異世界転生? いいえ、チートスキルだけ貰ってVRMMOをやります!

リュース

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4章

217 ブレイブの秘密

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「ところで、すっかり頭から飛んでいたのだけれど、ブレイブにダメージが通らなかったのはどうしてなのかしら?」

「あ、私も気になる。教えてアスト!」


 ミレアが試合に向かってからすぐ、アリアさんが思い出したように尋ねてきた。

 そういえばブレイブのこと忘れてたな・・・。
 ミレアの魔法が衝撃的過ぎて、頭から抜け落ちていた。


「アレは簡単に言ってしまえば、基礎能力値強化スキルですね。物理防御力も魔法防御力も相当高い数値になっていたのでダメージが通らなかったのかと」

「基礎能力強化・・・魔石で得たみたいな特殊スキルかしら?」

「ええ、そうです」

「でもそれだと、タネなんてあってないようなものでしょう?普通のプレイヤーでは間違いなく勝てないわよ?」


 ところがどっこい、そうでもないのだ。
 いくらアナザースキルでも、VR世界で無敵になれるはずがない。
 必ず弱点は存在する。

 今回の場合は、能力値の強化方法にポイントがある。


「恐らく、勇者というだけあって、仲間の力を借りているのだと思います。例えば、仲間一人につき全基礎能力値+1とか」

「仲間・・・ああ、ギルドメンバーかしら?」

「ええ。もしかしたら、仲間の方にも何か恩恵があるのかもしれません。そうでなければ、あんな大規模ギルドにはなりませんよ」

「それを聞いて納得がいったわ。ずっとおかしいと思っていたのよね」


 まあ、あんな訳わからんギルドが空中分解しないなんて、不可思議に過ぎるし。
 そういう要素があるなら、神聖騎士団の謎もある程度解決する。

 神敵だの何だのは、そういう条件があるのか、自分に酔っているのか。
 そこまでは分からんけど、それはどうでもいいことだしな。

 アナザースキル「威光カリスマ」ってところか?
 ブレイブの元がイケメンな上にカリスマが合わさって人気を保っているのだろう。

 ま、無敵の勇者であるのに負けた時点で、カリスマは弱まりそうだけど。
 これは本当にただの推測だけど、ブレイブが意外と慎重(予選八位)だったのは、間違っても負けられないからじゃないか?
 アナザースキルを発動していない時は普通の防御力なんだし。

 あ、僕の予想通り強化されるのが固定値だったら、悲惨だろうな。
 後になればなるほど効果がショボくなるから。
 ギルドメンバーの人数だって、既に最大人数の三百人。
 早熟型ということだ。

 ミレアは否定しなかったし、多分合ってると思うんだけども。


「無敵じゃないのは分かってたけど、意外と地味な効果だったね?」

「うぃ。VRの創始者の言葉だから間違いないよね。無敵はあり得ない」

「あ、そういえばそうでしたね。私はあまり詳しくないんですけど・・・」


 レインたちが話しているのは、VRMMOの創始者であるとある人物のことだな。
 僕もあまり詳しくはないんだが、「阿久津 朝雄」という名前なのは間違いない。

 とはいえ、表には一切顔を出さない正体不明の存在なのだがな。
 そんな事情があるので、都市伝説では色々と語られている。

 例えば・・・

 その男は未来人である、とか。
 その男は実在せず、開発集団が公表時に使っただけの名前である、とか。
 その男は異世界人である、とか。

 他にも、
 歴史上稀にみる大天才だ、とか。
 いやいやどこにでもいるただの凡人ではないか、とか。
 地球を侵略しようとしている宇宙人だ、とか。
 世界を破壊しようとしている狂気の科学者ではないか、とか。

 他はともかく、地球侵略って・・・どこのカエル型宇宙人だよ。
 名前からして男だと推測されているくらいで、あとは一切不明だ。


「それより、ミレアの試合が始まるぞ?」

「あ、本当だ。もう入場してるね」


 大画面には、こう表示されている。

 予選一位 『【虹の賢者】ミレア』     《ウェザリア》
         VS
 予選四位 『【風弓の奏者】フレグランス』 《無所属》

 そして、結界を<不壊障壁>に変更した旨も追記されていた。


「アスト、この勝負・・・どう展開するか予想できるかしら?」

「さっぱり分かりません。大体、ミレアの手札自体予測不可能ですし」

「・・・やはりそうよね」


 確か、<固有魔法オリジナル・スペル>だったか?
 あれの仕組みがまるで分からん。

 一体どんなスキルなのやら・・・。


「ただ、フレグランスは早々に仕掛けるでしょう。あの魔法を使われないように」

「ライラとの戦いとは逆で、フレグランスが攻勢に出るというわけね」

「そういうことです・・・と、始まりそうですね」


 フレグランスとミレアが向かい合い、システマが選手紹介を行っている。


『―――と、両者とも、運営の度肝を抜いたプレイヤーです!』

『理論上は可能なのだが、まさか実際に目にするとは驚きでしたよ、ええ』

『では、時間も迫ってきましたので・・・準決勝第一試合、開始ですっ!!』


 システマの合図とともに、二人は我先にと動き始めた。

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