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リュース

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3章

173 聖光魔法士と複合派生職

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 システィは【劣悪魔の結晶】を手に取って眺めた。

 そうして十数秒も眺めたころだろうか。
 何かに思い至ったかのように突然顔を上げた。


「もしかしたらこれはっ、あうっ!?」

「「あっ・・・」」


 勢いよく頭を上げ過ぎたせいで、後ろに後頭部をぶつけてしまった。
 とっても痛そうだ。


「あうぅぅ・・・!痛いですぅぅぅっ・・・!!」


 後頭部を抑えて涙目であたふたしているシスティ。

 ・・・何この可愛い生き物。
 家に持ち帰って妹にしたい気分になる。


「よしよし。痛かったですね・・・」

「ソフィアさん・・・!」


 ソフィアがシスティをなぐさめ始めた。
 庇護欲の堤防が決壊したようだ。

 しかし、これではどちらが聖職者か分からんな・・・。


「痛みも治まりましたし、もう大丈夫です!・・・ライトヒール!」

「おっ、光魔法か。流石は聖職者だな」

「えへへへ・・・」


 ある意味当然なのかもしれないが、システィは光魔法が得意なようだ。
 そりゃあ、聖職者だものな。
 さっきは見習い牧師と言っていたが・・・。


「システィ、君を解析させてもらってもいいか?」

「ふぇ?はい、構いませんよ?」

「それじゃあ、失礼して・・・」


 システィに向けて解析を使用した。



 名前 システィーナ

 種族 人間 Lv15
 第一職業 聖光魔法士 Lv27



 これは・・・どうなんだ?
 レベル10を超えているにも関わらず、職業が一つしかない。

 だが、聖光魔法士Lv27というのは・・・多分、三次職だよな?
 僕の火焔魔法士も三次職だが、まだレベル6だ。
 すなわち、20レベル近く僕を上回っているということになる。

 魔物を倒せば種族レベルが上がる。
 勿論それ以外でも経験値は入るのだろうけど、討伐より少なめだろう。

 彼女は町の外に出ず、光系魔法を使い続けた結果こうなった可能性が濃厚だ。
 というか、危なっかし過ぎる。
 まかり間違えても町の外になんて出せないだろう。


「んー、聖光魔法というのは、光明魔法の上位であってるか?」

「はい。光魔法、光明魔法、そして聖光魔法ですね」

「じゃあ、見習い牧師というのは?」

「それはですね・・・そもそも、見習い牧師という職業は存在しません」


 ん?そうなのか?
 そういうのがあってもおかしくないと思うんだが・・・。


「あっ、いえ!勿論見習い牧師というものは存在していますが、システム?には存在しない職業ということですっ!」

「ああ、そういうことか」

「はい。牧師という職業は存在していますが、私はまだそこまで辿り着けていません。ですから、見習い牧師を名乗らせていただいております」


 そういうことなら納得だ。
 しかし、今更かもしれないが、教会に彼女しか居ないのはおかしくないか?
 見習い云々を置いておくにしても、他にも人が居るべきだろう。

 それについて尋ねたところ、返ってきた答えはとても簡潔だった。


「それは、人手不足ですね」

「人手不足・・・?」

「はい。光系統魔法の適性が無い人は、教会の仕事には就けませんから・・・。あ、これは使徒様には縁のないお話でしたね」


 光魔法に適性?
 普通に誰でも取得できるはず・・・いや、それが使徒の特権なのか。
 現地住民はそれぞれ生まれつき適性の有無があって、適性が無い人はその職業には就くことができない、ということだな。
 使徒という存在は凄く優遇されているようだ。
 システム自体使徒専用なのだし、これに気づかなかったのは反省点だ。

 ちなみに現在、光魔法の適性持ちはとても少なく、生き残った人々の中では更に少ないらしい。その多くが戦場で散ってしまったからだとか。
 警備団長たちが町の外で戦わないのは、案外この辺りの件が理由かもしれない。
 残り少ない戦力に万が一があったら色々と不味いだろうし。


「それで、牧師になるためにはどうすればいいんだ?」

「牧師になるためには幾つかの条件がありまして、第一に聖光魔法士を極める必要があります。職業レベルでいうと30ですね。そして、そこから派生する白魔術師見習い、白魔術師、白の大魔術師と順番に極めていくことで、牧師の職業が派生します。白の大魔術師は聖光魔法士と同じでレベル30が上限です」

「つまり、聖光魔法士と白の大魔術師が条件として必要、ということか・・・」


 光魔法使い  ⇒光明魔法士⇒聖光魔法士 ⇒????
 白魔術師見習い⇒白魔術師 ⇒白の大魔術師⇒????
 複合派生
  ⇒牧師⇒????


 図にするとこんな感じか?


 むむむ・・・思わぬところで思わぬ情報が手に入ってしまった。
 これって何気に、物凄く重要な話じゃないか?
 職業の複合派生というのは適当にやって上手くいくものではないのだから。

 例えば、ここいいるシスティは種族レベルを大幅に上げることができない。
 よくてレベル20くらいで、選べるのは第三職業までだろう。
 となると、聖光魔法士、白の大魔術師、牧師で一杯だ。
 余分な枠など一つも無い。

 最悪の場合、折角派生条件を満たしたのに枠が足りず、牧師を選択できない、という事態にもなりかねない。
 レベルを上げるという手もあるが、現地住民からすれば、魔物と戦うのは命懸け。
 そう易々と選択できる手ではあるまい。

 これがプレイヤーだったなら死の危険こそ無いが、職業がカンストした状態での戦いになる。多くの職業経験値を無駄にするだろうことは間違いない。


「ソフィア、今の話は知っていたか?」

「いえ、存じ上げませんでした。恐らく、大抵の人は知らないかと思われます」


 だよなぁ・・・。ギルドの受付嬢が知らないのに、一般の人が知ってる訳がない。
 となると、システィはどこでその情報を知ったんだ?
 いや、今はそれよりも自分自身のことだ。


「システィ、僕はいま火焔魔法士の職業にも就いているんだが、この先の派生について何か知らないか?」

「火焔魔法士・・・申し訳ありませんが存じ上げません。
 ですが、図書館にいけば分かると思いますよ?私もそこで確認しましたから」

「一定の身分が必要だと聞いていたが、図書館に入れるのか?」

「はい。聖光魔法士は少々特別ですから。それに・・・いえ、何でもありません」


 何かを言いかけて止めてしまったが、深入りはしない方がいいか。
 まだ会ってから時間も経ってないし、なによりシスティの顔が曇っているからな。

 俄然、図書館に行くことが必要になったと分かっただけで十分な収穫だろう。


 ・・・あれ?何か忘れているような・・・?

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