異世界転生? いいえ、チートスキルだけ貰ってVRMMOをやります!

リュース

文字の大きさ
上 下
11 / 264
2章

11 現実世界に帰還して

しおりを挟む
 ログアウトして現実に戻って来た僕は、体を起こして隣のベッドを確認する。

 ミレア・・・美鈴も体を起こしているが、とても眠そうだ。


「ふぁ・・・このまま眠りたい・・・」

「それは良いが、夕食はどうするんだ?」

「んーどうしよう・・・」


 昨夜あまり眠れなかったらしい美鈴は、今すぐにでも眠りたいほど眠いようだ。

 ただ、空腹も感じているため、食べたい気持ちもある、と。


「それなら、僕が作って置くから、その間は寝ているといいよ」

「うん・・・そうするね・・・。ありがとう、アスト兄・・・」


 ゲームでの呼び方が残っているが、まあいいだろう。

 とりあえずは夕食を作る。

 美鈴は・・・作り終えた時の気分次第で、食べるかどうかを決めれば良かろう。




 台所へ向かって冷蔵庫の中身を確認。


 ・・・ご飯とみそ汁、肉じゃが。


 シンプルだが、食べやすいものなので、おおよそは決定だ。






 丁度料理が完成したころ、美鈴が一階へ降りて来た。

 匂いを嗅ぎつけて来たのだろう。


「おおっ、肉じゃがだ。ありがとう、お兄ちゃん!」

「どういたしまして。さ、食べようか」

「はーい。いただきます!」

「いただきます」


 食事しながら、明日からの事について話す。


「美鈴は明日はどうするんだ?」

「明日?明日もFSOをやるよ?」


 まあ、そうだろうと思っていたので、それはいい。

 僕もやるつもりだからな。

 聞きたいのは、ゲーム内で何をやるか、ということだ。


「ん、装備を受け取った後はどうする?」

「んー?もう少し草原で狩りか、先へ進むか、迷うなぁ・・・」

「やっぱりそうだよな・・・」


 僕もそこで悩んでいたのだ。

 ファンタジー・スキル・オンラインは、世界を開拓していくのが目的。

 当然、先へ進むという選択肢もある。


「確か、一マス進むと難易度が上がるんだったよな・・・?」

「そうだよ。アライアの町は一マス目の中心で、草原がその周辺」

「マップでも確認したんだが、一マスだけでもかなり広いぞ?」

「草原を殆ど歩き尽くしても、まだ二割前後だもんね・・・」


 アライアの町から東西南北の四方向へ向かえるので、一方向は二割くらい。

 それだけの場所を踏破するというのは中々大変だ。


「それに、進むにしても、どの方向に行くかも迷うよな・・・」

「うーん、それもあるね・・・」


 僕としては東へ進んでみようかな、と考えているが、まだ未定だ。


「あと、のんびりし過ぎて後続に追いつかれてしまうのもね・・・」

「・・・まあ、分からないでもないが」


 美鈴は、やるからには全力投球が基本だし、負けるのも好きでは無い。

 トッププレイヤーになりたいのとは少し違うが、追いつかれたくないという感情にも嘘はあるまい。


 その向上心が、今ある美鈴の頭脳を形作るに至ったのだと予想している。

 決して悪いことではないのは間違いないので、特に思うところも無い。

 今まで悪い方向に作用したことなど、欠片も無いし、これからも大丈夫だ。


 僕は・・・やるからには勝ちたいし、負けたら悔しいと思うだろう。

 魔物にやられて死に戻ったりしたら、少し落ち込むかもしれない。

 つまり、血は繋がっていないが、兄妹ということだ。


 ハッキリそう言うのも恥ずかしいので、適当に言葉を濁しておいたが。

 美鈴もそれには気づいているだろうし、問題はあるまい。


「そういう訳で、もう少し草原で戦った後、私は北へ進もうかな」

「了解。それじゃあ、別行動ということでいいか?」

「いいよ。でも、また一緒に冒険しようね?」

「勿論。またよろしくな、美鈴」

「こちらこそよろしくね、お兄ちゃん!」


 とまあ、明日からの方針も決まった所で、完食。


「ふぅ・・・ごちそうさま。美味しかったよ、お兄ちゃん」

「お粗末様。それはなによりだな」


 美鈴はこの手の誉め言葉を欠かさない。

 本当に、できた妹である。


 僕がそう思っていると、美鈴が不思議そうに声を掛けて来た。


「何、お兄ちゃん。そんなに見つめて・・・ハッ!まさか私の魅力に気づいて!?」

「・・・何言ってんの?」


 美鈴が自らを抱き締めておののく振りをしている。

 毎度、よくやるものだな・・・。


「で、でも・・・私、お兄ちゃんなら・・・!」

「おい」


 何故そこで受け入れる方向に話が進むのか。

 何度やられても、これだけは慣れない。

 なまじ美少女であるために、心臓に悪いのだ・・・。


「冗談はさておき、お兄ちゃんは恋人つくらないの?」

「特に必要としていないからつくらないぞ」

「つくらない、かぁ・・・。つくれない、の間違いなんじゃないのかなー?」

「ぐはっ!?」


 痛い所をピンポイントで突いて来たな・・・。

 だが、やられたままの僕ではないぞ?


「美鈴、今度の食事にハバネロを混ぜてやろう」

「ちょっ!?それは嫌っ!」


 これで美鈴は疑心暗鬼になるだろう。

 他に思いつかなかったのだから、やることがセコイとか言わないでくれ・・・。


 その後、食事の片付けも終えて、先に自室へ戻って来た。






「ふふーん。お兄ちゃんはもうしばらく独り身かぁ・・・・・・やったね!」


しおりを挟む
感想 715

あなたにおすすめの小説

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)

ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。 流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定! 剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。 せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!? オマケに最後の最後にまたもや神様がミス! 世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に なっちゃって!? 規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。 ……路上生活、そろそろやめたいと思います。 異世界転生わくわくしてたけど ちょっとだけ神様恨みそう。 脱路上生活!がしたかっただけなのに なんで無双してるんだ私???

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった

Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。 *ちょっとネタばれ 水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!! *11月にHOTランキング一位獲得しました。 *なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。 *パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

処理中です...