無理です!!。乙女ゲームのヒロインからの正統派ライバル令嬢なんて務まりません! 残念JK残念令嬢に転生する

ひろくー

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落とすなは落とせではない。

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「死罪?いいえ、カイル様はそんな事はなさらないわ。」
「やっぱり鞭打ちですか~?」
「そんな事はなさいません」
「背負投げても?」
「背負い?」
「巴投げっても?」
「とも?」
 落とし穴の底で自分を手招きするヒロインざまぁルートの幻覚に怯えるアリスの意味不明な質問に困惑したグレースはコーネリアと顔を見合わせる。コーネリアはスッとアリスの傍らに膝を付き寄り添うと優しくアリスの肩を撫でた。
「アリス、知っていて?本当にダンスの上手な方のリードですと全く踊れない人でも踊れてしまうのよ。カイル様はとてもダンスが上手なの。そんなに不安にならないで」
「そっ…そうでしょうか…」
 確かにゲームのキャラクター紹介の中にもダンスが上手いという下りがあったような。
 コーネリアの言葉にアリスは少し顔を上げ、そこに歴代のダンスに自信有り男達との惨劇が甦えるアリス。
「やっぱり無理です~っ」
 両手で耳を塞ぎぎゅと目を閉じ小さく丸まるアリスにグレースとコーネリアは目を見合わせ、
 スッ。
 だんご虫アリスの上に黒い影が差す。
 闇の中に逃げ込んだアリスにも解る上方からの強い圧に、
「……」
 アリスは恐る恐る細~く目を開ける。
「……」
 腰に手を当てたクラリアが目だけ笑っていない笑顔でアリスを見下ろしていた。
 バッ。
 次の瞬間、アリスはその場で正座していた。そのアリスの前にしゃがみ込むとクラリアはポンとアリスの肩に手を置いた。
「アリス、貴方は何故ここにいるの?叶えたい夢があるのではなくて?」
「夢…」
 クラリアの問い掛けにアリスは天井を見上げる。そこにはアリスの夢、クリラブ2のゲームスタート地点、魔法省の正門前に立つアレクの姿があった。アリスを見てにっこりと優しい微笑みを浮かべるアレク。差し伸べられた手と輝く笑顔にアリスは手を伸ばしていた。
 アリスの耳元でクラリアは囁く。
「クリラブ2でライバル令嬢として推し活するのは諦めるの?」
「それは無理な相談です」
 アレクの幻影を凝視したままアリスは答える。ゆっくりと頷いたクラリアはポンポンと優しくアリスの肩を叩いた。
「このイベントはキャンセル不可よ。クリアする以外は先に進めない。夢は潰えてしまうわ」
「潰える…」
 伸ばした手の先でアレクの優しい眼差しが揺らぎ、色を失っていく。
「…」
 ひしっ。
 アリスはクラリアの腕に取り縋った。
「どうすれば、どうすればクリア出来ますか?!」
「踊るのよ、アリス」
「それが出来れば苦労しませ~んっ」
 絶望するアリス。クラリアはにっこりと微笑みを浮かべる。
「これは舞踏会イベントをクリアする為に必要なミニゲームよ。そう、○ンレボよ」
「ダ○レボ?」
「ダンスゲームよ。イージーモードでクリア。それで良いの。誰もパーフェクトに踊れなんて言ってはいないでしょう?踊った感があれば、踊った体裁が整えば、それだけで良いのよ?」
「踊った感…、体裁を…」
「ええ、イージーモードで最初に一回、最後にもう一回、たった二回。二回それ風に振る舞うだけで良いのよ。残りは群がるモブ令嬢達にお任せ仕様♪」
「たったの2回…」
「それでイベントクリア。先に進めるわ。しかもカイルルートは他のルートではサラッと飛ばされるカイル王太子のファーストダンスシーンがガッツリ見れるわよ、アリス。ちょっと位足を踏むのはこのイベントではセーフだし」
「ちょい踏みはセーフ…」
 大きく深呼吸したアリスは拳を握りしめると小さく頷いた。
「はい、頑張ります。必ずクリアしてみせます」
 推しへの愛は全てを救う。アレク様に逢う為にここが踏ん張り所だ!カイル王太子のファーストダンスも見れるし。
 覚悟を決めるアリスにすかさずコーネリアがフォローに入る。
「そうよ、アリス。クリスマス舞踏会迄まだ日があるわ。練習を頑張りましょう」
『カイル様の足なら踏んでも良くてよ、アリス』
 アナベル&セシルもフォロー?を入れる。
「うん、頑張る」
 コクコク頷きながら自分に言い聞かせているアリスに、クラリアは立ち上がりながらアリスに見えないよう溜め息をついた。
 単純な子で助かったわ。
 そこにスッとさり気なくクラリアの横に立ち小さな声で呟いた。
「ダンス練習用人形で大人が使える物がないか、私が探してみますわ」
「…私は練習相手の防護品を差し入れようかしら」
 クラリアとグレースは、コーネリアに励まされアナベル&セシルに唆されて何とか覚悟を保っているアリスを見た。
「王太子殿下がアリスをパートナーに選ぶとは想定外だったわ。てっきり王領の伯爵令嬢かクエーレ領の侯爵令嬢辺りだと思っていたのに」
「そうね、でも良い選択だと思うわ。どちらの角も立たない人選ですもの」
「確かに。でもこうなると少し責任を感じるわ。この事態は我が家が王家との程よい距離感を出そうとした為に生じた完全なとばっちりだから」
「…そうね、私達でしっかりアリスをフォローいたしましょう」
 グレースはそう言ってクラリアににっこりと微笑み掛ける。それに笑顔で応じたクラリアは改めてアリスを見た。
 クリスマス舞踏会でカイル王太子から距離を取る為にパートナーを避ける。はめフラ回避の行動がこんな形でイベントに影響するとは思わなかった。しかもヒロインがダンスの才能壊滅的とか想定外が過ぎる。その上ライバル令嬢二人の手厚いバックアップでクリスマス舞踏会イベントにヒロインが挑むとか、…ゲーム進行的にどうなのよ?ライバル令嬢がパートナー拒否るとヒロインにパートナー役が自動で転がり込むとか、どういうゲーム設定なのよ。
 クラリアは少し焦点の定まっていない瞳でコクコク頷き続けるアリスに、
 ゲームアリスは王太子のパートナーに選ばれてバラ色舞踏会だったけどな。何でこんなヒロイン土気色展開になるかな?

 

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