異世界転生? いいえ、チートスキルだけ貰ってVRMMOをやります!

リュース

文字の大きさ
上 下
186 / 264
4章

185 夢幻魔法とエリア変化

しおりを挟む
 フレグランス視点


 私はフレグランス。
 FSOではエルフのアバターでプレイしている。
 職業は弓士だ。リアルでも弓は得意ゆえに迷いはしなかった。


「・・・『クリティカルスナイプ』『パワーアロー』!」


 中級弓術Lv20アーツを使用して一撃必殺。
 遠くに居る瀕死のプレイヤーを撃破した。

 このアーツは殆どAPを消費しないので予選が始まってから重宝している。
 確定でクリティカルポイントを射抜く爽快感は、リアルでも味わっている感覚に似ているが・・・やはりいいものだな。

 しかし、そこでふと首筋がむず痒くなった。
 危機が迫っている時などによくある感覚だが、広域マップによると周囲に人は居ないはずだ。

 だが、長年助けられてきた己の勘に従って、左の方を向く。

 スキル【鷲の目】も使用して・・・居た。
 黒に少し青が混じった髪色をした男性。
 手にはナイフのようなものを持っている。



 ・・・ゾクッ!!



 ・・・全身から冷や汗が流れ出す。
 面白いものを見るような目で見られているというのに、怒る気にもならない。
 自分は見逃されていたのだと嫌でも理解させられた。

 この距離でナイフなど届くはずがないと理性が言っているが。

 だが、理屈ではないのだ。
 あのナイフは、間違いなく私の元まで届く。
 気づいた今であれば回避は可能だが、気づいていなかったとしたら・・・。

 解析して、名前をアストというのだと分かった。
 私は人付き合いが苦手で、掲示板というものも当然苦手なのだが、それでも名前くらいは聞いたことがある。

 全プレイヤー中、最高レベル。
 その戦いぶりは、舞うような綺麗さと鬼のような完璧さを併せ持つという。
 それ以外のことはあまり知られておらず、知名度が高いようで低いような存在。
 FSOというゲームにおける最強候補の一角。


 ああ、それは最強候補にもなるだろうさ。
 これだけ離れていても、強いことがありありと伝わってくるのだから。

 適当にナイフを持っているように見えて、いつでも投擲に移れる態勢だ。
 私も一種の投擲使いであるからそれが分かる。


 ・・・手を振られた。それも微笑みながら。
 意外と優しそうな人だな、彼・・・アストは。

 ふぅ・・・胸を借りるつもりで、一射!

 ・・・ナイフで弾かれてしまった。
 飛来する矢をナイフで迎撃するなど・・・この人おかしい。絶対おかしい。


「ふふふっ・・・凄いね、本当に・・・」


 思わず声が漏れてしまった。
 いけないいけない。今のは女っぽ過ぎる。
 このゲームでのキャラクターが崩れるところだった。


 さて・・・このままここに居るのも危険なので移動しよう。
 予選を勝ち抜いたら、当たるかもしれないな・・・。
 何か策を考えてみようか。

 このゲームは、本当に私を飽きさせない。



 □□□



 なんかいきなり射られたんだが。
 気に障るようなことはしていないはずだし、挨拶みたいなものかね?

 まあいいや。向こうは移動するみたいだし、僕も移動しよう。

 ・・・灼銀獅子のナイフ、拾いに行かないとな。









《熟練度が一定に達し【幻影魔法】スキルがLv20になりました》
《【幻影魔法】Lv20呪文アーツ『ファントムリバース』を習得しました》
《【幻影魔法】が最高値になりました》
《【夢幻魔法】が派生しました》
《熟練度が一定に達し【魔力隠蔽】スキルがLv6になりました》
《熟練度が一定に達し【魔気】スキルがLv9になりました》


 ナイフは無事回収した。
 拾おうとしていた男性プレイヤーは問答無用で抹殺。
 悪く思うな。所有権が移りかねないからな。

 これで七十人目になるか。スキルポイントはもらえなかったな・・・。

 幻影魔法Lv20アーツ『ファントムリバース』の効果には驚いた。
 なんと、幻影にダメージ属性を付与できる呪文アーツだったのだ。

 ダメージ量は再現した武器とその再現度による。
 百パーセントの再現度だと全く同じダメージを与えられるようだ。

 ただし、ファントムクリエイトと合わせて使うので、MP消費が厳しいことに。
 実用範囲だと、一度の戦闘で剣や槍なら一つずつ。ナイフなら十個くらいか。

 なお、マスタースキルとなったことで、幻影自体には個数制限が無くなった。
 とはいえ、想像できる範囲の個数になるので、無限に出すとかは無理だ。


 勢いのまま【夢幻魔法】を4ポイント消費して取得。
 こちらはこれから検証だ。









《熟練度が一定に達し【上級投擲術】スキルがLv4になりました》
《熟練度が一定に達し【夢幻魔法】スキルがLv2になりました》
《熟練度が一定に達し【魔力隠蔽】スキルがLv7になりました》


 夢幻魔法Lv1呪文アーツ『ファンタジアレプリカ』は攻撃用ではなかった。
 これが、アイテムを再現する呪文だったのだ。
 しかも、再現したものは消えない。本物と同じ扱いだ。

 ただし、再現にはMPを大きく使用する。
 兎の肉でさえそこそこ消費したし、硬牙の剣は全くMPが足りていない。
 具体的にどれくらい足りていないかは分からないが、百や二百ではないと思う。

 当分お蔵入りではあるが、将来的には有用だな。

 それはさておき、目の前の敵だ。


「強いっ!これが優勝候補の実力・・・!『トリプルスラッシュ』っ!!」

「ん、悪くないな。『イエローステップ』『トリプルスラッシュ』!」

「そんなっ・・・!三発とも完璧に弾かれるなんて・・・!」

「腕はいいんだが、もう少し足に気を遣ういいぞ。『トリニティ・ロード』!」

「武器の持ち変え!?ぐあっ・・・!?」


 まだ十代中盤くらいの少年に止めを刺して勝利。
 武器持ち変えはともかく、アーツなしだったらかなり手間取っただろうな。
 それくらいには強い相手だった。


《熟練度が一定に達し【集撃】スキルがLv4になりました》
《熟練度が一定に達し【金剛力】スキルがLv10になりました》

《プレイヤーを七十五人撃破してスキルポイント3を手に入れました》


 七十五人でポイントなら、次は百人だろうか。

 予選も一時間半が経過し、残り四分の三。
 残り人数は・・・四分の三を少し超えるくらいのようだ。

 ここからさらに加速するとは考え辛いので、時間内に終わるか怪しくなってきた。


『皆さん、こんにちは。司会進行のシステマです。予選開始から一時間半が経過しました。これより五分かけてエリアを縮小します。縮小される場所は広域マップで分かりますので、そちらでご確認ください!』


 おう・・・そういう手を使ってくるのか。
 それなら戦いが加速しそうだな。

 ま、ここはエリアの端っこでもないし、今回は関係ないだろう。

 ・・・一応広域マップを確認しておこう。





 アストの状況

――――――――――――――――――――――――――――――――
『予選バトルロイヤル開催中!』 <残り四時間三十分>

 ・参加人数 21611人 
 ・残り人数 17563人/21611人

 ・撃破人数 75 与ダメージ 13190 被ダメージ 0

 ・広域マップ確認
 ・回復アイテム使用
 ・ランキング閲覧
 ・―――
――――――――――――――――――――――――――――――――

しおりを挟む
感想 715

あなたにおすすめの小説

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった

Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。 *ちょっとネタばれ 水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!! *11月にHOTランキング一位獲得しました。 *なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。 *パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

処理中です...