異世界転生？ いいえ、チートスキルだけ貰ってVRMMOをやります！

１章

１ プロローグ

「お主は死んだっ！！」

「どういうことっ！？」


　いきなり死亡完了宣告をされて動揺し、思わず聞き返してしまった。

　一面真っ白な空間で深呼吸をして落ち着きを取り戻す。


「ふぅ・・・。それで、僕が死んだというのはどういうことですか？」

「それがの、お主は車に撥ねられて死んだんじゃよ」

「・・・記憶にございません」

「そんな駄目な政治家みたいなことを言っても無かったことにはならんぞ？」


　金髪の幼女が呆れたように言った。

　確かにその通りだが、本当に記憶に無いのだ。


「あの、本当に記憶に無いのですが・・・」

「む？それなら、事故のショックで忘れておるんじゃろう」

「はぁ・・・そういうものですか」

「そういうものなんじゃ」


　死んでしまったのが事実だと認識して、僕は膝を着き、うな垂れる。

　
「むぅ・・・そんなに落ち込むでない」


　金髪幼女は心配して励ましてくれるが、余りの悲しさに、立ち直れない。

　藤堂飛鳥、一生の不覚。


「あぁ・・・新発売のVRMMOが出来ないまま死ぬなんて・・・！」

「心残りはゲームっ！？心配して損したぞっ！」


　金髪幼女はプンスカと怒ってしまった。

　そういえば、目の前の幼女は何者なのだろうか。


「今更ですが、あなたは何者ですか？」

「む？我は神じゃよ」

「・・・なるほど、痛い人か」

「痛い人ちゃうわっ！？」


　更に怒ってしまった。

　解せぬ。


「それで、何故僕はここに居るのでしょうか？」

「そ、それはの・・・」

「それは？」

「・・・お主を間違えて死なせてしまった故に、お詫びをと思ったんじゃ！」

「よし分かった。ちょっとお話しようか」

「あっ、待つのじゃ！悪かったとは思って・・・ウギャーッ！！」






　金髪幼女に制裁を下した。

　言いにくそうにしていると思ったら、とんだことを聞かされたものだ。

　基本は温厚な僕でも、流石に許せることではない。


「ふぅ。それで、お詫びと言うのは何なんだ？生き返れるのか？」

「うぅ・・・。急に口調と性格が変わったぞ・・・。あ、生き返るのは無理じゃの」

「そうなんだ。やっぱりゲームは出来ない運命か・・・」

「本当に申し訳ない・・・」


　まあ、落ち込んでいても仕方が無いか。

　そういえば、結局お詫びと言うのは何なんだ？


「そのことはもういいよ。わざとじゃ無いのは伝わって来たから。それより、お詫びについて詳しく教えて？」

「お主、良い奴じゃのう・・・。お詫びと言うのは、ズバリ、異世界転生じゃ！」

「おおーっ」


　正直言って、相当驚いている。

　異世界転生と言うのは実在するようだ。

　てっきり、物語の中だけの話かと思っていた。


「さらに！チートスキルを二つまで与えることが出来るんじゃ！」

「おおっ！それは助かるよ！」

「そうじゃろ！？」


　無い胸を張って威張る幼女。


「さあ、このルーレットにダーツを二本投げるのじゃ！」

「このダーツ・・・どこかで見たような・・・？」


　車が当たるダーツに似ている気がするのは気のせいだろうか？


「つべこべ言っとらんで、早く投げんとチートスキル無しになってしまうぞ！」

「ちょっ！？それは困る！・・・それっ！」


　僕は一本目のダーツを投げた。

　当たったのは・・・加速？


「一つ目は、ユニークスキルの加速じゃな！中々良いスキルじゃぞ！」

「そうなんだ。ここで試すことは可能なのか？」

「それくらいなら可能じゃよ。とりあえず、早く二本目を投げるんじゃ」

「了解。・・・ハッ！」


　二本目のダーツが当たったのは、瞬間再誕。

　名前からして、生き返れるスキルだろうか。


「二つ目は、瞬間再誕・・・？はて、こんなものは無かったはずなんじゃが？」


　幼女が頭を捻っている間に、僕は二つのスキルに関する情報を整理した。

　加速は、身体的な加速と、思考的な加速の二種類があるスキル。

　瞬間再誕は、最後に死んだ場所へ、無傷の状態で復活できるスキル。

　ただし一度だけの使い捨てらしい。


　待てよ？このスキルを今使ったら、事故現場に復活できるんじゃ？

　そうと分かれば、早速、瞬間再誕を使用だ。


「むむむ・・・ん？・・・なっ！？瞬間再誕を使用したのかっ！？」

「そうだよ。じゃあ、そういうことで」

「あっ、待つのじゃっ！」


　次の瞬間、アスカの魂はその場から消えてしまった。


「なんてことじゃ・・・。いい子じゃったし、我に責任は無いから、まあ良いか」


　金髪幼女はそう考え、すぐに立ち直ってしまった。

　それでいいのか、神様。


「それにしても、何故あんなスキルが・・・。ああ、きっと先日、別の世界で神が死んだときのゴタゴタのせいじゃな」


　金髪幼女はそう呟くと、その場から消えたのだった。