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第3章 ウツロ VS 万城目日和
第55話 万城目日和の正体
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「やはりおまえだったのか、万城目日和の正体は……!」
姿を現した影。
それはウツロのよく知る人物だった。
「柿崎、まさかおまえが万城目日和だったとはな……」
柿崎景太。
ウツロとは同じクラスのやんちゃ坊主だ。
しかしその顔は、普段の彼とはむしろ真逆な、殺意に満たされたものだった。
眼光はナイフのような鋭ささえ持っている。
「よう、佐伯。どうしてわかった?」
「……」
「彼」は腰に手を当ててウツロにたずねた。
「鼻のいいおまえをだまくらかすのに、相当気を使ったんだぜえ? 教えてくれよ、どうして俺が万城目日和だってわかったんだ?」
「これさ」
ウツロはブレザーの懐から端末を取り出した。
「聖川に確認を取ったんだ。なぜ彼が旧校舎に来たのか、ずっと気になっていた。聖川が言うには、古河先生から俺を探してくるように頼まれたとのこと。そして話の筋から、そう誘導したのが柿崎、つまりは万城目日和、おまえだということだ」
「ふん」
柿崎景太、いや万城目日和は顔をゆがめて笑った。
「刀子と氷潟がいきなり真田を拉致ったからな。俺もけっこう焦ってさ。で、ボロが出ちまったってわけだ。は~あ、俺もまだまだだぜ」
手を振ってあきれるしぐさをする。
「なぜこんなことをした?」
ウツロの問いかけに、万城目日和は目玉をギョロッとさせて向き直った。
「なぜ? おまえいま、なぜって言ったか? おまえが一番よくわかってるだろ、佐伯? いや、毒虫のウツロ? てめえの親父、似嵐鏡月は俺の親父、万城目優作をぶっ殺した。親父はな、あのくそったれな黒彼岸で、どたまをかち割られたんだぜ? まだ小学生だった、俺の目の前でな。どう思う? 目の前で肉親をザクロにされる気分が、てめえにわかるか? てめえみてえな悲劇のヒーロー気取りのクソ野郎に? あのとき以来、俺の人生はめちゃくちゃだ。俺は生きるために、必死であいつから技を盗んだ。てめえの親父をこの手で直々にぶち殺すためにな。どう思う? 親の仇を取るために、親の仇から殺人術を習ったんだぜ? なあ、どう思う? どう思うよ? ウツロおおおおおっ――!」
「……」
天を仰いでの咆哮。
その叫びは倉庫のいたるところを震わせた。
何も言えない、言えるわけがない。
ウツロにはかける言葉など見つからなかった。
ひとしきり吠えると、万城目日和は深呼吸をした。
「わりい、つい感情的になっちまった。まあ、正直言って、いまさらどうでもいいんだよ。過去が変えられるわけじゃねえしな」
「……」
ウツロは黙して万城目日和を見つめていた。
「だがな、これだけは言いたいんだ、あえてな。ウツロよ、聞いてくれるか? 俺の話」
静かな、しかし強いまなざしが彼に刺さった。
「言ってくれ、万城目日和。俺にはそれを聞く義務がある」
そう返した。
「はっ、義務か。真面目なんだな、おまえ。損するぜ? そういう性格はよ」
「いいから、おまえが言いたいことを言ってくれないか?」
「ふん、じゃあ、言うぜ?」
万城目日和は姿勢を正した。
その双眸にはどこか、凛とした風格がたたえられている。
「ウツロ、俺の人生を、返せ」
姿を現した影。
それはウツロのよく知る人物だった。
「柿崎、まさかおまえが万城目日和だったとはな……」
柿崎景太。
ウツロとは同じクラスのやんちゃ坊主だ。
しかしその顔は、普段の彼とはむしろ真逆な、殺意に満たされたものだった。
眼光はナイフのような鋭ささえ持っている。
「よう、佐伯。どうしてわかった?」
「……」
「彼」は腰に手を当ててウツロにたずねた。
「鼻のいいおまえをだまくらかすのに、相当気を使ったんだぜえ? 教えてくれよ、どうして俺が万城目日和だってわかったんだ?」
「これさ」
ウツロはブレザーの懐から端末を取り出した。
「聖川に確認を取ったんだ。なぜ彼が旧校舎に来たのか、ずっと気になっていた。聖川が言うには、古河先生から俺を探してくるように頼まれたとのこと。そして話の筋から、そう誘導したのが柿崎、つまりは万城目日和、おまえだということだ」
「ふん」
柿崎景太、いや万城目日和は顔をゆがめて笑った。
「刀子と氷潟がいきなり真田を拉致ったからな。俺もけっこう焦ってさ。で、ボロが出ちまったってわけだ。は~あ、俺もまだまだだぜ」
手を振ってあきれるしぐさをする。
「なぜこんなことをした?」
ウツロの問いかけに、万城目日和は目玉をギョロッとさせて向き直った。
「なぜ? おまえいま、なぜって言ったか? おまえが一番よくわかってるだろ、佐伯? いや、毒虫のウツロ? てめえの親父、似嵐鏡月は俺の親父、万城目優作をぶっ殺した。親父はな、あのくそったれな黒彼岸で、どたまをかち割られたんだぜ? まだ小学生だった、俺の目の前でな。どう思う? 目の前で肉親をザクロにされる気分が、てめえにわかるか? てめえみてえな悲劇のヒーロー気取りのクソ野郎に? あのとき以来、俺の人生はめちゃくちゃだ。俺は生きるために、必死であいつから技を盗んだ。てめえの親父をこの手で直々にぶち殺すためにな。どう思う? 親の仇を取るために、親の仇から殺人術を習ったんだぜ? なあ、どう思う? どう思うよ? ウツロおおおおおっ――!」
「……」
天を仰いでの咆哮。
その叫びは倉庫のいたるところを震わせた。
何も言えない、言えるわけがない。
ウツロにはかける言葉など見つからなかった。
ひとしきり吠えると、万城目日和は深呼吸をした。
「わりい、つい感情的になっちまった。まあ、正直言って、いまさらどうでもいいんだよ。過去が変えられるわけじゃねえしな」
「……」
ウツロは黙して万城目日和を見つめていた。
「だがな、これだけは言いたいんだ、あえてな。ウツロよ、聞いてくれるか? 俺の話」
静かな、しかし強いまなざしが彼に刺さった。
「言ってくれ、万城目日和。俺にはそれを聞く義務がある」
そう返した。
「はっ、義務か。真面目なんだな、おまえ。損するぜ? そういう性格はよ」
「いいから、おまえが言いたいことを言ってくれないか?」
「ふん、じゃあ、言うぜ?」
万城目日和は姿勢を正した。
その双眸にはどこか、凛とした風格がたたえられている。
「ウツロ、俺の人生を、返せ」
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