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3章

67 ステーキと緊急クエスト

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 夕食の献立は、自家製牛カットステーキと特製野菜スープ、その他。

 あとは盛り付けをして・・・。


「いい匂いだね・・・!」

「美鈴、もうすぐだからテーブルで待っててくれ」


 僕の隣に美鈴がやってきた。
 もうすぐ終わるというのに、待ちきれなかったのか。美鈴は自家製カットステーキが大好物。
 僕の料理なら大抵美味しいと喜んでくれるが、その中でも頂点を争うのが、この自家製牛カットステーキだ。

 家庭でそんなものをつくれるのはおかしいかもしれないが、我が家のキッチンはレストランの厨房並の設備なので問題ない。

 牛肉に関しても、かなり質がいいものを使っている。ちょっとスーパーではお目にかかれないくらいの奴だ。
 僕が直接取り寄せなければならないので、滅多につくってやれないのは申し訳ないところだが。

 金銭的な問題は無い。
 我が家は何故か裕福だし、僕個人もそれなりに稼いでいるので。
 そういえば、イベントが終わったころにでも職場に顔を出しておこうかな。


「これで・・・完成だ。」

「私運ぶねっ!」

「あっ、そんなに一度に運ぶと危ないぞっ!?」

「大丈夫大丈夫!・・・あっ!?」


 言ってる傍から躓いた!?

 慌てて駆け寄って美鈴の体を支え、ギリギリセーフ。
 ソースが少し飛んだが、些細なことだ。


「美鈴、反省するように!」

「あ、うん・・・。ありがとうお兄ちゃん・・・」


 美鈴は反省しているのか、下を向いている。
 普段は完璧に近いのに、時々やらかすんだよな。母親の血だろうか。


「美鈴?とりあえず反省は後にして運ばないか?」

「っ、そうだねっ・・・!」


 顔を覗き込もうとしたら、背を向けてリビングへ向かってしまった。
 遅めの反抗期なのだろうか。

 まあいいや。零れたソースを拭くとしよう。




 食卓に着くと、美鈴が何か言いたげにしていた。


「お兄ちゃん、天然は罪だと思う!」

「はぁ?」


 なんのこっちゃ。










「ごちそうさまでした!」

「ん、お粗末様でした」


 自画自賛というわけでもないのだが、美味しかった。
 僕の腕前云々ではなく、肉の質がいいので、当然美味しくなる。
 美鈴も満足できたようで、余韻に浸っている表情は幸せそうだ。


「お兄ちゃんは良いお嫁さんになれるね!」

「僕は男だぞ」

「貰い手がいなかったら私が貰うから、家事をお願い!」

「話を聞け!」


 妹とどうこうなる気はない。
 別に、兄妹愛を否定するつもりもないし、世間体とかはどうでもいいが、それはそれとして、だ。


「ないな」

「お兄ちゃん酷いっ!」


 美鈴は頬を膨らませているが、むくれられても困る。
 冗談の類だとは思うが、相変わらず読めないな。表情はコロコロ変わるのに、本心を表しているかどうかが不透明なのだ。


「美鈴は恋人とかできないのか?」

「私はお兄ちゃん一筋だよっ!」


 ニコニコと微笑みながら宣言されてしまった。
 表情からして、揶揄いを含んだ冗談だと思うのだが・・・本気じゃないよな?

 兄としては、色恋に興味が無い妹を心配せざるを得ない。
 これ以上聞こうものならカウンターを喰らいそうなのでやめておこう。


「ところでお兄ちゃん」

「どうした?」

「・・・お替わりはありませんか?」

「ない」


 ガックリと項垂れてしまったが、今回はフォローしてやらん。
 がっつり二人前も食べたんだから、我慢しなさい。

 それとは別に、一つ思ったことが。


「美鈴が敬語だと、ムズムズするからやめてくれないか」

「私だって余所では敬語くらいつかうよっ!」


 そんなに怒るな。野菜スープのお替わりを注いでやるから。


「あ、ありがとうお兄ちゃん。よくスープが欲しいって分かったね?」

「これでも兄妹だからな。それくらいは分かるようになるさ」


 二人して野菜スープを飲みながら一服。
 美味しそうにスープを飲む美鈴は、まるで小動物のようで可愛らしい。


「・・・美鈴は可愛いな」

「ぶはっ!?」


 何故噴き出すのかね。勿体無い。












 夕食の片づけを終えて、FSOへ。

 明日の朝には武具が完成するし、その後はイスタリアの町への移動が控えている。アライアの町から離れることはできない。空いた時間はどうしようか。

 時間を潰すつもりで冒険者ギルドへ行ってみると、そこはちょっとした騒ぎになっていた。



「緊急クエストが発令されました!受注可能ランクはFランク以上になります!」


 ギルドの受付嬢が説明している。
 だが、緊急クエストって何だ?そこはせめて緊急依頼ではないだろうか。


「内容は、ハウンド変異種の討伐!場所は、アライアの町から東方向の草原です!町へ危険が及ぶ恐れがありますので、即時討伐をお願いします!」


 なんか面白そうだな。詳しい話を聞きに行こう。


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