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3章
114 金一封と出場登録
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「・・・そうか。協力に感謝する。
少なくて申し訳ないが、こちらは報酬になる。受け取ってくれ」
「「ありがとうございます」」
アルベルトさんがそう言うので、有難く金一封を頂いておく。
「恐らく、最近増えつつある悪漢も、この邪石のせいであろう。
これまで邪石は見つかっていないが、使徒様であればそれも納得できる。
忙しくなりそうなので、私はこれで失礼する。ライナー、あとを任せる」
「はっ!」
アルベルトさんはそう言い残すと速足で去っていった。
警備の強化やら何やら、色々あるんだろう。
「ふぅ。そういうわけで、俺からも礼を言おう。ありがとう」
「どういたしまして」
成り行きだし、お礼を言われるのは少し違う気がするが、まあいいか。
ライナーは中々誠実な男のようだ。
「ソフィアに万が一のことがあったらと思うと・・・!」
「そっちかよ!」
悪漢の問題に進展をもたらしたことではなく、私的な感謝か。
全く、褒めて損した気分だ。
「あ、もしかしてソフィアの恋人さんなの?」
「違いますよシエラ様。ライナーさんは両親の部下で、昔からの知り合いです。
そういった浮ついた関係ではありませんし、今後そうなることもあり得ません」
「ぐはあっ!?」
ライナーが大ダメージを受けた様子。
残念だが、欠片も脈が無いようなので諦めるといい。
「くっ・・・せめて、今度デートでも・・・!」
「・・・ライナーさん、父に言いつけますよ?」
「うっ・・・それだけは勘弁してください・・・!」
ソフィアの父親か・・・。
ま、いずれ会う機会もあるだろう。
「それでは、闘技場へ向かいましょう」
「ああ、そうしよう。ライナー、ストーカーにはなるなよ?」
「!?」
口をパクパクさせているライナーを無視して詰所を出た。
ようやく闘技場へ向かえる。時刻はもうすぐ昼になってしまうだろう。
「着きました。ここが闘技場になります」
「「おおー!」」
辿り着いた場所は、大きなスタジアムのような作り。
内部には闘技大会個人戦の決勝トーナメントが行われる舞台が幾つかあるようだ。
こんな立派な建物がアライアの町にあったんだな。
「受け付けはあちらになりますので、そこで登録なさってください」
「ああ、そうさせてもらうよ」
僕とシエラは受付となっている場所で闘技大会の申し込みを行う。
ギルド戦はアリアさんが決定権を持っているので個人戦のみだ。
使徒であることを証明したら、あとは殆ど手続きすることもなく終了。
ほとんどの作業は使徒を派遣した神様が行うらしい。
働き者の神様だな。
そういえば、教会のような場所はあるのだろうか。
神様の存在が一般に認知されている以上はあってもおかしくないと思うが。
「ソフィア、この世界は宗教とかあるのか?あと、教会の類も」
「ございますよ。創世教という宗教で、殆どの者はこの宗教を信仰しております。
数字に直すと99%は超えているかと。教会はここから離れた区画にあります」
「99%か・・・それは凄いと言おうか何と言おうか・・・」
99%とは驚きの普及率だ。
何をやったらそんなことになるんだろうか。
大変興味深いので今度教会を訪れてみようかな。
「なにせ、滅びる寸前だったこの世界を救ってくださり、使徒様方も派遣してくださったのですから。それだけ信仰もされるでしょう」
なるほど。そりゃそうだな。微妙に腑に落ちない点もあるけど。
ソフィアと別れ、シエラとともにウェザリアに戻ってきた。
時刻は丁度昼食時。一度ログアウトしようかな。
と思っていたら、シエラが何か用事のようだ。
「アストはさ、NPCをどう思って接してるの?」
「どう、と言われても・・・普通に接しているだけだぞ?」
急にどうした。
やけに深刻そうというか、思い悩んでいるようだが。
「私、NPCはNPCとしか思ってなかったけど・・・ソフィアと接してると、ね?」
「ああ、なるほど。そういうことか」
つまり、NPCが余りにも人間らしくて、どう接していいのか分からなくなったのだろう。その気持ちは分からんでもない。
ミレアも似たようなものだが、僕のスタンスは一貫している。
だから悩む必要は無かった。
アドバイスになるか分からんが、一応教えておこう。
「ま、場合に応じて素直になればいいんじゃないか?
人間だと思いたいならそう思えばいい。プログラムだと思いたいならそれもよし。
普遍的な正解なんて無いんだから、その場その場で好きにすればいいさ」
「えっ、あっ・・・言われてみればそうだよね・・・」
シエラはポカンとした顔をした後で、納得という表情を浮かべた。
何やらすっきりしたようにも見受けられる。
上手くアドバイスできたようでなによりだ。
・・・言い方を変えれば独善的になれという意味にもともとれるけどな。
僕もミレアも、割と我が儘なのだ。
全て、自分のやりたいようにやる。
失敗したことを自覚したら謝り、そうでないなら自分を貫く。
決定的におかしな方向に進んでいたら、兄妹間でフォローし合う。
両親の教育の賜物かね?あの二人は途轍もなく自由人だし。
ストッパーがいるんだから、お前たちはどこまでも自由にやればいい、と。
客観的に見れば酷い教育方針だよな。
僕もミレアも凄く性に合っているし、感謝してるけど。
とにもかくにも、一件落着だ。
「いい助言ができたようで良かった。シエラが元気ないと気持ち悪いしな」
「酷っ!?普通そこまで言う!?」
「言いたいことは割とストレートに言うタイプでな」
「なっ・・・!?」
僕はシエラの怒声を耳にする前に、現実世界へと帰還した。
今日の昼食は・・・四種パスタにでもしようかな。
少なくて申し訳ないが、こちらは報酬になる。受け取ってくれ」
「「ありがとうございます」」
アルベルトさんがそう言うので、有難く金一封を頂いておく。
「恐らく、最近増えつつある悪漢も、この邪石のせいであろう。
これまで邪石は見つかっていないが、使徒様であればそれも納得できる。
忙しくなりそうなので、私はこれで失礼する。ライナー、あとを任せる」
「はっ!」
アルベルトさんはそう言い残すと速足で去っていった。
警備の強化やら何やら、色々あるんだろう。
「ふぅ。そういうわけで、俺からも礼を言おう。ありがとう」
「どういたしまして」
成り行きだし、お礼を言われるのは少し違う気がするが、まあいいか。
ライナーは中々誠実な男のようだ。
「ソフィアに万が一のことがあったらと思うと・・・!」
「そっちかよ!」
悪漢の問題に進展をもたらしたことではなく、私的な感謝か。
全く、褒めて損した気分だ。
「あ、もしかしてソフィアの恋人さんなの?」
「違いますよシエラ様。ライナーさんは両親の部下で、昔からの知り合いです。
そういった浮ついた関係ではありませんし、今後そうなることもあり得ません」
「ぐはあっ!?」
ライナーが大ダメージを受けた様子。
残念だが、欠片も脈が無いようなので諦めるといい。
「くっ・・・せめて、今度デートでも・・・!」
「・・・ライナーさん、父に言いつけますよ?」
「うっ・・・それだけは勘弁してください・・・!」
ソフィアの父親か・・・。
ま、いずれ会う機会もあるだろう。
「それでは、闘技場へ向かいましょう」
「ああ、そうしよう。ライナー、ストーカーにはなるなよ?」
「!?」
口をパクパクさせているライナーを無視して詰所を出た。
ようやく闘技場へ向かえる。時刻はもうすぐ昼になってしまうだろう。
「着きました。ここが闘技場になります」
「「おおー!」」
辿り着いた場所は、大きなスタジアムのような作り。
内部には闘技大会個人戦の決勝トーナメントが行われる舞台が幾つかあるようだ。
こんな立派な建物がアライアの町にあったんだな。
「受け付けはあちらになりますので、そこで登録なさってください」
「ああ、そうさせてもらうよ」
僕とシエラは受付となっている場所で闘技大会の申し込みを行う。
ギルド戦はアリアさんが決定権を持っているので個人戦のみだ。
使徒であることを証明したら、あとは殆ど手続きすることもなく終了。
ほとんどの作業は使徒を派遣した神様が行うらしい。
働き者の神様だな。
そういえば、教会のような場所はあるのだろうか。
神様の存在が一般に認知されている以上はあってもおかしくないと思うが。
「ソフィア、この世界は宗教とかあるのか?あと、教会の類も」
「ございますよ。創世教という宗教で、殆どの者はこの宗教を信仰しております。
数字に直すと99%は超えているかと。教会はここから離れた区画にあります」
「99%か・・・それは凄いと言おうか何と言おうか・・・」
99%とは驚きの普及率だ。
何をやったらそんなことになるんだろうか。
大変興味深いので今度教会を訪れてみようかな。
「なにせ、滅びる寸前だったこの世界を救ってくださり、使徒様方も派遣してくださったのですから。それだけ信仰もされるでしょう」
なるほど。そりゃそうだな。微妙に腑に落ちない点もあるけど。
ソフィアと別れ、シエラとともにウェザリアに戻ってきた。
時刻は丁度昼食時。一度ログアウトしようかな。
と思っていたら、シエラが何か用事のようだ。
「アストはさ、NPCをどう思って接してるの?」
「どう、と言われても・・・普通に接しているだけだぞ?」
急にどうした。
やけに深刻そうというか、思い悩んでいるようだが。
「私、NPCはNPCとしか思ってなかったけど・・・ソフィアと接してると、ね?」
「ああ、なるほど。そういうことか」
つまり、NPCが余りにも人間らしくて、どう接していいのか分からなくなったのだろう。その気持ちは分からんでもない。
ミレアも似たようなものだが、僕のスタンスは一貫している。
だから悩む必要は無かった。
アドバイスになるか分からんが、一応教えておこう。
「ま、場合に応じて素直になればいいんじゃないか?
人間だと思いたいならそう思えばいい。プログラムだと思いたいならそれもよし。
普遍的な正解なんて無いんだから、その場その場で好きにすればいいさ」
「えっ、あっ・・・言われてみればそうだよね・・・」
シエラはポカンとした顔をした後で、納得という表情を浮かべた。
何やらすっきりしたようにも見受けられる。
上手くアドバイスできたようでなによりだ。
・・・言い方を変えれば独善的になれという意味にもともとれるけどな。
僕もミレアも、割と我が儘なのだ。
全て、自分のやりたいようにやる。
失敗したことを自覚したら謝り、そうでないなら自分を貫く。
決定的におかしな方向に進んでいたら、兄妹間でフォローし合う。
両親の教育の賜物かね?あの二人は途轍もなく自由人だし。
ストッパーがいるんだから、お前たちはどこまでも自由にやればいい、と。
客観的に見れば酷い教育方針だよな。
僕もミレアも凄く性に合っているし、感謝してるけど。
とにもかくにも、一件落着だ。
「いい助言ができたようで良かった。シエラが元気ないと気持ち悪いしな」
「酷っ!?普通そこまで言う!?」
「言いたいことは割とストレートに言うタイプでな」
「なっ・・・!?」
僕はシエラの怒声を耳にする前に、現実世界へと帰還した。
今日の昼食は・・・四種パスタにでもしようかな。
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