異世界転生? いいえ、チートスキルだけ貰ってVRMMOをやります!

リュース

文字の大きさ
上 下
250 / 264
4章

249 空き陣地争奪戦?

しおりを挟む
 自慢げなミレアからフラッグの獲得方法を聞き出した。
 すると、目から鱗が落ちる驚きの内容だった。

 なにせ、フラッグが集まっている拠点を狙う、というだけの話なのだ。

 敵陣から一本ずつ、ちまちまと奪ってくるのではなく、大規模ギルドが近くの中小規模ギルドから集めたフラッグを、ポイントに変換される前に纏めて奪えばいい。

 実に見事な作戦だ。まさしく強奪。


「……それで? お前はこの大量の赤旗を、どのギルドから盗んできたんだ?」

「盗んだなんて人聞きが悪い。仕返しも兼ねて、ちゃんと《龍の咆哮》から取ってきたよっ」


 あ、頭が痛くなってきた……。
 まさか、一、二を争うほどめんどくさい相手に喧嘩を売るとは……。

 これ、絶対後で報復に来るよな……?

 リュウガの怒り狂う顔が脳裏に過ったので、個人戦よろしく殴り飛ばしておいた。


「はぁ……大量得点は喜ばしいことなのに、どうしてこんなに、頭が痛いのかしら」


 アリアさんがこめかみに手を当てて頬を引き攣らせている。

 全くもって同意見です。
 ホント、ウチの妹がすみません。

 いや、ポイント自体は嬉しいし、頑張ったミレアのことはちゃんと称賛するよ?
 でも、後の苦労を考えると……素直には褒められないのだ。

 それと、報告・連絡・相談くらいはしてほしかった。


「ミレア。今日のお前の夕食は、生のままのほうれん草&ゴーヤだ」

「!?」


 とにもかくにも、今から三十分……厳密には二十五分ちょっと守り抜けば、手元にあるフラッグが52ポイントに化けるわけだ。

 ちなみに、彼女たちは『ウィーンフライト連合』からもきっちり旗を奪ってきている。
 というか、レインとミア、シエラの三人は、イウェスティアの町まで赴いていない。《龍の咆哮》を襲撃したのはミレア一人だけだ。風魔法で加速できるからって、随分と足が速い。

 そも、ミレアの計算が完璧すぎるんだよな。

 敵城の構造および配置、要する戦力からの行動予測。
 敵の行動予測を前提に、どのタイミングでどこに旗が集まるかを推測し、ありうべき膨大なパターンのすべてを把握。
 自らの移動速度や追撃の可能性、ボスの性格なども勘案し、それらのパターン中から低リスクとなる襲撃先を選択する。

 ……やっぱり、僕の妹は尋常でなく頭がいい。

 ……昼食のゴーヤを減らしてやろうかね。


『――競技開始から二時間五十五分が経過。こちら、司会進行役のシステマです!』


 空からシステマの張り気味な声が響いてきた。
 運営アバターの姿は見えないが、どこかしらの空に居るのは間違いない。

 だが、なぜこのタイミングで?
 開始から二時間五十五分って、やけに中途半端な時間帯だよな?


『五分後、現実時間十三時より、空き陣地争奪ランダムバトルを執り行います!
 詳細につきましては、大会専用システムに追加された新項目をご覧ください!』


 さあ昼食をいただこう、というタイミングで、これか。


―――――――――――――――――――――――――――――――
『ギルド対抗「攻城戦」開催中!』 <残り二十一時間四分>

 ・参加ギルド 302ギルド
 ・残りギルド 270ギルド/302ギルド

 ・獲得フラッグ0 喪失フラッグ0
 ・獲得ポイント0 喪失ポイント0

 ・総合ポイント0

 ・広域マップ確認
 ・周辺マップ確認《ウェザリア》
 ・空き陣地争奪戦 ←New! 
 ・―――――
―――――――――――――――――――――――――――――――


 システムメニューを開いてみると、『――』になっていた位置に文字が書きこまれていた。指でタップして概要を表示する。


『空き陣地争奪ランダムバトルマッチ 十ヶ条』

 ・ギルドの脱落により空いた陣地を奪い合うゲームを行う
 ・ゲームの勝者には空き陣地の獲得権利が発生する(選択順はゲーム順位に依存)
 ・ゲーム内容については、参加してのお楽しみ(開催タイミングは五分前に告知)
 ・ゲーム会場は時間の加速なされ、ゲーム後に外へ出ると十分が経過している
 ・ゲーム内でHPがゼロになると、ギルド戦から脱落(ギルドマスターを除く)
 ・空き陣地を所持すると、陣地一つにつき三十分ごとに1ポイント獲得できる
 ・獲得した空き陣地は、本拠の城砦と同じく青で表示される
 ・青陣地を頂点とした線分および図形上は、本拠内と同じく回復速度が上昇する
 ・青線分・図形上の敵対ギルドはフラッグ獲得によるポイント加算が行われない
 ・獲得された空き陣地は、陣地内に設置された像を破壊することで奪取可能


 ……ややこしいルールだが、概ね理解できた。

 現在、僕たちが居る本拠の城砦⇒A
 自分たちが獲得して、青く表示された空き陣地⇒B~D
 敵対ギルドの本拠となる城砦⇒Z

 このように仮定すると、
 以下の状況下でZのギルドはフラッグポイントが獲得できなくなる。


 A――Z――B


 A―――――B
 |   Z |
 | Z   |
 |   Z |
 C―――――D


 頭を悩ませるシエラへの説明用に描いた図だが、中々いい出来だと自負している。


「あと二分でゲームが始まるみたいなんだが……どうする?」


 見張り台の近くに出現した、緑の光が吹き上がる転移ゲートを指して尋ねた。

 まさか全員で参加するわけにもいくまい。
 ゲーム中も外の攻防(フラッグの奪い合い)は続くのだし、HPがゼロになればギルド戦から脱落となってしまうのだ。
 

「ゲームをやりたい人、挙手っ!」

「「「「「……」」」」」


 ――沈黙が辺りを支配した。

 やはり、最初は誰でも二の足を踏むよな。
 ゲーム内容が分からないうえ、脱落の危険があるなんて、並の心臓では立候補できないだろう。
 
 しかし、実際にやってみなければ、危険度や難易度の情報は手に入らないし、参加したギルドに情報面で後手に回ることになってしまう。
 どうしたって、生贄の羊が必要になるのだ。

 ……仕方ない。


「誰もいないなら、僕がやろう」


 やむをえないとばかりに、僕は右手を上げた。


「……待って。アスト兄ばかりに危ない役はやらせられないよ。私がやる!」

「アストさん……。私もミレアと同じ気持ちです。自信はありませんけど、私がやります……!!」


 続けて、ミレアとレインが、僕を思いやって名乗りを上げる。


「……三人ともダメ。一番弱い私が参加すべき」

「いいえ。負けても脱落にならない人がやるべき仕事よ。私に任せて頂戴?」


 ミアとアリアさんも、意を決したように傘下の意志を告げた。


「うぅ……こうなったら、私も立候補するよ!」


 一人残されて孤立したシエラが、破れかぶれになってそう叫んだ。

 ……はっはっは。


「よし分かった。シエラがやるんだな。生贄役を押し付けてすまないな。それじゃあ行ってみようか!」

「え、ちょっ……!?」


 僕はミレアとともに、暴れるシエラを羽交い絞めにし、転移ゲートの前まで連行した。
 ミレアはノリノリだし、ほかの三人は状況の変化についていけないのかポカンとした表情だ。

 残念だったなシエラ。
 これはお約束というやつなのだよ。
 昔、両親が何気ない流れでこのネタをやり、僕もミレアもその犠牲者となったのだ。

 思い出すのはとある夏の日。
 なぜに、まだ幼かった僕が、銃を持った銀行強盗を説得せねばならなかったのか、今でも分からないままだ。

 ……僕が危なくなったら、あっという間に助けてくれたんだろうけどね。
 何だかんだで、あの時の一件はいい経験になったし、文句はない。


「――とまあ、詳細は省くが、シエラが参加しなければならないんだ。理解したか?」

「詳細を省かれたら何も理解できないけどっ!? というか、私の体勢、すっごく恥ずかしいことになってるよね!? お願いだからやめてってば! やめないとハラスメントコード使っちゃうよ!?」

「「またまた、ご冗談を」」

「今の私のセリフのどこに冗談ととられる要素があったの!?」


 さて、お遊びはここまでにしようか。
 羞恥で真っ赤になったシエラを解放し、ミレアから預かっていたものを返す。


「そんじゃ、留守番よろしく」

「うん! いってらっしゃい、アスト兄っ!」


 右手でミレアとハイタッチをかわし、参加者が締め切られる数秒前――僕はゲートへ飛び込んだ。




―――――――――――――――――――――――――――――――
『ギルド対抗「攻城戦」開催中!』 <残り二十一時間>

 ・参加ギルド 302ギルド
 ・残りギルド 270ギルド/302ギルド

 ・獲得フラッグ0 喪失フラッグ0
 ・獲得ポイント0 喪失ポイント0

 ・総合ポイント0

 ・広域マップ確認
 ・周辺マップ確認《ウェザリア》
 ・空き陣地争奪戦
 ・―――――
―――――――――――――――――――――――――――――――

しおりを挟む
感想 715

あなたにおすすめの小説

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった

Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。 *ちょっとネタばれ 水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!! *11月にHOTランキング一位獲得しました。 *なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。 *パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

処理中です...