異世界転生? いいえ、チートスキルだけ貰ってVRMMOをやります!

リュース

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3章

72 町の居住区

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 何故僕の方を見るんだ。

 しかし不味い。六割のプレイヤーが僕に注目している。
 このままではなし崩し的に決闘させられる未来しか見えない。
 セレナも面白がって許可しそうだし。

 この状況を打破するには・・・・・・いいことを思いついた。

 隣に居るフランの方を見る。
 すると、僕を見ていたプレイヤーがつられて、フランの方を見た。
 大成功だ。


「なっ!?アスト、貴様・・・!」

「そこの女が代表者か!決闘を受諾する栄誉をやろう!」


 そうして、フランの元に決闘の申請が届いた。
 戦闘狂のフランは断れないだろう。


「はぁ・・・。私に勝ったところで、他の者の報酬を奪うことなど出来ないのだが・・・」


 うん、根本的に色々おかしいよね。
 神聖騎士団の男はそんなことすら分からないみたいだが。


 その後、神聖騎士団の代表者はフランに瞬殺されたのでした。
 めでたしめでたし。





「アスト、少し話があるのだが?」

「・・・手短にお願いします」


 フランがお怒りだ。
 ちっともめでたくなかった。









 アライアの町へ戻ってきて、ぞろぞろとギルドに向かう。
 神聖騎士団の連中が何か喚いていたが、流石に付き合いきれないので、草原に放置した。


「おかえりなさいませ、アスト様。既にお話は他の使徒の方から伺っております。大変ご苦労様でした。そして、ありがとうございました」

「どういたしまして。お礼を言われるようなことでもないと思うけどな」

「いえいえ。あのまま討伐されなければ町が危険でしたから。家族共々、本当に有難く思っていますよ」


 ソフィアはこの町で両親や兄妹と一緒に暮らしているらしい。
 それでこの感謝なのか。納得した。


「そうか。まあ、お役に立てて何よりだ」

「はい。討伐に参加した使徒の方々も、アスト様を称賛しておられましたし」

「・・・それほど大したことはやってないぞ?」

「またまた、ご謙遜を・・・」


 ソフィアは僅かに笑みを浮かべて微笑んでいる。
 ゲームを始めてから初めて見たな。


「まあいいや。報酬、確かに受け取った。今日はこれで失礼するよ」

「またのお越しをお待ちしております、アスト様」


 僕は、報酬の三十万ゴールドを受け取って、ギルドを後にした。

 偶にはNPCの居住区に行ってみようかな・・・?
 掲示板の報告では何も起こらないみたいな話を聞いたが、それならそれで構わないのだし。

 ちなみに、アライアの町はかなり広い。
 最後に残された町だけあって、生き残りの住人たち全員が住んでいるのだから。

 そういえば、開放された町へ移住はしないのだろうか?
 そう考えると、まだ分からないことだらけだな、この世界は。






 ウェザリアに着くと、ミレアに詰め寄られた。


「アスト兄!レイドボスの話って本当なの!?」

「お、ミレア。その話は本当だが・・・」


 その手のイベントをうちの妹が傍観するなど、珍しいよな。
 レイドメンバーに居なかったのは、何かの間違いかと思ったぞ。


「ウェザリアに籠ってたら気づかなかった・・・!一生の不覚だよっ・・・!」

「そこまで言うのか・・・」


 幾ら何でもそこまでは・・・ブーメランになりそうなので何も言うまい。
 事故に遭って死んだときの自分の発言を思い出してしまった。
 あの時は気が動転していたんだよ、きっと。


「レイン、作業中申し訳ないんだが、少し良いか?」

「はいっ、何でしょうか?」

「実は、こういう皮素材があってな・・・」


 作業中でも微笑みを浮かべてこちらを向いてくれたレインに、暴走犬の焔皮を取り出して見せた。


「これは、レア度5・・・!?是非買い取らせてください・・・!」

「お、おう、分かった。分かったから少し離れて・・・!」


 レインの顔が近い・・・!
 興奮して上気しているから心臓に悪い!


「あっ、すみません!つい興奮してしまって・・・!」

「いや、気にするな。悪い気はしていないしな」

「え・・・?」


 しまった、余計な事を言ったな。

 でも、恥ずかしそうに顔を赤らめるレインは中々いいな。
 微妙にモジモジしているのもまた、何とも言えない可愛さが・・・。
 よくぞ言った、僕。


「ゴホン。それでだな、今作ってもらっている革鎧に使えるだろうか?」

「っ、そうですね・・・少し完成は遅くなりますが、何とかなると思います」


 それは重畳。


「じゃあ、お願いしてもいいか?」

「勿論です。お任せください!」


 その後、革鎧が完成したら、代金分だけ暴走犬の焔皮を譲ることに決まった。
 支払いは大変な金額になりそうだが、レインの見立てでは、それでも焔皮がすこし手元に残るらしい。

 余ったのを持っていても仕方ないので、レインに格安で譲ることになった。
 ウェザリアでの素材融通はそんな感じで行われるのだ。
 その分作製費が値引きされるので文句など無い。

 やることも済んだし、今日はもうログアウトしようかな・・・。


「アスト兄、いつまで嬉しそうな顔してるの?」

「えっ・・・!?」


 全く気づきませんでした。
 ああ恥ずかしい・・・!

 さっさとログアウトしよう・・・!

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