異世界転生? いいえ、チートスキルだけ貰ってVRMMOをやります!

リュース

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3章

168 思わぬ気まずさ

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 釣れない態度に戻ったヨミに温泉について尋ねると、驚きの答えが返ってきた。


「あの温泉、ちょっとしたバフのような効果がありましたよ。微量のリジェネレーション効果です。HPMPAPの回復幅が自動回復の範疇を越えています」

「へぇ・・・。開放されたら人気が出そうだな」


 僕としてはポーションに困ったことはないので、そこまで魅力的でもない。
 だが、他のプレイヤーからすればとても貴重な回復手段になるだろう。

 もしかしたら、水の都にある泉にも何か効果があったのかもしれないな。
 今度暇になったときにでも確認してみようか。


「さて、僕はアライアに帰るけど、ヨミはどうする?」

「私はもうしばらく狩りをします。これでようやくパーティーを解散できますね」

「はいはい」


 本気で言っているのかどうかは分からないが、そろそろ潮時なのも確かだ。
 パーティー設定を解除してパーティーの解散を行った。


「では、私はこれで。次に会った時は敵同士。精々、背後に気を付けることです」

「ああ。ヨミの挑戦であればいつでも受けるよ」

「っ、失礼します!」


 ヨミは何が気に食わなかったのか、直ちに町の外へ走っていった。
 女心は難しいな。

 さ、僕もアライアに帰るとしよう。









「ミア、投槍の方はどうだ?」

「苦戦中。磁力爪と聖角の加工は終わった。老樹木の根幹も、アリアに加工を頼んで完了した。後は組み合わせて完成させるだけだけれど・・・このままだと技術不足で失敗する予感がする」

「そうか・・・。だったら、これが早速役に立つかもしれないな」


 そう言ってアイテムボックスから取り出したのは<火精霊の金槌>。
 鍛冶にプラス補正が掛かるレア度5の道具アイテムだ。


「・・・!?」


 解析して目を見開いたミアに金槌を分捕られた。
 ちゃんとお金は払ってくれよ?安くしとくからさ。


「査定は・・・五百万ゴールド。何とか出せるから、売ってほしい」

「言われずともそのつもりだよ。ただ、その八割くらいでいいぞ」

「うぃ。ありがとう。正直助かるよ。その分投槍は値引きするね」


 そういう訳で、四百万ゴールドで金槌を売却。
 手元が不如意になると行動に制限が生まれかねないからな。せっかくのギルドなのだし、こういう融通を利かせられる部分では助け合いをしていきたいものだ。

 ついでに炎熱獅子の牙も売却しておく。
 こちらの使い道はあとで応相談・・・かと思いきや、いきなり決定してしまった。


「この牙は投擲用のナイフがいいかも。数が沢山あって規格を揃えられるから」

「なるほどな。次から次に悪いけど、これも頼めるか?」

「うぃ。任せておいて。投槍の合間に何とか出来そうだし、問題は無いよ」


 それは重畳。うちの鍛冶師は腕がいいな。
 余裕があったら、紅蓮牙も持ってきてやりたいところだ。
 
 そういえば、あとで冒険者ギルドにも報酬を貰いにいかねばならないな。

 ミアは作業を始めたので、レインに向き直る。


「あー、レインにはこっちの素材について相談したいんだが・・・」


 妙な気恥ずかしさを感じながらも<合成獣の紅蓮毛皮>と<蒼炎虎の皮>を取り出して見せる。ついでに<炎熱虎の皮>も出しておこうか。


「は、はい!そ、そ、そうですね。どうしましょう・・・!?」

「人の事は言えないが、少し落ち着いたらどうだ?
 レインにそんな反応をされると、その・・・ちょっと困る」

「うぅっ・・・落ち着くなんて、無理です・・・!まだ半日前のことですから、ついつい思い出してしまって・・・!」


 ん、まあ・・・気持ちは分かる。痛いほど分かる。
 だって、今の自分も全く同じ気持ちだし。

 デートした時のことを思い出すと、未だに胸が高鳴る。
 恋人のように手を繋いで、緊張しながらも楽しく話をして・・・。

 ・・・あああっ!思い出しただけで顔が熱くなる!
 このままでは不味い!・・・緊急避難しよう!そうだそうしよう!


「あー、それじゃあ預けておくから、ちょっと考えてみてくれ。僕も考えておくから。それと、シエラがログインしてきたらこれを渡しておいてほしい。それじゃあまた!」

「あっ、アストさんっ・・・・・・」


 レインに素材を預けてその場を立ち去る。
 このまま会話を続けていたら、冷静さを欠いているせいで何かしでかさないとも限らない。これは戦術的撤退というやつだ。

 とはいえ、次までには何とかしておかないと・・・。
 本当はもっと話していたいのに、これでは本末転倒だからな。

 ま、心構えさえしておけば、冷静さを保てるだろう。
 今回動揺したのは思い出してしまったからだし、次はその点に気を付けよう。


「ねぇレイン。様子がおかしかったのだけれど、アストと何かあったのかしら?」

「えっ・・・!?べ、別に何もありませんでしたよ・・・!?」

「・・・・・・そう。レインって、嘘が苦手なのね・・・」

「~~ッッ!?」


 アリアさんとレインの話し声が聞こえた気がするが、きっと気のせいだ。
 でも、今のレインの顔は見てみたいかもしれない。
 きっと赤くなってて可愛いんだろうな・・・。

 ・・・僕はもう、色々と駄目かもしれない。

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