無理です!!。乙女ゲームのヒロインからの正統派ライバル令嬢なんて務まりません! 残念JK残念令嬢に転生する

ひろくー

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やっぱりオタ活が好き

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「はあ…」
 数日後、アリスの元に寮長からの今週末のお茶会の招待があった。ランチで混み合う校舎の食堂の一角でアリスはどんよりどよどよしていた。山盛りランチを食べても全く心の晴れないアリス。そのアリスの向かい側の席でユリアンヌとサーシャがアリスと同じくどんよりとしていた。
 寮長のお茶会の招待は二人にも届いていた。一瞬、ザマァと思ったアリスではあったが自分が出席する事は変わらない事にすぐ気付いた。
 気が重い。何とかしてくれるのではと期待したクラリア様は「良かったわね」の一言だけ。ううっ、パンケーキセットを追加で気も晴れるかしら。
 ランチも残し気味のユリアンヌとサーシャとは真逆の、満腹感で気分を癒そうとするアリス。
「アリス~」
 そこにノーラと非公認サークル?メンバーのエリアナ・エバンとアイシャ・ストラマーがランチプレートを手にやって来た。二人はCクラスの生徒でエリアナは子爵家令嬢、アイシャは近隣の友好国からの留学生で家はそこそこの貿易商。二人揃ってアリスのショートストーリー風イラストにドハマりした生徒で、アリスよりも絵が上手なエリアナは何故か配布用イラストの枠線引きや背景等アシスタント的な作業を手伝う様になり、アイシャは趣味の手芸の技術を活かしてチビキャラのぬいぐるみマスコット制作等を始め人気となっていた。
 三人はアリス達の席の隣りに座ると半分も食べられていないユリアンヌとサーシャのプレートと空になったアリスのプレートを見て顔を見合わせた。ノーラはユリアンヌとサーシャに、
「ちゃんと食べないと週末のお茶会まで保たないわよ」
 と声を掛け、エリアナとアイシャはアリスに、
「食べ過ぎも良くないわ」
「寮長様のお茶会の粗相は取り返しがつきマせん」
 三人の的確なアドバイスにユリアンヌとサーシャは再びフォークを手にして、アリスはパンケーキセットを諦めた。そして皆はランチを食べ始め、既に食べ終えていたアリスはコップの水を飲んではあ…と溜め息をついた。
「あぁ、週末どうしよう…」
「ドんと当たって砕けろでス、アリス」
「砕けたら駄目よ、時の流れに身を任せるのよ、アリス」
 イラストを通して親しくなったエリアナとアイシャも中庸を絵に描いた様な容姿と性格と立ち位置の背景モブ令嬢。
 だからかしら、落ち着くわ~。
 クラリアやグレースといったメインキャラクターと一緒だと気を張り過ぎて疲れてしまうヒロインアリスはモブ令嬢の中に埋もれて過ごすのんびり昼下がりに心の底からくつろいでいた。
 喪女ルートを選択しているのだからこれは正しい行動。けして怠けて入るんじゃないもん。
 理論武装も抜かりないアリス。
「ねぇアリス、同じクラスの子に新しいイラストはいつ出るの?って聞かれたんだけど」
 と言いつつも一番気になっているのは自分という顔のエリアナにアリスはんーと唸った。
 グレース様に頼まれたアラン様のイラストの下準備があるからな~。
 イラストを描いて持って行くとクラリアはとても喜んで出来栄えを褒めて御褒美オヤツも出てくる。がクラリアの目的はイラストの中の情報だ。対するグレースはアリスのイラストが純粋に目的でキラキラの笑顔の御褒美スチル付き。
 やっぱ、喪女ルート特別スチルを可能な限り回収したいなぁ~。
「アリス?」
 怪訝そうなエリアナの声にはっと我に返ったアリスはエリアナに真面目な顔で言った。
「エリアナ、前にも言ったけど自分で描いてもいいのよ。別に私に著作権が有る訳でもないし皆で自由に描けばいいじゃない」
 が、エリアナは前と同じ様に首を横に振った。
「とんでもない、私にはアリスが描くようなあんな素敵なイラストは掛けないわ」
「そんな事はないって」
「無理よ、私には無理っ」
 頑なに固辞するエリアナにう~むとアリスは首を傾げた。
 どうしてだろう。私より絵が上手いのに。貴族令嬢的に見るとはしたないとか?親に怒られるのかな。
 この世界でも貴族夫人で小説を書いて発表したり絵を描いてサロンを開く人はいる。があくまで品の良さが求められる。平民の中で流行っている娯楽性の高い物や下世話な低俗な物はあくまで貴族は眉をひそめて嗜まないとされる、表立っては。
 貴族って大変だなぁ。描きたい物を描けないなんて。
 やれやれとアリスは心の中で肩をすくめた。
 確かにアリスよりエリアナの方が絵の技術は高い。しかしエリアナが自分には描けないと言っているのはその点ではなかった。アリスはイラストを描く時の題材をクリラブのゲームスチルを参考にして描いていた。そこには本来のゲームの盛り上げ要素が何気に含まれていた。
 父を尊敬し次期王としてパーフェクトであろうとするカイル。その陰で人知れず苦悩するアラン。家庭に問題を抱え憂いのあるウェイン。兄を亡くし嫡男としての重圧に強くあろうとするアーサー。等々、萌え萌えのドラマ性をイラストの中に敏感に感じ取ったオタ系令嬢方が妄想を膨らませ、アリスのイラストに夢中になっていたのだ。
 が、アリスはその事に全く気付いていなかった。
「あのイラストはアリスにしか描けマせんに私も一票デすよ~♪」
「ね~♪早く新作が見たいなぁ~」
 口を揃えるエリアナとアイシャにそ~お?と満更でもないアリスはスケジュールを再度頭の中で確認する。しかし、
「やっぱり描く時間は取れないなぁ」
 アラン様の張り込みにどれ位掛かるか判らないもん。
 きっぱり言うアリスにエリアナとアイシャは顔を見合わせ、アイシャは頷くとにまっと笑顔で脇に置いていたバッグからあるモノを取り出した。それを見たアリスの目が見開かれる。
「こレはアリスの理想の男性像様のぬいぐるみマスコットでスよ~」
 アリスの反応に満足そうな表情になるアイシャの手の中にあった物、それはアリスの推しキャラ、クリラブ2のアレクのチビアレクぬいぐるみマスコットだった。なんとアイシャは一度アリスがうっかりチラッと見せてしまっただけのチビアレクマスコットを作り上げていた。しかも通常版マスコットと違い細部にまでこだわった凝った造りになっていた。
 アリスはゴクリと生唾を飲み込むと食い入る様にチビアレクマスコットを見つめた。
 すすすす凄いっ。一度チラ見しただけなのに何なの、この再現度!ぬいチビアレク様、めちゃくちゃ可愛い!!しかもマジカル学園の制服を着ていらっしゃるなんてっっ。尊さがビックバン級じゃない~。ゲームには無かった激レア萌マスコットがいいいい今私の目の前にいいい。
 チビアレクマスコットから目を離す事が出来ず凝視し続けるアリスにアイシャがそっと囁やき掛ける。
「魔法省の制服も作りまシた。なンとお着替えが出来ちゃいマすよ~。どーでスか?創作意欲が湧きますデスねー?」
 アイシャの言葉にアリスはピョンと小さく椅子の上で飛び上がった。
 おおおおお着替え?!
 アイシャに言われた瞬間にアリスの頭の中に湧き上がったのは創作意欲では無く、まだ少年の面影を残したマジカル学園の制服に身を包んだアレクが魔法省の制服にお着替えする妄想ムービーだった。マジカル学園のジャケットを脱いだアレクはシャツのボタンを無造作にはずしていき鍛えられた細い体躯が露わになって……。
 は、はわわわわ…っっ。
 現役喪女。彼氏いない歴が前世今世合計年令と同じなアリスは妄想の限界を突破して、
”アリス、ハウスッ!!“
 その寸前でアリスの脳内でクラリアアラームが鳴り響いた。
 はっと我に帰ったアリスはギュッと目をつぶると大きく頭を振った。
 あっぶね~っ。また警備員に取り押さえられる所だった。アレク様のマスコットはそりゃあ凄く素晴らしいわ、でも。
 胸を押さえて深呼吸したアリスは、
「ありがとう♪凄く嬉しいっ。でもやっぱり描く時間は取れそうにないの」
 再度残念そうにしかしきっぱりと言うアリスにエリアナとアイシャは残念そうな顔でコソコソ話しを始めた。
「これならイケると思いましタのに」
「何がアリスを思い留まらせたのかしら」
「食べ物の方が良かっタですか~?」
「そうね、チョイスミスだわ」
 おーい、失礼極まりないぞ~。
 堕ちる寸前まで行った事は棚に上げ、不本意なアリス。
 そこに、
『アリス~、もしかして~?』
 横からユリアンヌとサーシャにノーラのかん高い声が飛んで来た。
 今度は何?!
 とアリスが振り返ると3人がナイフとフォークを手にズイッとアリスに迫っていた。
 新作を後回しにする腹いせに喰われる?
 恐怖を感じるアリスにサーシャはにまにま笑い、ユリアンヌはつんつんとアリスの脇腹を突っついた。
「白状なさいな、アリス。発表会のお声掛けがあったんじゃないの?」
『えっ?!』
 次の瞬間、周りのモブ令嬢だけでなく食堂の他のモブ令嬢令息達の注目もアリスに集まった。注目を集め慣れていないアリスはあわあわあわ。その間にも、
「すごいわ、アリス。一年生で発表会なんて」
「一年生では4番乗りよ」
「一番乗りはクラリア様方ヴァニタス姉妹よね。二年生で兄のウェイン様と合奏をなさるとか」
 ユリアンヌやサーシャ達は嬉しそうに盛り上がり、それに周りの生徒が聞き耳を立てている。
 いや。そのイベントないから。お声掛けスルーな残念ヒロインですまん。
 アリスとウェインのイベントが発生しないなコレはな状態なのでアリスは頭の隅に発表会を追いやっていたが、発表会は学校行事なので当然行われる。
 一芸に秀でた生徒が教師の推薦を受けて出る発表会。後学期が始まってすぐの行事の為に出る生徒は二年生が多い。が一年生にも声掛けがある。しかし今の時点ですでに4番目、乙女ゲームヒロイン的には微妙な順番。更にBクラスの生徒に声が掛かる事は稀だった。
 てゆーか、私に発表出来る様な一芸は無いし、詩の朗読で先生に褒められた事が無いし、そもそも何も褒められて無い。
 アリスはきっぱりと言った。
「勿論、お声掛けは無い!」
 何故か胸を張るアリスにアイシャはジーッと疑いの眼差しを向ける。
「デは何故にイラストを描かなイのデすか~?」
「それは、…学業が本分に決まっているからでしょ」
 グレースの為にアランを張り込むとは言えないアリスは咄嗟にもっともらしい言い訳を言ったが即座に全員に否定された。
『嘘おっしゃいっ!』
「この前、宿題を忘れて熊のを丸写しにしてたわね」
「うっ」
「しかもバレて宿題を倍に出されてたよね、熊を巻き添えにして」
「本当に悪かったと思ってる…」
「食べるだけで魔法が上手くなる魔法の実なんて話を真に受けて青唐辛子を食べた時は驚きを通り越してドン引きしたわ」
「いやー、一口であんなに辛いとは」
 てへっと笑うアリスを全員がじっと見つめた。
「……」
「……」
 アリスはポリポリと頭を掻くと、
「パンケーキセットを食べよっと!」
 アリスは脱兎の如くその場を逃げ出した。 

 
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