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4章

197 神聖騎士団団長の謎

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「私は神聖騎士団の人に負けてしまいました・・・」

「神聖騎士団・・・ああ、あの金ぴかの奴か?」

「はい。多分その人だと思います・・・!」


 どうやら、レインは神聖騎士団の団長らしき男に負けたらしい。
 残り一時間となるまでは残っていたそうで・・・惜しかったな。

 ただ、レインの話の中で気になることが一点。


「ダメージが通らなかった、か・・・」

「はい・・・。ストーンメガフォールでもダメージが通りませんでした・・・」

「んー、何かカラクリがありそうだが・・・戦ってみないと分からんな」


 土石魔法Lv20呪文アーツ『ストーンメガフォール』はミレアも使用していた。
 巨石を上から叩きつける魔法なのだが、あれでダメージが通らないとは・・・。

 避ける素振りも無かったことから、効かないと確信していたのは分かる。
 しかし、どういう手を使っているのかはまるで分からない。

 プレイヤーネームは『ブレイブ』で、予選八位。
 順調に勝ち抜けば準々決勝でミレアと当たる相手だ。


「ミレア、戦う時は気を付けろよ?」

「うん?大丈夫大丈夫。何とかなるから!」

「おいおい・・・余裕だな」


 ダメージが通らないと聞いてもこの余裕っぷり。
 ちょっと心配になってきた。


「あの、それともう一つ・・・」

「ん?どうしたレイン?」


 レインは何か言いたげだが、とても言い辛そうにしている。
 何だろう・・・胸騒ぎがするぞ。

 待つことしばし、レインは絞り出すように言葉を発した。


「その・・・男性の方だったんですが、しつこく口説かれまして・・・」

「・・・・・・ほう」

「それで、ハラスメントコードが発動しないギリギリを狙ってベタベタされて、とても気持ち悪かったんです・・・!」


 レインは思い出すのも嫌そうな苦痛に満ちた顔をしている。

 ふーん・・・。
 へぇ・・・。
 そうかそうか・・・。


「こんな情けないことをアストさんに話したくはありませんでしたが・・・」

「ん、嫌な記憶だろうに、教えてくれてありがとう」


 詳しい内容は話さないが、彼女にとってさぞ屈辱的な展開だったのだろう。
 何となく想像はつくし、今すぐそいつをボコボコにしたい気分だ。

 きっとレインにあれやこれや・・・・・・ちっ!


「・・・レイン。今度また、一緒に出掛けないか?」

「っ、はい!喜んでっ・・・!」


 レインは嬉しそうにそう返事をしてくれた。
 先程までの辛そうな顔は瞬く間に消え去り、欠片も残っていない。

 醜い嫉妬の感情をコントロールして発した言葉だったが、上手くいったか。
 ちょっとだけ優越感に浸りたい気分だ。

 嫉妬は押さえつけるのではなく、上手くコントロールすべし。
 その意味がようやく分かった気がする。父親に感謝。


「あっ、アスト兄がレインをデートに誘ってる!!」

「「なっ・・・!?」」


 現実に引き戻された僕が見たのは、ニヤニヤとこちらを眺める一同。
 そういえば祝勝会中でしたね・・・。

 ああ・・・顔が熱いな。
 でもレインの恥ずかしがる様子が可愛いからこれはこれでよし。


「ミレア、そのブレイブとかいう奴と戦うことになったら、容赦するなよ?再起不能になるまでボコボコに痛めつけてしまえ!」

「あいあいさー! レインの弔い合戦だねっ!」

「ミ、ミレアっ! 私は死んでませんからっ・・・!!」


 そんなこんなで三時間程。
 簡易祝勝会はお開きになった。

 こういう和気藹々とした雰囲気って、なんかいいよな・・・。



 〇〇〇



「んっ・・・! 途中で休憩を挟んだとはいえ、少し肩が凝ったな」

「あっ、私が揉んであげるよ、お兄ちゃん!」

「やめてくれ・・・あれは肩もみではなく指圧と言うんだ・・・」


 以前やってもらったところ、どこにそんな力があるのかと言いたくなるほどに強い力で指圧されたのだ。
 もう二度と御免である。


「ぶーぶーっ!」

「お前は豚か。と、夕食の支度をせねば・・・」


 今日の夕食はどうしようかな・・・。
 がっつり食べたい気もすれば、簡単なものでいいような気も・・・。

 うーん・・・悩む。


「むぅ・・・。お兄ちゃんはレインに肩を揉んでほしいんだね?」

「ああ、そうだな・・・・・・って、何を言わせるんだっ!!」

「あっ、私も手伝えることは手伝うから、早く夕食にしよっ? 先に行ってるね!」

「あ、こらっ!待てっ!?」


 くっ・・・あれこれ考えているせいで気が緩んでいたようだ・・・。

 あんな正直に答えてしまうとはっ!一生の不覚!
 きっと今後の揶揄いネタに使われるんだろうな・・・・・・はぁ、憂鬱だ。







「私も肩もみ、覚えよっかな・・・?」

「美鈴?今何か言ったか?」

「ううん?何でもないよっ!
 あっ、優香に今のお兄ちゃんの発言を教えよっかなぁ・・・?」

「お願いだからやめてくれよっ!?」


 交渉も何も無くいきなりそんなことを言い出すとか・・・恐ろしい奴め。

 僕は美鈴に腕を組まれた状態で階下に降りていったのだった。

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