異世界転生? いいえ、チートスキルだけ貰ってVRMMOをやります!

リュース

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1章

10 レインと雨宮優香

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 私、雨宮優香は、人生最大の危機に直面しています。

 目の前に迫る車に、逃げなければいけないと分かっていても、体が動きません。


 FSOのことを考えていて、上の空だったのがいけなかったのでしょう。

 気づいたときには、車が目と鼻の先に居ました。



 もう駄目だと思ったとその時、突如体が動きました。

 だれかが押してくれたのだと、遅まきながら気づきました。

 おかげさまで車に撥ねられずに済みましたので、お礼を言わなくては。


 そう思いながら起き上がった私の目に飛び込んで来たのは、地面に倒れ伏す男性の姿でした。







 車の運転手も降りて来て、一緒に男性へ駆け寄ります。

 もし死んでしまっていたら、私はどうしたら・・・!


「君っ、大丈夫かね!?」

「・・・大丈夫、です」


 どうやら、意識はハッキリしているようです。

 死んでいなくてよかった・・・。


「あ、あの!助けてくれて、ありがとうございましたっ!」

「ん?ああ、君は車に撥ねられそうになっていた子だよね?」

「は、はい、そうです!本当にありがとうございました!」

「どういたしまして」


 男性に微笑まれた瞬間、私の心臓が激しく脈打ち始める。

 顔が赤くなっていくのが、自分でも分かる。


 私は・・・どうしてしまったのでしょうか・・・?


 男性の方は、私よりも少し年上で、格好いい方だと思います。

 見つめていると、更に鼓動が激しくなって来ました。



 私がボーっとしている間に、男性は去ってしまったようです。

 走り去る姿を見るだけで、ドキドキが止まりません。

 手に持っているのは、ひょっとしてFSOでしょうか・・・?


 ゲームの中で会えたら、一緒に冒険がしたいなぁ・・・。










 FSOにログインした私は、職業を服飾師に決めました。

 大した理由はありませんが、苦手ではありませんので、問題は無いでしょう。



 ゲームにログインして直ぐに、エルフの女性からギルドへ誘われました。

 とても良い人そうでしたので、気づいたときには了承していました。


 エルフの方、アリアさんも、呆気なく勧誘に成功して、面食らっているようです。

 早計かもしれませんが、昔からこの手の勘だけは外したことが無いもので・・・。


 そういえば、あの男性の方も、とても良さそうな人でしたね。

 考えてしまうと顔が熱くなるので、思考を逸らしておきます。


「では、これからよろしくね?私はアリアよ」

「私はレインと言います。こちらこそよろしくお願いします」


 そのあとアリアさんはミアさんという鍛冶師の方も誘い、ギルドを設立。

 驚異の俊敏さだと思いますが、良い判断なのでしょう。

 なぜなら、ゲームが始まって早々に、お客さんが来たのですから。


「あっ、そこのエルフのお姉さん!杖を作って欲しいの!」

「早速お客さんね。でも、材料が無いと・・・」

「あれ?木工師なら木材が初期アイテムにあると思ったんだけど・・・」

「っ・・・」


 正直に言って、驚きました。

 確かに生産職は、ある程度の材料を持っているのですが・・・。

 それを生産職では無いこの方が知っているのはどうしてでしょう?


「・・・確かにそうよ。でも、どうしてあなたが知っているのかしら?」

「え?だってそうじゃないとバランスが悪いから、かな?」

「・・・・・・!」


 なるほど、確かにそうですね。

 アリアさんも理解したようで、得心いった顔をしています。


 戦闘色の方たちがいきなり戦闘が出来るのに、生産職がそうでないというのは、色々問題が起こりそうではあります。

 ですが、その事実にすぐに気づくのは、凄いとしか言えませんね。


 結局アリアさんは、杖を作ることを了承しました。

 貴重な初期素材ではあります。

 ですが、それを使って作成するに相応しい人だという判断なのでしょう。

 生産職としては、是が非でも繋がりを作っておきたい人だと、私も思います。


「・・・ただ、初期の所持金では払えないと思うわよ?」

「それなら大丈夫!きっとお兄ちゃんが稼いで来るから!」

「・・・そう。なら、早速始めるわ」


 アリアさんはそう言うと、借りている工房の奥へ入って行きました。

 赤い髪の彼女、ミレアさんは、適当な事を言っている訳では無さそうです。

 信用できそうな人でもありますし、問題は無いと思います。


 ミレアさんのお兄さんと言うのは、どんな方なのでしょう。

 きっと良い人なんだということは、ミレアさんの表情から分かります。



 私も工房へ入って、制作の為の下準備をしておきます。

 途中でレベルも上がりまして、もう少しで終わりそうです。


 と、その時、杖を渡しに行っていたアリアさんからお呼びの声が。

 ああ・・・!

 もう少しで終わるので、少しだけ待ってください・・・!


 ・・・大変失礼なことをしましたので、反省しなければなりませんね。




 準備を終えて、工房の入口へ向かった私。

 そこで待っていたのは、紛れも無く、あの男性。


 少し青色が入った髪と瞳ですが、間違いありません・・・!

 何故もっと早く出てこなかったのでしょうかっ・・・!


 私は、胸の鼓動が跳ねる音を、聴いたような気がしました。

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