異世界転生？ いいえ、チートスキルだけ貰ってVRMMOをやります！

３章

１０５ その頃ミレアは その２

　私にとって、藤堂飛鳥という人物が特別な存在になったのはいつだっただろうか。

　昔の事で良くは覚えていないけど、いつの間にか特別になっていた気がする。
　いつも傍に居る何気ない存在。
　だけどどうしようもなく、かけがえのない存在に。

　それはきっと、兄妹愛で片付けていいものではないのだろう。






「エアリアルイーグルからは・・・風山鷲の黒翼が手に入ったか」


　フランが解体してくれたので解析！



【風山鷲の黒翼】素材アイテム　レア度４
　エアリアルイーグルの翼。
　風の力により良質な矢羽などに加工可能。



　弓士には喜ばれそうだけど、私とフランには使い道が無さそうだね。
　ウェザリアに売却かな・・・？
　あ、アリアの喜ぶ顔が浮かんできた。

　アリアのエルフ耳に触るのは野望の一つ！

　・・・あ、そろそろ勧誘の話も決断しないとね。


「そういえば、フランはギルドに入らないの？」

「私が？私は・・・そういうのは合わなくてな。
　今後もどこかのギルドに所属するつもりはないな」

「ああ・・・フランは集団行動とか苦手そうだもんね・・・」


　相談する相手を間違えたね。
　はぁ・・・私もウェザリアに入ろうかな・・・？
　凄くいいギルドだし、駄目なところなんて一つもない。
　強いていうなら・・・アスト兄が居るから入り辛いというだけで。
　勿論、ギルド自体苦手というのもあるんだけどね。

　イベントのギルド戦でアスト兄と戦えないのは残念だけど、他に所属したいギルドも無いから、悩んでも仕方ないんだよね。
　神聖騎士団セイントナイツとか龍の咆哮ドラゴンズ・ロアは論外だし、他にパッとするギルドも無い。

　・・・決めた！ウェザリアに一時加入しよう！
　個人戦とギルド戦、どっちも楽しみだなぁ・・・！







　私とお兄ちゃんは血の繋がりが無いらしい。
　両親から聞いた話なのだが、それ以上のことは分からない。
　私とお兄ちゃんの両方が両親の子どもじゃないのか、それとも片方だけなのか。

　詳しいことを尋ねれば話してくれると思うけど、そのつもりはない。
　何故なら、いま自分は、とても幸せで満たされている自覚があるのだから。
　わざわざ自分から関係を危うくする恐れのあることは聞く必要が無いのだ。

　一番古い記憶には既に両親とお兄ちゃんが出てくるので、いまいち現実味は無い。
　きっとお兄ちゃんも似たようなものだろうと勝手に思っている。







　エリアの探索をして、エリアポータルらしき町を発見した。


「特に結界の類は存在しないようだな」

「うーん・・・今までと違うね。・・・風の都、とか？」


　確か、アスト兄の話では、水の都に結界は無かったはず。
　ただの推測だけれど、ここは風の都なんじゃないかな、と。


「何にせよ、とりあえずは町の中を探してみよう！」

「そうだな。考えるよりもその方が簡単だ」

「うんうん。フランは脳筋だもんねっ！」

「誰が脳筋だっ！考えるのは苦手ではあるが、脳筋と呼ばれる程ではない！」


　本当かなぁ・・・？
　戦闘中の判断は脳筋とはかけ離れてるけど、普段は、ねぇ？




　町の中で一番高い建物である高台が怪しいと睨んでやってきた。
　すると展望台に、案の定何かが居た。



　カースドトルネードスピリット　Lv５
　エリアボス　魔物　最上位種　格上
　？？？　？？？　？？？　？？？



　こんなに見えない部分が多いのはいつ以来かな。
　これは、流石に厳しいかも？


　ドドドドドドドドッ！！


「なっ・・・逃げ道が塞がれた！？」

「ああ・・・アスト兄がそんなことを言ってたね」


　逃げるつもりなんて無いから忘れていたんだけどね。
　さて、大ピンチだけど、どう戦おうかな・・・？








　お兄ちゃんは普通の領域を出ない人だと思っていた。
　勿論すごいところは沢山あるけれど、普通と言ってもおかしくはない。

　けれど、FSOでのお兄ちゃんは・・・人間をやめている。
　フランもそうだけど、普通の人はあんな反応速度を出せない。VRとの相性が良いのか、もしかしたら他の理由があるのかもしれない。突拍子もない予想だけどね。

　人外の領域というのは、良くも悪くも他の人を置いていってしまう。
　下手をすれば、孤独になってしまうかもしれない。
　私はそんなことになるのは嫌だし、アスト兄に置いて行かれたくはない。
　ゲームを純粋に楽しんでいるアスト兄に、今のまま楽しんでいてほしい。

　だから私は・・・使おうとしなかった全力を、使うことにした。
　周りを置いていってしまう、私の全力を。

　不安は無い。
　だって、どこまでもアスト兄がついてきてくれると確信しているから。
　きっと私も、今までよりもっと、このゲームを楽しめるから。


　それじゃあ、戦闘開始だよっ！









　アナザースキル。
　賢者Lv１アーツ『並行詠唱パラレル・スペル』・・・発動。
　賢者Lv５アーツ『魔導書グリモワール』・・・発動。



「エアリアルエクスプロージョン！」
「アクアエクスプロージョン！」
「ダークネスエクスプロージョン！」
「フレイムエクスプロージョン！」
「スノウエクスプロージョン！」
「シャイニングエクスプロージョン！」





　それから数十分後。
　新しい町が、また一つ開放された。


《風の都『ウィーンフライト』が開放されました》