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「弦楽四重奏曲 第15番」 ベートーヴェン

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<タイトル>

弦楽四重奏曲 第15番 イ短調 作品132

<作曲者>

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン

<おすすめ盤>

アルバン・ベルク弦楽四重奏団(旧盤)

<解説>

 ベートーヴェンの創作活動の後期に分類される弦楽四重奏曲のひとつです。

 全5楽章で書かれており、真ん中の第3楽章には「病癒えたる者の神への感謝の歌」という、作曲者自身による頭注が記述されています。

 これには有名なエピソードがあって、1825年の4月、この曲の第2楽章までを書き終えたベートーヴェンは、持病の腸炎が悪化して病床に臥せってしまいます。

 しかし翌5月には奇跡的に開放へ向かい、さらに6月から作曲を再開しています。

 そこで、次に来る第3楽章をそのようなコンセプトで書いたというわけです。

 この楽章だけで20分近くあり、長大ですが感動的な音楽で、先のエピソードを含め、この曲を特に有名にするきっかけになりました。

 個人的には第1楽章のコーダ(終わりの部分)が「敢然と立ち向かう」的でかっこよく、また第2楽章はモーツァルトの音楽を想起させるほがらかなものになっていてたいへん興味深いです。

 後半はどこかストーリーっぽくなっていて、第4楽章は最初はうきうきとした感じではじまるのですが、突然暗雲が立ち込める的なムードになり、続けざまに演奏される第5楽章は「つたたた~、つたたた~」という特徴的な三拍子系のリズムの上にドラマティックな旋律が乗っかってきます。

 なんだか昼ドラ的な場面を描写しているようで面白いです。

 おすすめのアルバン・ベルク弦楽四重奏団はベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集を二回も録音しており、その旧盤のほうになります。

 「第14番」の回でも書きましたが、この旧全集は綿密に準備を重ねた上でのスタジオ録音になっており、個人的にはライブ録音による新全集よりも好きだったりします。

 全体としても長大な楽曲ですが、晦渋にすぎるというわけでもありませんので、一度挑戦してみるのはいかがでしょうか。

 秋の夜長には特にもしみますよ。
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