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クラリアパパSP 修学旅行編 〈憧れの魔法体験〉
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「いでよ、土ボコ、土ボコ、土ボコ~ッ!」
マジカルクリスタルランドに入場してクラリア達と合流したアリス達はクラリアの勧めるままに人気アトラクションや一休みにピッタリなスナックやドリンクを満喫した。
大人気アトラクション、暗い坑道をトロッコに乗って爆走するサンダートロッコマウンテン。大きな樽に乗ってモグラや精霊の可愛い人形が歌い踊るのを見て観て廻るイッツアクリスタルワールド。等を貴族特権で待ち時間0で楽しみ、合間にウキワマンなる(今だけツノ付き)所謂肉まんを戴いた後、びっくりミートを使った季節限定ランチをたらふく食べた。そしてアリス達は、クラリアの
「ショウスペースの演物は昨日家で観たから省略して腹ごなしに此方へ参りましょう」
と言う言葉に「魔法の森」マジックフォレストに向かった。
マジックフォレストとは魔具を使った魔法体験が出来るミニゲームが沢山揃った前世でいうゲームセンターの様な所だった。短めの魔法の杖(コントローラー)を手に雷の魔法で物を飛ばしたり、火の魔法で炎を操ったり、水の魔法で噴水の水を自在に操ったりとちょっとした魔法使い気分が味わえる。
ストーリーがあったり、点数を競ったり、ゲーム性が高く魔具と力学を応用した機械装置は結構リアルだと子供だけでなく大人にも人気がある。魔力が有る者にとっても他の魔力を体験してみたいと実は人気だ。ちなみに本物の魔法の発動に杖を使う必要は全く無い。
クラリアパパは5人分のゲーム専用のマイ魔法の杖を用意していた。水の魔法使いのアナベル&セシルは雷と火の魔法ゲームを、ルミアは片っ端から、クラリアは実は前世でもやり込んでいたシューティング系ゲームをチョイスして遊び始めた。アリスはというと、
「うわ~、どれにしよう。選べない~」
と様々なゲームを楽しむ人達を眺めながら初ゲームを吟味
してウロウロとマジックフォレスト内を歩き廻っていた。アリスは目に映る全てのゲームが魅力的だった。目移りしすぎて選べない。
どうしよう、アレもコレもやりた過ぎる~っ!この光の魔法メダルはゲームやり放題♪だし。
雷の魔法のゲームとあるがどう見てもクレーンゲームなゲームの景品に心を奪われかけたアリスはある1つのゲームに目が止まった。
あ。
その瞬間アリスは走り出していた。
土の魔法のゲーム「モグラ姫救出ゲーム」ちょっと広めの芝生のコーナーの手前にモグラ城、奥側に魔王の森があり、ゲームスタートするとモグラ姫が「魔法使い様、お城を守って」そして魔王の森から魔物やらゴーレムやらがわいてランダムに近付いてくる。それを杖を振るって魔物の手前の土をボコッと盛り上げてコケさせる。(コケると魔物は退場する)モグラ姫のいるモグラ城を騎士団到着まで守り抜くというゲームだ。
小さな男の子が杖を振るって土をボコッと盛り上げてゴーレムや魔物をコケさせていくのをアリスはキラキラとした瞳で見つめた後、すぐに順番待ちの列に並んだ。そして順番がきたアリスはモグラ姫の言葉に、
「よっしゃぁっ」
杖を構えて、
「いでよ、土ボコ、土ボコ、土ボコ~ッ」
杖を振るい魔物やゴーレムをコケさせまくった。そして無事にモグラ姫を守り抜き、
「お姉ちゃん、上手~♪」
すぐ後ろに並んでいた子供達の称賛を受けたアリスは笑顔で順番待ちの列の最後尾に並んだ。そしてそれをずっと繰り返していた。
何度目かの最高点を更新したアリスはよしっと小さくガッツポーズをしてまた列の最後尾に並んだ。そして晴れ晴れとした顔で順番がきた子供がモグラ姫救出ゲームで楽しく遊んでいるのを眺めた。
はー、まさか自分に土ボコする日が訪れるなんて夢にも思わなかった。あー、転生して良かった♪
憧れの土ボコ魔法を体験出来て感無量のアリス。
さっきモグラ姫に投げキスして貰っちゃたし、あの男の子が教えてくれた、一番上のラインを一歩以上進ませずにゲームクリアするとモグラ王が出てきて余の娘を娶りモグラ国の王にならぬかってスカウトされるって噂、本当か是非とも確かめたい。モグラ国の王様になるという事はすなわち!この筐体(業務用ゲーム機本体)を手に入れたという事、つまりゲーム機プレゼントなんじゃないの~!もう、王様ってば太っ腹♪
マイモグラ姫救出ゲームをGETする夢を思い描き、ぐふっ、ぐふっ、ぐふっと笑っていた。
それをクラリアが不安そうな顔で見つめていた。お目当てのゲームを一周りした後、飲食可能な休憩コーナーに向かったクラリアはそこでメイドの一人からアリスの異常行動の報告を受けた。クラリアが休憩コーナーにいるのを見て飛んできたアナベル&セシルもひとつのゲームをヘビロテするアリスに目を丸くしていた。
「確かに面白くはあるけど、そこまで?」
「土ボコって叫んでるけど、土ボコって何?お姉様」
今ではアリスだけでなくモグラ姫救出ゲームを遊ぶ他のチビッコ達も土ボコっと叫びながら杖を振っている。クラリアは二人の疑問に無言で首を振った。クラリアが一番思っていた。
土ボコって何?!前世用語だろうけど。悪役令嬢が普通だと主役のヒロインが問題児ってお約束、本当に止めて欲しい!ヒロインルートを爆走も困るけどコース外を暴走されるのも困るのよ。マジで止めろ。
が、クラリアのそんな気持ちには全く気付く事無くアリスは徐々に近付いてくる順番にワクワクと杖を握り締めていた。
「アリスー」
そこに声を掛けられ振り向くとルミアがジュースのカップをアリスに差し出していた。よく冷えたジュースを目にしたアリスは急に喉の乾きを覚えた。当然だ。呪文など唱える必要もないのにゲーム中ずっと土ボコと叫んでいたのだ。アリスはパアッと笑顔になると
「ありがとう、ルミア。美味しそう~」
とジュースのカップに手を伸ばす。が、ルミアはサッとカップを引っ込めてしまった。
「えっ?」
「休憩コーナー以外は飲食禁止よ、アリス。休憩コーナーに行こう。クラリア様方も一休みしていらっしゃるわ」
ルミアの言葉にアリスは休憩コーナーのクラリア達とルミアの手の中のジュース、そして順番待ちの列の中程まで進んでいるモグラ姫救出ゲームの土ボコを見た。
「でもぉ~」
モグラ姫救出ゲームから目を離せないアリスにルミアはチラッとクラリアを見て、スッとアリスの目の前に再びジュースを差し出した。反射的にアリスはジュースのカップを受け取るとそのまま、
「いっただっきま~」
と、飲もうとして、
ガッ!
その手前でカッブの上をルミアの手が塞いだ。
「もう、アリスったら小さな子達のお行儀が悪いわ。飲むなら休憩コーナーで。ゲームの順番待ちは私が代わるから行ってらっしゃい」
「本当?ルミア、我が心の友よ~っ」
「そういうのいいから」
「はーい」
一休みしたらまた土ボコろうっと♪
アリスはジュースを手にスキップで休憩コーナーヘ向かった。そこにはルミアからバトンを渡されたクラリアが仁王立ちで待っていたのだがアリスはそれに全く気付かず休憩コーナーに一歩入るなりジュースを一気飲み。ぷはぁと満足気な顔でひと息つくとカップを返却口に戻してそしてそのままアリスはモグラ姫救出ゲームに戻ろうとした。
「お待ちなさい、アリス」
そこに背後からクラリアの声。振り返ると優しい笑顔で、しかし目が笑っていない、アリスを見据えてた。
がしっ。
いつの間にか両脇にきたアナベル&セシルに引っ立てられ、アリスはクラリアの前に突き出されていた。
「なっ、何でございましょう?あの、モグラ姫を助けに行かなくてはいけなくてその」
アリスは理由は解らなかったがクラリアがご立腹なのは判った。恐る恐るお伺いを立てるアリスにクラリアは瞳以外笑顔で尋ねた。
「アリス、モグラ姫救出ゲームは楽しい?」
「ハイッ!」
アリスは即答していた。
「凄く楽しいですっ。ゲーム自体の出来も良いですし、なんと言ってもあの土ボコッ。あの再現度の高さはもはや芸術の域!土の魔法を持たない私があの土ボコを体験出来るなんてゲームクリエイターの方には感謝しかありません。足を向けて寢れません。朝晩祈りを捧げますっ」
熱に浮かされた様にまくし立てるアリスにアナベル&セシルはドン引き。離れて控えている警護役を兼ねたメイドが、取り押さえますか?と視線でクラリアに許可を求めてくる。
はぁとクラリアは心の中でため息をつくと、メイドに必要無いと伝え、アナベル&セシルに、
「アリスに何か甘い物、チョコレートとレモン水を持ってきてあげて」
『はい、お姉様』
メイドは脇に控え、アナベル&セシルはチョコレートとレモン水を取りに行き、一人取り残されたアリスは?近う寄れと人差し指で合図するクラリアにアリスは神妙な面持ちで身を寄せた。
「あのー、私、何かマズい事を…」
「したよね~。貴方は乙女ゲームの主人公、正統派ヒロインのアリスなのよ。アリスはオタク丸出しで周りをドン引きさせたり、取り押さえた方が良いかなと思わせたりしない」
「すみませ~ん、つい」
「ついって、そもそも土ボコって何?」
怪訝そうなクラリアにアリスの表情がパアッと明るくなる。
「あ、御存知なかったんですね。土ボコは私の大好きな悪役令嬢転生物のでレジェンドキャラクターの得意技です。足元の土をボコッと盛り上げてヒロインをコケさせるんです。これは大人気シリーズでコミカライズもアニメ化もされていまして…」
「オタ語りはやめいっ」
クラリアに一喝されアリスはしゅ~ん。
「言っている側からもう。一般人にオタク趣味は大きく語らないのが大人のオタクの嗜みなんでしょう?」
「従姉妹のオタ姉にも同じ忠告をされました。高校生なんだから萌え語りは相手と場所を選べと。でもー、クラリア様だし~」
もじもじと上目遣いでクラリアを見つめるアリス。クラリアは思った。
だからいつもおバ可愛い攻撃をする相手を間違えているんだってば。
勿論アリスにその自覚は皆無。乙女ゲームのヒロインは鈍感要素が必須とはいえとんだ困ったちゃんなアリス。クラリアは溜息をつくとキッパリと言った。
「でもはありません。ゲームはこれで終わりよ、アリス。明日の事もあるし、もうお土産コーナーに行く時間です」
「え~っ!」
そこにアナベル&セシルがチョコレートとレモン水を手に戻って来た。二人は雑にチョコレートとレモン水をアリスに押し付けるとアリスを払い除けてクラリアの右と左にピタッと貼り付いた。
『お姉様、お土産コーナーに行ったら髪飾りを選んで下さる約束よ♪早く行きましょう』
「そうね、可愛いいデザインの物があったから合わせてみましょう」
『はーい♪』
揃って返事をするアナベル&セシルに優しい微笑みを向けてクラリアはアリスを見た。アリスはチョコレートとレモン水を手にそんなぁ~という顔でモグラ姫救出ゲームを見つめている。クラリアは再び溜息をついた。
「この一回だけよ、アリス。ルミア嬢が順番を取ってくれている一回だけ。それで終わりよ、いい事?」
「ハイッ!ありがとうございます、クラリア様!」
クラリアの泣きの一回にアリスは満面の笑顔で答えた。チョコレートとレモン水で流し込むとルミアの元へ全力で走るアリス。
よっしゃあ!この一回に懸けるっ。必ずやモグラ姫に魔物を一歩以上近付ける事無く守り抜き、モグラ王に筐体を貰うんだ!
既にアリスの中ではモグラ姫救出ゲーム本体を貰える事は決定事項になっていた。
「本当に一回だけよ」
順番を替わりながら念押しするルミアに頷き返すアリスだがその頭の梱包されたモグラ姫救出ゲームを馬車に積み込む妄想で一杯。その為にアナベル&セシルが自分を睨みつけている事に気付かなかった。二人の瞳の中でメラメラと燃え盛るのは嫉妬の炎。
“私達のお姉様の気を引くだけでは飽き足らず、甘えておねだり迄するなんてとんでもない女だわ。許せませんわ!!”
視線で心を一つにしたアナベル&セシルが火の魔法も使えそうなレベルの嫉妬の炎を燃え盛らせているのも気付かずアリスはモグラ姫救出ゲームの前に立ち最後の一回に全集中でグッと杖を握りしめた。
「いでよ、土ボコッ」
マジカルクリスタルランドに入場してクラリア達と合流したアリス達はクラリアの勧めるままに人気アトラクションや一休みにピッタリなスナックやドリンクを満喫した。
大人気アトラクション、暗い坑道をトロッコに乗って爆走するサンダートロッコマウンテン。大きな樽に乗ってモグラや精霊の可愛い人形が歌い踊るのを見て観て廻るイッツアクリスタルワールド。等を貴族特権で待ち時間0で楽しみ、合間にウキワマンなる(今だけツノ付き)所謂肉まんを戴いた後、びっくりミートを使った季節限定ランチをたらふく食べた。そしてアリス達は、クラリアの
「ショウスペースの演物は昨日家で観たから省略して腹ごなしに此方へ参りましょう」
と言う言葉に「魔法の森」マジックフォレストに向かった。
マジックフォレストとは魔具を使った魔法体験が出来るミニゲームが沢山揃った前世でいうゲームセンターの様な所だった。短めの魔法の杖(コントローラー)を手に雷の魔法で物を飛ばしたり、火の魔法で炎を操ったり、水の魔法で噴水の水を自在に操ったりとちょっとした魔法使い気分が味わえる。
ストーリーがあったり、点数を競ったり、ゲーム性が高く魔具と力学を応用した機械装置は結構リアルだと子供だけでなく大人にも人気がある。魔力が有る者にとっても他の魔力を体験してみたいと実は人気だ。ちなみに本物の魔法の発動に杖を使う必要は全く無い。
クラリアパパは5人分のゲーム専用のマイ魔法の杖を用意していた。水の魔法使いのアナベル&セシルは雷と火の魔法ゲームを、ルミアは片っ端から、クラリアは実は前世でもやり込んでいたシューティング系ゲームをチョイスして遊び始めた。アリスはというと、
「うわ~、どれにしよう。選べない~」
と様々なゲームを楽しむ人達を眺めながら初ゲームを吟味
してウロウロとマジックフォレスト内を歩き廻っていた。アリスは目に映る全てのゲームが魅力的だった。目移りしすぎて選べない。
どうしよう、アレもコレもやりた過ぎる~っ!この光の魔法メダルはゲームやり放題♪だし。
雷の魔法のゲームとあるがどう見てもクレーンゲームなゲームの景品に心を奪われかけたアリスはある1つのゲームに目が止まった。
あ。
その瞬間アリスは走り出していた。
土の魔法のゲーム「モグラ姫救出ゲーム」ちょっと広めの芝生のコーナーの手前にモグラ城、奥側に魔王の森があり、ゲームスタートするとモグラ姫が「魔法使い様、お城を守って」そして魔王の森から魔物やらゴーレムやらがわいてランダムに近付いてくる。それを杖を振るって魔物の手前の土をボコッと盛り上げてコケさせる。(コケると魔物は退場する)モグラ姫のいるモグラ城を騎士団到着まで守り抜くというゲームだ。
小さな男の子が杖を振るって土をボコッと盛り上げてゴーレムや魔物をコケさせていくのをアリスはキラキラとした瞳で見つめた後、すぐに順番待ちの列に並んだ。そして順番がきたアリスはモグラ姫の言葉に、
「よっしゃぁっ」
杖を構えて、
「いでよ、土ボコ、土ボコ、土ボコ~ッ」
杖を振るい魔物やゴーレムをコケさせまくった。そして無事にモグラ姫を守り抜き、
「お姉ちゃん、上手~♪」
すぐ後ろに並んでいた子供達の称賛を受けたアリスは笑顔で順番待ちの列の最後尾に並んだ。そしてそれをずっと繰り返していた。
何度目かの最高点を更新したアリスはよしっと小さくガッツポーズをしてまた列の最後尾に並んだ。そして晴れ晴れとした顔で順番がきた子供がモグラ姫救出ゲームで楽しく遊んでいるのを眺めた。
はー、まさか自分に土ボコする日が訪れるなんて夢にも思わなかった。あー、転生して良かった♪
憧れの土ボコ魔法を体験出来て感無量のアリス。
さっきモグラ姫に投げキスして貰っちゃたし、あの男の子が教えてくれた、一番上のラインを一歩以上進ませずにゲームクリアするとモグラ王が出てきて余の娘を娶りモグラ国の王にならぬかってスカウトされるって噂、本当か是非とも確かめたい。モグラ国の王様になるという事はすなわち!この筐体(業務用ゲーム機本体)を手に入れたという事、つまりゲーム機プレゼントなんじゃないの~!もう、王様ってば太っ腹♪
マイモグラ姫救出ゲームをGETする夢を思い描き、ぐふっ、ぐふっ、ぐふっと笑っていた。
それをクラリアが不安そうな顔で見つめていた。お目当てのゲームを一周りした後、飲食可能な休憩コーナーに向かったクラリアはそこでメイドの一人からアリスの異常行動の報告を受けた。クラリアが休憩コーナーにいるのを見て飛んできたアナベル&セシルもひとつのゲームをヘビロテするアリスに目を丸くしていた。
「確かに面白くはあるけど、そこまで?」
「土ボコって叫んでるけど、土ボコって何?お姉様」
今ではアリスだけでなくモグラ姫救出ゲームを遊ぶ他のチビッコ達も土ボコっと叫びながら杖を振っている。クラリアは二人の疑問に無言で首を振った。クラリアが一番思っていた。
土ボコって何?!前世用語だろうけど。悪役令嬢が普通だと主役のヒロインが問題児ってお約束、本当に止めて欲しい!ヒロインルートを爆走も困るけどコース外を暴走されるのも困るのよ。マジで止めろ。
が、クラリアのそんな気持ちには全く気付く事無くアリスは徐々に近付いてくる順番にワクワクと杖を握り締めていた。
「アリスー」
そこに声を掛けられ振り向くとルミアがジュースのカップをアリスに差し出していた。よく冷えたジュースを目にしたアリスは急に喉の乾きを覚えた。当然だ。呪文など唱える必要もないのにゲーム中ずっと土ボコと叫んでいたのだ。アリスはパアッと笑顔になると
「ありがとう、ルミア。美味しそう~」
とジュースのカップに手を伸ばす。が、ルミアはサッとカップを引っ込めてしまった。
「えっ?」
「休憩コーナー以外は飲食禁止よ、アリス。休憩コーナーに行こう。クラリア様方も一休みしていらっしゃるわ」
ルミアの言葉にアリスは休憩コーナーのクラリア達とルミアの手の中のジュース、そして順番待ちの列の中程まで進んでいるモグラ姫救出ゲームの土ボコを見た。
「でもぉ~」
モグラ姫救出ゲームから目を離せないアリスにルミアはチラッとクラリアを見て、スッとアリスの目の前に再びジュースを差し出した。反射的にアリスはジュースのカップを受け取るとそのまま、
「いっただっきま~」
と、飲もうとして、
ガッ!
その手前でカッブの上をルミアの手が塞いだ。
「もう、アリスったら小さな子達のお行儀が悪いわ。飲むなら休憩コーナーで。ゲームの順番待ちは私が代わるから行ってらっしゃい」
「本当?ルミア、我が心の友よ~っ」
「そういうのいいから」
「はーい」
一休みしたらまた土ボコろうっと♪
アリスはジュースを手にスキップで休憩コーナーヘ向かった。そこにはルミアからバトンを渡されたクラリアが仁王立ちで待っていたのだがアリスはそれに全く気付かず休憩コーナーに一歩入るなりジュースを一気飲み。ぷはぁと満足気な顔でひと息つくとカップを返却口に戻してそしてそのままアリスはモグラ姫救出ゲームに戻ろうとした。
「お待ちなさい、アリス」
そこに背後からクラリアの声。振り返ると優しい笑顔で、しかし目が笑っていない、アリスを見据えてた。
がしっ。
いつの間にか両脇にきたアナベル&セシルに引っ立てられ、アリスはクラリアの前に突き出されていた。
「なっ、何でございましょう?あの、モグラ姫を助けに行かなくてはいけなくてその」
アリスは理由は解らなかったがクラリアがご立腹なのは判った。恐る恐るお伺いを立てるアリスにクラリアは瞳以外笑顔で尋ねた。
「アリス、モグラ姫救出ゲームは楽しい?」
「ハイッ!」
アリスは即答していた。
「凄く楽しいですっ。ゲーム自体の出来も良いですし、なんと言ってもあの土ボコッ。あの再現度の高さはもはや芸術の域!土の魔法を持たない私があの土ボコを体験出来るなんてゲームクリエイターの方には感謝しかありません。足を向けて寢れません。朝晩祈りを捧げますっ」
熱に浮かされた様にまくし立てるアリスにアナベル&セシルはドン引き。離れて控えている警護役を兼ねたメイドが、取り押さえますか?と視線でクラリアに許可を求めてくる。
はぁとクラリアは心の中でため息をつくと、メイドに必要無いと伝え、アナベル&セシルに、
「アリスに何か甘い物、チョコレートとレモン水を持ってきてあげて」
『はい、お姉様』
メイドは脇に控え、アナベル&セシルはチョコレートとレモン水を取りに行き、一人取り残されたアリスは?近う寄れと人差し指で合図するクラリアにアリスは神妙な面持ちで身を寄せた。
「あのー、私、何かマズい事を…」
「したよね~。貴方は乙女ゲームの主人公、正統派ヒロインのアリスなのよ。アリスはオタク丸出しで周りをドン引きさせたり、取り押さえた方が良いかなと思わせたりしない」
「すみませ~ん、つい」
「ついって、そもそも土ボコって何?」
怪訝そうなクラリアにアリスの表情がパアッと明るくなる。
「あ、御存知なかったんですね。土ボコは私の大好きな悪役令嬢転生物のでレジェンドキャラクターの得意技です。足元の土をボコッと盛り上げてヒロインをコケさせるんです。これは大人気シリーズでコミカライズもアニメ化もされていまして…」
「オタ語りはやめいっ」
クラリアに一喝されアリスはしゅ~ん。
「言っている側からもう。一般人にオタク趣味は大きく語らないのが大人のオタクの嗜みなんでしょう?」
「従姉妹のオタ姉にも同じ忠告をされました。高校生なんだから萌え語りは相手と場所を選べと。でもー、クラリア様だし~」
もじもじと上目遣いでクラリアを見つめるアリス。クラリアは思った。
だからいつもおバ可愛い攻撃をする相手を間違えているんだってば。
勿論アリスにその自覚は皆無。乙女ゲームのヒロインは鈍感要素が必須とはいえとんだ困ったちゃんなアリス。クラリアは溜息をつくとキッパリと言った。
「でもはありません。ゲームはこれで終わりよ、アリス。明日の事もあるし、もうお土産コーナーに行く時間です」
「え~っ!」
そこにアナベル&セシルがチョコレートとレモン水を手に戻って来た。二人は雑にチョコレートとレモン水をアリスに押し付けるとアリスを払い除けてクラリアの右と左にピタッと貼り付いた。
『お姉様、お土産コーナーに行ったら髪飾りを選んで下さる約束よ♪早く行きましょう』
「そうね、可愛いいデザインの物があったから合わせてみましょう」
『はーい♪』
揃って返事をするアナベル&セシルに優しい微笑みを向けてクラリアはアリスを見た。アリスはチョコレートとレモン水を手にそんなぁ~という顔でモグラ姫救出ゲームを見つめている。クラリアは再び溜息をついた。
「この一回だけよ、アリス。ルミア嬢が順番を取ってくれている一回だけ。それで終わりよ、いい事?」
「ハイッ!ありがとうございます、クラリア様!」
クラリアの泣きの一回にアリスは満面の笑顔で答えた。チョコレートとレモン水で流し込むとルミアの元へ全力で走るアリス。
よっしゃあ!この一回に懸けるっ。必ずやモグラ姫に魔物を一歩以上近付ける事無く守り抜き、モグラ王に筐体を貰うんだ!
既にアリスの中ではモグラ姫救出ゲーム本体を貰える事は決定事項になっていた。
「本当に一回だけよ」
順番を替わりながら念押しするルミアに頷き返すアリスだがその頭の梱包されたモグラ姫救出ゲームを馬車に積み込む妄想で一杯。その為にアナベル&セシルが自分を睨みつけている事に気付かなかった。二人の瞳の中でメラメラと燃え盛るのは嫉妬の炎。
“私達のお姉様の気を引くだけでは飽き足らず、甘えておねだり迄するなんてとんでもない女だわ。許せませんわ!!”
視線で心を一つにしたアナベル&セシルが火の魔法も使えそうなレベルの嫉妬の炎を燃え盛らせているのも気付かずアリスはモグラ姫救出ゲームの前に立ち最後の一回に全集中でグッと杖を握りしめた。
「いでよ、土ボコッ」
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傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
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