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3章
55 料理騒動
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早めの昼食を済ませてFSOにログイン。
美鈴が懇願してくるので、激辛スープはやめてあげた。
「おまたせフラン!」
「待たせて済まなかったな」
「気にするな。アライアの町で過ごしていたら、あっという間だったからな」
それは良かった。
さて、今日はこれからどうしようかね。
「ミレア、今日どうするか決めてあるか?」
「えっとね、一度アライアの町に戻ってから西へ行こうかな、と」
なるほど。西の境界ボスは討伐済みだが、その先のエリアポータルを目指すのは悪くないな。アイテムの売却もしたいところだし、賛成に一票。
フランも賛成したので、今日の方針は決定だ。
と、丁度その時、アップデートが開始される時間になった。
すなわち、空腹度とPKシステムが導入されたということだ。
「ミレア、アライアの町へ行こう。空腹度が実装されたから・・・」
「豚肉を料理してもらおう!」
「現状では、大したものはつくれないと思うけどな」
他の材料が無いので、豚肉の串焼きくらいか?
米が無いというのも厄介な話だ。
そんな訳でアライアの町へ転移。
「ねえアスト兄・・・なにこれ?」
「見ての通りじゃないか?」
「阿鼻叫喚というやつか」
アライアの町は、フランの言う通り、阿鼻叫喚となっていた。
察するに、主な原因は四つ。
一つ、丁度昼時なので、空腹度パラメーターが急上昇していること。
二つ、空腹度が九割を上回ると、基礎能力値が下がること。また、空腹度が最高値になると、餓死して死に戻ること。
三つ、餓死や能力値ダウンを知ったプレイヤーが、ただでさえ数が少ない料理人に群がったこと。
四つ、料理の味が酷いもので、とても食べられたものじゃないこと。
大体そんな感じだ。
僕たちはログインしてから戦闘をした訳ではないので、そこまで焦る必要は無い。だがそれでも、この現状は悪影響を与えるだろう。
「アスト兄、どうして今更料理の味について明らかになったのかな?」
「さぁ・・・?」
アップデート前は味覚なんてなかったからな。料理を食べるもの好きは居ても、その味が不味いことまでは分からなかった、ということだろうか。
聞けば、完成した料理のレア度と品質は、どれも悪いものだったらしいし。
何故不味いのかは・・・分からん。
「多分それで正解だね。これからどうする?」
「まずはウェザリアに行こうか。話はそれからだ」
三人でウェザリアにやって来ると、そこも軽い騒ぎになっていた。
プレイヤーたちが、ウェザリアに料理人が所属していないか問い合わせをしているようだ。
ウェザリアもそこそこ有名になったからな。
対応しているアリアさんの様子から、料理人はいないのだろうと思うけど。
僕たち三人はウェザリアの中に入れてもらった。
随分と特別扱いだが、お得意様だからということで納得。
「話の前に、とりあえずは買取をお願いします」
「分かったわ。・・・今回も大量ね」
僕たちが出したのは、ここ二日ほどで狩った魔物のアイテム。
オークの肉だけは売らないが、残りは売却だ。
あ、冒険者ギルドの報酬は既に受け取り済みだ。
一人当たりの受け取り金額を割り出してもらったら、槍と槍素材をフランへ戻す。僕には足輪を戻す。
そこから金額が均等になるように三分割して終了だ。
受け取った金額は、五十万ちょいか。
まあ、ゴブリンばっかりだし、仕方ないな。
所持金は六百万を超えたが、使い道なんてあるのか?
ミレアの所持金は百五十万にも届かないらしいので、僕がどれだけ貯め込んでいるのかがよくわかる。
いらないポーションも売却して、更に所持金を増やす。
こちらはお金の為ではなく、ウェザリアの為だ。
未だにMPとAPポーションは不足が続いているのだ。
「それで、今回の騒ぎについてなのだけれど・・・」
「やはりウェザリアに料理人は居ませんよね・・・」
この場に居るのは、僕とミレア、フラン、アリアさん、レイン、ミア、シエラの七人だけ。どう見ても料理人が居るとは思えない。
「ええ・・・スカウトって難しいのよね・・・」
「ウェザリアは少数精鋭ですからね」
おまけに料理人の総数が少ないので、そりゃあ無理だ。
みんな人任せにして料理スキルを取得しなかったんだな。
七人とも徐々に空腹度パラメーターが溜まってきているので、このままでは仲良く死に戻りは必至だ。
それはそれで面白そうな絵面だが、初めての死に戻りが餓死というのは、微妙に笑えない。
大体、餓死で死に戻っても空腹度は九割からスタートなので、早めに解決しないと悲惨なことになる。主にデスドロップとか。
だがしかし、現状売られている料理は、酷い味な上に殆ど空腹度パラメーターが下がらない。
なんという八方塞がりな状況なのか。
そんな時に立ち上がったのが、皆を放っておけなかった心優しきミレア。
「アスト兄!変なモノローグ流しても料理スキルは取得しないよ!」
「くっ・・・!」
だめだったか・・・。
ワンチャンあると思ったんだがな・・・。
それとレイン、こっちを期待した目で見るのはヤメテ。
スキルを取得しても職業に空きがないので非効率なんですよ・・・!
ちらっとフランの方を見る。
「はぁ・・・」
「おいアスト。何故私を見てため息を吐いたのだ?」
「・・・気のせいじゃないかな」
「嘘を吐け!どうせ私は料理音痴だ!悪かったなっ!」
別にそこまでは言ってないのだが・・・。
というか、フランは料理音痴なのか。またしてもフランに関するどうでもいい情報が手に入ってしまったな。
・・・うん?
「・・・アリアさん、料理の手順ってどうなってますか?」
「え?・・・確か、システムが代替してくれるはずよ」
「みんなシステムにまかせっきり、と?」
「ええ・・・わざわざ料理する必要が無い以上は、皆そうするでしょうね」
なるほど、読めて来たぞ?
料理スキルのシステムは料理音痴なんじゃないか?
そもそも他の生産スキルに自動生成なんて存在しない。料理スキルにだけ存在する特徴だ。
そして、アップデート前には味が無かったために、その欠点に気づく者が居なかった。
もっと料理人が沢山居れば気づく者も現れそうだが、現在の人数では気づかなくともあり得ない話ではない。
こんなこと誰かが気づきそうなものだが、システムで作った料理で問題が起こらなかった期間が二週間もあるのだ。そのせいで盲点になっているのだろう。
誰かが気づくのも時間の問題だが。
いや、現状はただの推測なので、正しいとは限らないが。
ミレアの方を見ると、僕より数秒後で同じ結論に辿り着いたらしい。
二人で頷き合って、こう告げた。
「「アスト兄(ミレア)が料理スキルを取得して検証してみて(くれ)!」」
ふむ、なるほど。
「ミレア、明日からの食事が要らないみたいだな?」
「アスト兄の卑怯者ーっ!!」
誰が卑怯者だ!
全く、人聞きの悪いことを・・・!
・・・レインさん、そんな悲しそうな顔をして僕を見つめないで!
美鈴が懇願してくるので、激辛スープはやめてあげた。
「おまたせフラン!」
「待たせて済まなかったな」
「気にするな。アライアの町で過ごしていたら、あっという間だったからな」
それは良かった。
さて、今日はこれからどうしようかね。
「ミレア、今日どうするか決めてあるか?」
「えっとね、一度アライアの町に戻ってから西へ行こうかな、と」
なるほど。西の境界ボスは討伐済みだが、その先のエリアポータルを目指すのは悪くないな。アイテムの売却もしたいところだし、賛成に一票。
フランも賛成したので、今日の方針は決定だ。
と、丁度その時、アップデートが開始される時間になった。
すなわち、空腹度とPKシステムが導入されたということだ。
「ミレア、アライアの町へ行こう。空腹度が実装されたから・・・」
「豚肉を料理してもらおう!」
「現状では、大したものはつくれないと思うけどな」
他の材料が無いので、豚肉の串焼きくらいか?
米が無いというのも厄介な話だ。
そんな訳でアライアの町へ転移。
「ねえアスト兄・・・なにこれ?」
「見ての通りじゃないか?」
「阿鼻叫喚というやつか」
アライアの町は、フランの言う通り、阿鼻叫喚となっていた。
察するに、主な原因は四つ。
一つ、丁度昼時なので、空腹度パラメーターが急上昇していること。
二つ、空腹度が九割を上回ると、基礎能力値が下がること。また、空腹度が最高値になると、餓死して死に戻ること。
三つ、餓死や能力値ダウンを知ったプレイヤーが、ただでさえ数が少ない料理人に群がったこと。
四つ、料理の味が酷いもので、とても食べられたものじゃないこと。
大体そんな感じだ。
僕たちはログインしてから戦闘をした訳ではないので、そこまで焦る必要は無い。だがそれでも、この現状は悪影響を与えるだろう。
「アスト兄、どうして今更料理の味について明らかになったのかな?」
「さぁ・・・?」
アップデート前は味覚なんてなかったからな。料理を食べるもの好きは居ても、その味が不味いことまでは分からなかった、ということだろうか。
聞けば、完成した料理のレア度と品質は、どれも悪いものだったらしいし。
何故不味いのかは・・・分からん。
「多分それで正解だね。これからどうする?」
「まずはウェザリアに行こうか。話はそれからだ」
三人でウェザリアにやって来ると、そこも軽い騒ぎになっていた。
プレイヤーたちが、ウェザリアに料理人が所属していないか問い合わせをしているようだ。
ウェザリアもそこそこ有名になったからな。
対応しているアリアさんの様子から、料理人はいないのだろうと思うけど。
僕たち三人はウェザリアの中に入れてもらった。
随分と特別扱いだが、お得意様だからということで納得。
「話の前に、とりあえずは買取をお願いします」
「分かったわ。・・・今回も大量ね」
僕たちが出したのは、ここ二日ほどで狩った魔物のアイテム。
オークの肉だけは売らないが、残りは売却だ。
あ、冒険者ギルドの報酬は既に受け取り済みだ。
一人当たりの受け取り金額を割り出してもらったら、槍と槍素材をフランへ戻す。僕には足輪を戻す。
そこから金額が均等になるように三分割して終了だ。
受け取った金額は、五十万ちょいか。
まあ、ゴブリンばっかりだし、仕方ないな。
所持金は六百万を超えたが、使い道なんてあるのか?
ミレアの所持金は百五十万にも届かないらしいので、僕がどれだけ貯め込んでいるのかがよくわかる。
いらないポーションも売却して、更に所持金を増やす。
こちらはお金の為ではなく、ウェザリアの為だ。
未だにMPとAPポーションは不足が続いているのだ。
「それで、今回の騒ぎについてなのだけれど・・・」
「やはりウェザリアに料理人は居ませんよね・・・」
この場に居るのは、僕とミレア、フラン、アリアさん、レイン、ミア、シエラの七人だけ。どう見ても料理人が居るとは思えない。
「ええ・・・スカウトって難しいのよね・・・」
「ウェザリアは少数精鋭ですからね」
おまけに料理人の総数が少ないので、そりゃあ無理だ。
みんな人任せにして料理スキルを取得しなかったんだな。
七人とも徐々に空腹度パラメーターが溜まってきているので、このままでは仲良く死に戻りは必至だ。
それはそれで面白そうな絵面だが、初めての死に戻りが餓死というのは、微妙に笑えない。
大体、餓死で死に戻っても空腹度は九割からスタートなので、早めに解決しないと悲惨なことになる。主にデスドロップとか。
だがしかし、現状売られている料理は、酷い味な上に殆ど空腹度パラメーターが下がらない。
なんという八方塞がりな状況なのか。
そんな時に立ち上がったのが、皆を放っておけなかった心優しきミレア。
「アスト兄!変なモノローグ流しても料理スキルは取得しないよ!」
「くっ・・・!」
だめだったか・・・。
ワンチャンあると思ったんだがな・・・。
それとレイン、こっちを期待した目で見るのはヤメテ。
スキルを取得しても職業に空きがないので非効率なんですよ・・・!
ちらっとフランの方を見る。
「はぁ・・・」
「おいアスト。何故私を見てため息を吐いたのだ?」
「・・・気のせいじゃないかな」
「嘘を吐け!どうせ私は料理音痴だ!悪かったなっ!」
別にそこまでは言ってないのだが・・・。
というか、フランは料理音痴なのか。またしてもフランに関するどうでもいい情報が手に入ってしまったな。
・・・うん?
「・・・アリアさん、料理の手順ってどうなってますか?」
「え?・・・確か、システムが代替してくれるはずよ」
「みんなシステムにまかせっきり、と?」
「ええ・・・わざわざ料理する必要が無い以上は、皆そうするでしょうね」
なるほど、読めて来たぞ?
料理スキルのシステムは料理音痴なんじゃないか?
そもそも他の生産スキルに自動生成なんて存在しない。料理スキルにだけ存在する特徴だ。
そして、アップデート前には味が無かったために、その欠点に気づく者が居なかった。
もっと料理人が沢山居れば気づく者も現れそうだが、現在の人数では気づかなくともあり得ない話ではない。
こんなこと誰かが気づきそうなものだが、システムで作った料理で問題が起こらなかった期間が二週間もあるのだ。そのせいで盲点になっているのだろう。
誰かが気づくのも時間の問題だが。
いや、現状はただの推測なので、正しいとは限らないが。
ミレアの方を見ると、僕より数秒後で同じ結論に辿り着いたらしい。
二人で頷き合って、こう告げた。
「「アスト兄(ミレア)が料理スキルを取得して検証してみて(くれ)!」」
ふむ、なるほど。
「ミレア、明日からの食事が要らないみたいだな?」
「アスト兄の卑怯者ーっ!!」
誰が卑怯者だ!
全く、人聞きの悪いことを・・・!
・・・レインさん、そんな悲しそうな顔をして僕を見つめないで!
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