目の切り札を行使する。
 ズルいのは分かるが、ミレアも時々やることだからな。

 勝負の決まる大事なタイミングで「お兄ちゃん、大好きっ!」は駄目だろう。

 ・・・って! 僕が動揺してどうする!

 自分の想像のせいで生じた動揺を抑え込み、武器換装後、光速でミレアに接近。


「―――<固有武技オリジナル・アーツ>『フォトン・インフィニティ』っ!!」

「!?」


 光速のまま、無限とも言える回数、刺突を繰り出し続ける。

 ミレアは無詠唱の魔法で必死にさばいているが、いずれ限界がくる。
 かといって光速から逃げることも無理だ。

 つまり、僕がこのラウンドは頂いたということ。

 体感で八秒が過ぎた辺りで防衛に限界がきたようで、ミレアに刺突がヒット。
 光速状態が終了した段階で三発ヒットさせることに成功した。

 ミレアのHPバーは残り半分を切った。
 数えきれないほど魔法も使用したので、MPも大きく減って残り四割。

 お互い、切り札はあと一回で限界そうだな。
 四回という使用回数は希望的観測過ぎた。


「どうしたミレア?精彩を欠いているぞ?上手くいっても命中するのは二発までだと思っていたんだが・・・」

「アスト兄のせいでしょっ!!この状況で、あんなこと言うなんてっ!!」

「それは悪かったと思っているが、ブーメランって知ってるか?」

「ううっ・・・!」


 まあつまり、その件に関しては僕もミレアも悪いということだ。
 ここはお互いの所業を相殺しておこう。

 ・・・ミレアの顔が赤いのは、やはり僕の勘違いではないという証拠だな。
 これで誤解だったら恥ずかしいどころではない。
 一年くらい家出したくなるレベルだ。

 酷い土煙と騒音の中で会話を続ける。


「・・・アスト兄。ううん、お兄ちゃん、いつから気づいてたの?」

「・・・確信したのは最近。FSOを始めて直ぐの頃だな。あの頃からだいぶん露骨になったし。多分、僕とミレア、両方のアナザースキルによる影響だろう」

「私の気持ちに気づいてて、見て見ぬ振りをしたってこと・・・?」

「ああ、そうなるな」


 時には自分の思考さえ誤魔化して、好意の表れをスルーしてきた。
 本当に最低で、酷いことをしていた自覚はある。

 許してもらうつもりはないが、片をつけなければ先へ進めない。

 それ故に、色々な覚悟を決めたのだ。


「・・・・・・馬鹿」

「・・・・・・。」

「お兄ちゃんの馬鹿馬鹿馬鹿ああああああっ!!」


 騒音により観客には聞こえていないだろうが、僕にはよく聞こえた。
 こいつからこんな風に罵倒されるの、初めてだな・・・。

 まあ、それだけのことをしたのだ。
 甘んじて受け止めるしかない。


「・・・・・・この勝負でお兄ちゃんが勝ったら、告白するって認識でいいの?」

「ああ。相違ない」


 ミレアは涙目になって睨みつけながら、僕に確認してきた。

 簡単に言ってしまえばそういうことなので、相違ないと答えた。
 逆に言えば、負けたら告白しないということだ。

 レインのことは・・・スッパリ諦める。

 うん、我ながら物凄く馬鹿なことをしてる自覚はあるんだ。
 そんなことしたって、いいことなんて一つも無いのだから。

 けれど、僕にとってはレイン・・・優香と同じくらいに美鈴が大事な存在なのだ。
 愛の方向性は違えど、それは正真正銘真実だ。

 結果がどうあれ、このまま優香に告白することは、美鈴を蔑ろにし過ぎている。
 僕のちっぽけなプライドが、それを許してくれない。

 だから・・・僕はリスクを負う。
 優香のことを諦めて、一生独り身で過ごすというリスクを。

 何度も言うが、本当に馬鹿な真似をしているよな。
 優香の想いを考えれば、こんなことするべきではないのに。

 そもそも、ミレアが遠慮して負ける可能性さえあったのに。

 だが、もはや賽は投げられた。
 覚悟を決めるしかない。

 今のミレアの表情は、そう思わされる表情だ。


「私、応援するつもりだったよ?諦められないながらも、二人の幸せを願ってた」

「・・・・・・。」

「けど・・・やめた。こんなことされたら、諦められないよ・・・」


 土埃が収まり、観客席からの声が少しずつ聞こえるようになってきた。
 僕は、槍を構えて、戦闘態勢に移る。


「私、勝っちゃうからね?勝って、お兄ちゃんの恋路を邪魔する。でもその代わり、ちゃんと私もリスクを負うから」

「・・・リスク?」

「ん。もし私が負けたら、お兄ちゃんのことは・・・スッパリ諦める」


 そういうことか。
 それなら、望むところだ。
 わざわざそんなことを言い出した以上、本当に諦めるのだろうし。

 ミレアはこういうところで嘘を吐かないのだ。


「だから、ね? 絶対に・・・・・・絶対に、勝つからっ!!」


 土埃が完全に張れ、ミレアの宣言とともに、試合は再開された。

しおりを挟む
感想 715

あなたにおすすめの小説

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった

Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。 *ちょっとネタばれ 水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!! *11月にHOTランキング一位獲得しました。 *なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。 *パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

処理中です...