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4章
213 この弓、買いますか? 買いませんか?
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野次馬が多いので彼女の控室の中に押しかけさせてもらった。
「―――という訳だから、弓を買うといい。安くしておくぞ?」
「だから、どういう訳なのだ・・・。色々と疑問は尽きないが、これだけは言わせてほしい。君たちは・・・敵に塩を送るような真似をしていいのか?」
「「「?」」」
「何故揃いも揃って首を傾げるのだっ! これはっ、私がおかしいのかっ!?」
何を言っているんだ、フレグランスは。
どこにも塩販売コーナーなんて・・・ああ、そうか。
「フレグランス、塩なら本店の方で売ってるぞ?」
「ああああああああっ!!」
「うおっ!?」
何だ何だ!?
なんでいきなり頭を抱えて叫びだしたんだコイツはっ!
クールそうに見えて、実は情緒不安定なのか!?
・・・うん?
「よくよく考えれば・・・アリアさんとキャラ被ってますね?」
「どこも被っていないと思うのだけれど!?」
「え・・・?」
クール(?)なエルフで被っているじゃないか。
ちなみに話し方はフランと少し被っているのだが・・・そちらは少し怪しいな。
「おーい、大丈夫かフレグランス。大会中だからって睡眠時間を削ったら情緒不安定になるのも致し方なしだぞ?」
「誰のせいだと思っているのだ、このたわけっ!!」
「たわけ・・・田分け・・・フレグランスは農業が好きなのか?だとしたらうちのギルドで大歓迎だぞ?」
「あああああああああああっ!!!」
また叫びだした。
一体何がどうしたというのだ。
「・・・アスト、話が進まないから変わって頂戴。それと、ミアとシエラも下がって。あなたたちが居ると話が脱線し続けて終わらないのよ」
「「「酷いっ!?」」」
何だろう・・・あの二人と一緒くたにされるのが酷く腹立たしい。
「フレグランス・・・八百万ゴールドほどあるかしら?」
「・・・は?」
「アリアさんっ・・・!それは率直過ぎますよっ・・・!」
またしても選手交代かと思いきや、アリアさんが咳払いして気をとり直した。
多分、大きすぎる儲けに少し緊張していたんだろうな。
その証拠に、耳が少しピクピクしてる。
「あなたの弓が次の試合でもたないと判断して、新しい弓の売り込みにきたわ。この、腕によりをかけた傑作を、使ってみる気はないかしら?」
「・・・解析させてもらっても構わないか?」
「ええ、勿論よ」
むむむ。僕も解析してみよう。
【大地の暴風参弓】武器アイテム レア度6
ATK+9 MATK+6 沈黙状態発生[小] 品質9
老樹木や暴走土竜素材がふんだんに使用された可変弓。
短弓・弓・長弓の三種類に変形する機能を持っている。
これは凄い。
三段変形とか、どうやったら可能になるんだか。
超貴重素材もふんだんに使われて・・・あれ?
「・・・アリアさん、この暴走土竜素材って、ミアに預けたはずなんですけど? 投槍作製に使う予定だったんじゃ・・・?」
「・・・大丈夫よ。まだ残っているから」
「おい」
そんな話は一言も聞いてないぞ!?
使うなら使うと一声かけてからにしてほしかった!
というか、ミアも似たようなことやらかしたよな!
うちのギルドは自重というものを知らないのか!?
いや、これ程の弓ができたんなら文句はないんだけどもっ!
なんかこう・・・釈然としない!
ほら、自分ばかりが問題児扱いされていることとかっ!
「・・・・・・沈黙状態?」
「ええ。沈黙の状態異常だと、魔法の詠唱が出来なくなることを確認済みよ」
「どうやってこの効果を付与したのかは・・・?」
「あら、ギルド内のメンバーでは共有されている情報よ?」
僕は知らされてないんですけど!?
メンバーに含まれてないんですかねぇ!?
いやいや、それよりも。
今の言葉は勧誘みたいなものか?
だとしたら物凄く上手いと言わざるを得ない。
今のだけでは駄目だと思うが、こういう布石を幾つも打てば、彼女もさぞ心が揺れることだろう。
「・・・そうか。しかし、八百万、か・・・」
「ちなみに、今だけの限定価格よ?本来は一千万を遥かに超える値なのだから」
「っ・・・だが、うっ、くぅぅ・・・。うぅ、欲しいなぁ・・・」
・・・うん?
今フレグランスのキャラが変わらなかったか?
やっぱりあの話し方は素ではなかったのか?
と、フレグランスがウィンドウを開いて所持金を確認している。
程なくして・・・フレグランスの顔が引きつった。
多分、ちょっと足りなかったのだろう。
かなりため込んではいたが、もう少しといったところか。
「―――もう五十万ほど、安くはならないだろうか・・・?」
「・・・実を言うと、七百万というのが損益分岐点なのよね」
「ぐっ・・・!!」
うげっ・・・そんなに掛かってるのかよ、これ・・・。
何でそんなものに成功するかも分からないギミックを組み込むかなぁ!?
「それと、店売り価格は・・・千三百五十万ゴールドよ」
「んなっ・・・!?」
二割引きなんてものじゃないし。
殆ど半額じゃないか。
待てよ?
ということは、本来の値で売ったら・・・六百五十万ゴールドの儲けか。
作業が大変なのは痛いほど分かるが・・・うわぁ。
「・・・これ以上の値引きはできないのだけれど、その代わりというか、借金なら受け付けているわよ・・・そこに居るアストが」
「僕はいつから金貸しになったんですか!?」
そんな仕事はやってないぞ!?
利子とか決めてないし!
・・・十日で一割? 違法じゃねぇか。
「ちなみに、あなたが買わなければ他のプレイヤーが―――」
アリアさんのその言葉が止めとなったようだ。
フレグランスがフラフラと吸い寄せられるように僕の方へやってきた。
「・・・五十万ゴールド、貸していただきたい」
「お、おう。分かった。任せておけ」
かくして、全財産を無くしたばかりか借金を背負ったフレグランスは涙目になり、素を一部晒すという多大な犠牲を払いつつ、【大地の暴風参弓】を手に入れた。
「―――という訳だから、弓を買うといい。安くしておくぞ?」
「だから、どういう訳なのだ・・・。色々と疑問は尽きないが、これだけは言わせてほしい。君たちは・・・敵に塩を送るような真似をしていいのか?」
「「「?」」」
「何故揃いも揃って首を傾げるのだっ! これはっ、私がおかしいのかっ!?」
何を言っているんだ、フレグランスは。
どこにも塩販売コーナーなんて・・・ああ、そうか。
「フレグランス、塩なら本店の方で売ってるぞ?」
「ああああああああっ!!」
「うおっ!?」
何だ何だ!?
なんでいきなり頭を抱えて叫びだしたんだコイツはっ!
クールそうに見えて、実は情緒不安定なのか!?
・・・うん?
「よくよく考えれば・・・アリアさんとキャラ被ってますね?」
「どこも被っていないと思うのだけれど!?」
「え・・・?」
クール(?)なエルフで被っているじゃないか。
ちなみに話し方はフランと少し被っているのだが・・・そちらは少し怪しいな。
「おーい、大丈夫かフレグランス。大会中だからって睡眠時間を削ったら情緒不安定になるのも致し方なしだぞ?」
「誰のせいだと思っているのだ、このたわけっ!!」
「たわけ・・・田分け・・・フレグランスは農業が好きなのか?だとしたらうちのギルドで大歓迎だぞ?」
「あああああああああああっ!!!」
また叫びだした。
一体何がどうしたというのだ。
「・・・アスト、話が進まないから変わって頂戴。それと、ミアとシエラも下がって。あなたたちが居ると話が脱線し続けて終わらないのよ」
「「「酷いっ!?」」」
何だろう・・・あの二人と一緒くたにされるのが酷く腹立たしい。
「フレグランス・・・八百万ゴールドほどあるかしら?」
「・・・は?」
「アリアさんっ・・・!それは率直過ぎますよっ・・・!」
またしても選手交代かと思いきや、アリアさんが咳払いして気をとり直した。
多分、大きすぎる儲けに少し緊張していたんだろうな。
その証拠に、耳が少しピクピクしてる。
「あなたの弓が次の試合でもたないと判断して、新しい弓の売り込みにきたわ。この、腕によりをかけた傑作を、使ってみる気はないかしら?」
「・・・解析させてもらっても構わないか?」
「ええ、勿論よ」
むむむ。僕も解析してみよう。
【大地の暴風参弓】武器アイテム レア度6
ATK+9 MATK+6 沈黙状態発生[小] 品質9
老樹木や暴走土竜素材がふんだんに使用された可変弓。
短弓・弓・長弓の三種類に変形する機能を持っている。
これは凄い。
三段変形とか、どうやったら可能になるんだか。
超貴重素材もふんだんに使われて・・・あれ?
「・・・アリアさん、この暴走土竜素材って、ミアに預けたはずなんですけど? 投槍作製に使う予定だったんじゃ・・・?」
「・・・大丈夫よ。まだ残っているから」
「おい」
そんな話は一言も聞いてないぞ!?
使うなら使うと一声かけてからにしてほしかった!
というか、ミアも似たようなことやらかしたよな!
うちのギルドは自重というものを知らないのか!?
いや、これ程の弓ができたんなら文句はないんだけどもっ!
なんかこう・・・釈然としない!
ほら、自分ばかりが問題児扱いされていることとかっ!
「・・・・・・沈黙状態?」
「ええ。沈黙の状態異常だと、魔法の詠唱が出来なくなることを確認済みよ」
「どうやってこの効果を付与したのかは・・・?」
「あら、ギルド内のメンバーでは共有されている情報よ?」
僕は知らされてないんですけど!?
メンバーに含まれてないんですかねぇ!?
いやいや、それよりも。
今の言葉は勧誘みたいなものか?
だとしたら物凄く上手いと言わざるを得ない。
今のだけでは駄目だと思うが、こういう布石を幾つも打てば、彼女もさぞ心が揺れることだろう。
「・・・そうか。しかし、八百万、か・・・」
「ちなみに、今だけの限定価格よ?本来は一千万を遥かに超える値なのだから」
「っ・・・だが、うっ、くぅぅ・・・。うぅ、欲しいなぁ・・・」
・・・うん?
今フレグランスのキャラが変わらなかったか?
やっぱりあの話し方は素ではなかったのか?
と、フレグランスがウィンドウを開いて所持金を確認している。
程なくして・・・フレグランスの顔が引きつった。
多分、ちょっと足りなかったのだろう。
かなりため込んではいたが、もう少しといったところか。
「―――もう五十万ほど、安くはならないだろうか・・・?」
「・・・実を言うと、七百万というのが損益分岐点なのよね」
「ぐっ・・・!!」
うげっ・・・そんなに掛かってるのかよ、これ・・・。
何でそんなものに成功するかも分からないギミックを組み込むかなぁ!?
「それと、店売り価格は・・・千三百五十万ゴールドよ」
「んなっ・・・!?」
二割引きなんてものじゃないし。
殆ど半額じゃないか。
待てよ?
ということは、本来の値で売ったら・・・六百五十万ゴールドの儲けか。
作業が大変なのは痛いほど分かるが・・・うわぁ。
「・・・これ以上の値引きはできないのだけれど、その代わりというか、借金なら受け付けているわよ・・・そこに居るアストが」
「僕はいつから金貸しになったんですか!?」
そんな仕事はやってないぞ!?
利子とか決めてないし!
・・・十日で一割? 違法じゃねぇか。
「ちなみに、あなたが買わなければ他のプレイヤーが―――」
アリアさんのその言葉が止めとなったようだ。
フレグランスがフラフラと吸い寄せられるように僕の方へやってきた。
「・・・五十万ゴールド、貸していただきたい」
「お、おう。分かった。任せておけ」
かくして、全財産を無くしたばかりか借金を背負ったフレグランスは涙目になり、素を一部晒すという多大な犠牲を払いつつ、【大地の暴風参弓】を手に入れた。
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