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3章

135 四つ目の鍵

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 ウレスタの町の中を探索したのだが、予想通りに面白い物が見つかった。



【犬人の鍵】特殊アイテム レア度ー
 とある場所を通るために必要な鍵。
 全部で四種類存在する。



 ゴブリンが持っていた<緑鬼人の鍵>。
 オークが持っていた<豚人の鍵>。
 リザードマンが持っていた<蜥蜴人の鍵>。
 そして、コボルトの持っていた<犬人の鍵>。

 これで説明文にある通り、四種類の鍵があった訳だ。
 豚人の鍵はミレアが所持しているが、一応は四種類揃った訳だ。

 では、これらの鍵を一体どこで使うのか。
 また、同時に使うのか、別々に使うのか。
 分からないことが多いが、これからの展開に期待だな。

 さて、まだ早いが待ち合わせ場所のウェザリアに行こうか。
 アリアさんに木材を見せておきたいしな。










「新しく木材が手に入ったんですけど見「見せて頂戴・・・!」・・・はい」


 食い気味に反応されてしまったので勿体ぶらずにさっさと見せることに。
 鎮守の原木はいいが、老樹木の根幹はここで出すには手狭なので後回しに。


「解析させてもらうわね・・・・・・鎮守の原木、ね。どんな付与効果がつくか予想がし辛いわね・・・」

「属性系ではなさそうですよね。僕にはそれくらいしか分かりませんが」


 もっとも、予想を覆して属性系ということも十分にあり得る。
 それについては専門ではないので分かりかねるのだ。


「それと、もう一つ大物があるのですけど、ここだと出せないですね・・・」

「そう・・・。それなら、倉庫に行きましょう」

「分かりました・・・・・・うん?」


 ウェザリアに倉庫なんてあったか?
 システム的な倉庫ならあるけれど、実体的な倉庫なんて記憶にないのだが。
 不思議そうな表情が出ていたのか、アリアさんが気づいて答えてくれた


「・・・ああ、隣にあった空家を買い取って倉庫の代わりにしてるのよ」

「なるほど」


 さりげなく規模拡大をして不足の事態に備えるとは、アリアさんは有能だな。
 その手際を見習いたいものだ。

 あ、ウェザリアの共有資金には余裕があるので問題ない。
 全員が自由に引き出せるのだが、結構な金額になっているので。
 規模拡大で資金を使うことは事前に聞いていたが、こういうことだったんだな。

 隣の建物、一軒家ではなく小屋のような場所に来て、そこで木材を出す。
 事前にそういうことも考えてウェザリアの場所を決めたのかもしれないな。
 でないと、隣に空き倉庫があるなんて都合が良すぎるし。

 老樹木の根幹は、ズシン!と音を立てて倉庫の中に出現。


「っ・・・大きいわね、これ」


 そう言いながら検分を始めるアリアさん。
 すぐにレア度5であることを見て驚いた。目が見開かれたので分かりやすい。
 同時に耳がピコピコし始めたので、大きな儲けが期待できるようだ。

 これで売らないとか言ったらどうなるんだろう。
 勿論そんなことは言わないけども。


「・・・この質とこの大きさ。値段を見るのが怖いわね」

「ああ・・・まあ、そうですよね」


 それには全くもって同感だ。
 ここまで大きいと杖が何本作れるか分からない。
 事前の加工で量が減るにしても相当な金額になるのは明らかだ。


「通常買い取り値は・・・・・・っ!?」

「・・・・・・?
 アリアさん、どうかしましたか?」


 値段を見たであろうアリアさんの様子がおかしい。
 これでもかというくらい瞳に動揺が走り、僕から目を逸らしている。
 体の動きもどことなくソワソワして落ち着きが無くなっている気がする。

 もしかして意外と安かったのだろうか。
 それで、買い取り値が安いのが申し訳なくて言い辛い、とか。


「あの、別に値段のことは気にしませんよ?安いぶんには仕方ありませんし」

「・・・違うわ」

「・・・へ?」


 違う、というと?
 違うなら問題なんて無いと思うのだが。

 そう思っていると、アリアさんは長髪を軽くいじりながら、こう告げた。


「アスト・・・その、分割払いでお願いできないかしら?」

「・・・・・・ああ」


 つまりアレか。
 あまりにも高すぎて個人資産では一括で払えない、と。

 アリアさんは申し訳なさそうで、なおかつ、縋るような視線を向けてくる。
 普段のクールな印象からは予想できない、若干上目遣いの不安そうな表情。

 それなら、僕の答えは決まっているな。





「冒険者ギルドで売ってくるのでコイツの回収を・・・」

「アスト、お願い・・・!数日で支払うから・・・!」

「僕、分割払いは余り好かないので・・・!」


 老樹木に近づこうとする僕と、それを必死に押しとどめるアリアさんの図。
 傍から見るとどう映っているのだろうか。
 恋人を捨てようとしている男とか?

 あ、ハラスメントコードが起動した。
 目の前にコード発動の可否を確認するウィンドウが現れている。
 YESかNOを選べときたか。

 男性側にも発動権限があるんだな。
 そんなこと初めて知った。
 まあ、僕を押しとどめるアリアさんの図はギリギリアウトだろうし仕方ないか。


「アリアさん、ハラスメントコードが起動したんで離れてもらえると・・・」

「っ!?あっ・・・ごめんなさい・・・」


 アリアさんは我に返ったようで、直ちに距離を取った。
 ほんのりと頬が赤いのはハラスメントコードを起動する原因となった自分が恥ずかしいからだろう。
 女性は普通、被害を受ける側ということが多いからな。
 初めてのコード起動で加害者側というのは恥以外のなにものでもなかろう。

 この日、極限までテンパると暴走する、という一面があることを知ったのだった。

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