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クラリアパパSP 社会科見学編その2
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坑道の入口の大きな扉が音を立てて開き、中には魔具で明るく照らされた空間が広がっていた。前世で見た行動展示方の様な森が大きく再現され、柵の手前には若い作業服の男性とアナベル&セシルが、
「はい、どーぞ」
「こっちもどーぞ」
とメイドが渡す果物や野菜を長い棒の先に刺した物を柵の向こうに差し出していた。
「おおっ」
思わず声を上げるアリスとルミアの手にはいつの間にか長い棒。後ろには野菜や果物の入ったカゴを抱えたメイドがスタンバイ。
「さあ、二人共、もぐもぐタイムよ。安全の為に手で直接ではなく棒の先に刺してあげてね」
「はい、えーと」
アリスはカゴの一番上のカボチャと手の棒を見て、アリスとカボチャを見ているブラックビーストを見た。
針のような毛並みや鋭い牙はまさに魔物。だが、
ちっちゃいな。
マジカルクリスタルランドキャラクターマスコットのブラックビーストは体高3m超えの魔物だが目の前の子は体高は1m位の普通の猪サイズ。ちょこちょことアリスの目の前まで来るとフンフンと鼻を鳴らすブラックビースト。つぶらな瞳でアリスを見つめるブラックビースト。
つん。
クラリアがアリスの脇をつついた。
「ほら、ボー子がカボチャが欲しいって」
「はっはい」
アリスは言われるままにカボチャを取り切れ目に棒を差し込んで柵の向こうに差し込んだ。
パクッ。
すぐさまカボチャにかぶりつくとボー子は美味しそうにカボチャを食べ始めた。
「…ボー子?」
「ええ、この子の愛称よ」
「ウリ坊のボー子?」
「ワイルドボウのボー子ちゃん」
「ボー子ちゃん」
ボー子は一心不乱にアリスの上げたカボチャを食べている。アリスは思った。
ゴワゴワ毛並みだけど、牙は鋭いけど、可愛いじゃないかボー子!つぶらな瞳で食いしん坊な所とか愛され要素満載だ。確かにたーんとお食べ♪したいっ。
隣りでルミアがせっせと棒にジャガイモを棒に刺している。そこにアリス達に気付いた作業服の男性がアナベル&セシルに一言断った後にこちらに向かって小走りに走ってきた。
「彼はボー子の飼育主任、ジョエル・フロイセ様。候爵家令息よ」
クラリアが耳打ちして教えてくれる。スラッと長身で精悍な顔立ちの赤毛の青年は三人の前に立つと爽やかな笑顔を見せた。
「お久しぶりです、クラリア様。それと御学友の方ですね。初めまして、ジョエル・フロイセです」
「またお目に掛かれて嬉しいですわ、ジョエル様」
会釈を返すクラリアに合わせて会釈を返しながらアリスは、
この人、見覚えがあるというか面影がどこかで、
と思った。
精悍な顔立ちに赤毛、フロイセ候爵家、アーサーの兄ちゃんかっ?!
正解だった。
「ウチの弟が大変申し訳ありませんでした!」
次の瞬間、ジョエルはクラリアに向って深々と頭を下げていた。流石のクラリアも面食らっている。
「ど、どうぞ、顔をお上げ下さいませ。私は何も」
「いえ、あのバカの浅はかな振舞いに不快な思いをされたでしょう。後でシッカリと叱っておきますから」
「私は別に…」
平謝りのジョエルに困惑顔のクラリア。それを眺めながらアリスは、
この人がボー子を助けた若い騎士か。エピソードに絡む人だけあってカッコイイな~。てゆーかアーサー本人よりゲームアーサーに近くない?流石は元騎士様。本人も見習うべきだわ。
などと呑気な事を考えていた。その間にジョエルの謝罪の言葉を、
「どうか丸坊主になんてお止め下さいませ」
と剣呑な一言で締め括ったクラリアはメイドが抱えていたカゴからリンゴを手に取る。
「ボー子はリンゴが好きだから沢山用意しましたの」
ジョエルはクラリアの手からリンゴを取るとメイドの渡す棒の先にリンゴを刺してから棒をクラリアに手渡した。
「ありがとう御座います」
笑顔で受け取ったクラリアはスッとリンゴをボー子の鼻先に差し出した。
「はい、ボー子。召し上がれ」
ボー子はチラッとリンゴとクラリアとジョエルを見て何故かプイッと横を向いた。
「どうしたの、ボー子。大好きなリンゴよ」
クラリアの言葉に何の反応も示さずボー子はチラッと何故かアリスを見た。アリスは、
「?」
キョトンとするアリスにボー子は明らかに舌打ちをした。
「?!」
どうして?
ボー子はポカンとするアリスを無視して今度はルミアの前に行き、
「キャッ」
ルミアがボー子に食べさせようと棒の先に刺していたジャガイモを首を伸ばして食べた。
「どうしたのかしら?」
首を傾げるクラリアに慌てたジョエルが、
「こら、ボー子。クラリア様が自ら御用意して下さったのだぞ」
その時、クスクスと可笑しそうにアナベル&セシルが笑い出した。
『ボー子はお姉様に嫉妬しているのよね~』
「嫉妬?」
「ええ、先程までジョエル様がお姉様を褒めていらしたから」
「お姉様は美しく聡明で正に令嬢の鑑ですって」
「ちょ、ちょっとお止め下さいっ」
笑いながらばらすアナベル&セシルにジョエルは顔を真っ赤にして二人の言葉を遮った。が二人が止める訳が無い。
「あとは~、お姉様の美しい黒髪が~」
「羽の様に舞うダンスのお姿も~」
「お、お二人共、お酒でも召し上がりましたか?」
更に顔を真っ赤にしたジョエルはアナベル&セシルの前に飛んで行くと両腕で大きくバツを作った。
「その位でご勘弁下さい、大人をからかう物ではありませんよ」
「私達はお姉様の素晴らしい所を話しているだけよ。ねー、セシル」
「ええ、私もお姉様の白磁の様な美しい肌は手袋越しでさえ触れるのは申し訳ないと思うの、アナベル♪」
「だからマジで止めてくれっ」
「それでそれで~♪」
「何で君まで来るの?」
気付くとルミアもアナベル&セシルの横にいた。
「いつの間に…」
呟くアリスにクラリアは、
「社交辞令なのにね」
と肩を竦めて再びリンゴをボー子の前に差し出した。
「だから変な意地を張らないで食べなさい」
「あの、クラリア様。止めた方が…」
「どうして?使用人達が手を尽くして集めた一級品よ。美味しい品よ」
「それは確かにその通りです。が」
目の前に突き出されたリンゴにプイと横を向くボー子はどう見ても仏頂面でぷうと頬を膨らませている。
自分を助けてくれた運命の騎士様が褒めそやす令嬢が寄こした物なんて誰が食べるもんか、それが大好物のリンゴでもっ
とジェラシーの炎が燃え盛る瞳が訴えていた。アリスは思った。
ボー子って女のコだったんだ。
視線の端でアナベルら少女に囲まれて囃され困り顔で頬を赤くするジョエルを見て、
面白くないっ。
とムクレている魔物のハーフ、ボー子は超乙女だった。
ヤバい、ボー子のバックにピンクの薔薇が見える。
アリスが危機感を覚える程、ボー子は乙女ゲームの正統派キャラだった。
負けた。ポンコツキャラでスマン…。
ガックリとカタを落とすアリスの背中をクラリアはポンポンと軽く叩いた。
「クラリア様…」
「大丈夫よ、アリス、私に任せて」
クラリアは力強く頷くと再びボー子の前にリンゴを突き出した。
「クラリア様?!」
目を丸くするアリスにクラリアはきっぱり。
「もうカゴを載せた馬車を一台返してしまったの。食べて貰わないと困るのよ。これからクリスタルマジカルランドに行くのよ。お土産を乗せるカゴが減る」
「は?!」
「さあボー子、たーんと召し上がれ」
「無理ですってば~、ほら」
ツーンと横を向いたまま、
小癪なライバル女め、プンだ。
のボー子。
クラリアは腰に手を当てるとフッと意地悪そうに笑った。
「…令嬢の鑑なんて私には過ぎた言葉だけど騎士の鑑はジョエル様にピッタリの賛辞だと思わない?ボー子。ジョエル様の様な方にお前を守って頂けたら安心だとお父様が言ったような気の所為のような~」
クラリアの言葉にボー子の耳がピピッと小さく動いた。アリスは、
シェーッ!!
クラリア様、どうしちゃったの?!もしかしてクラリア様はフラグを折るのに根を詰め過ぎて所謂お仕事中毒的な、それとも悪役令嬢還りか?!
アリスは慌ててクラリアの袖を引っ張った。
「クラリア様っ。魔物にパワハラするなんて正気ですか?!ここでプチッされたらどうするんですか?」
「このサイズで魔物のハーフだもの。プチは無い」
「蹄っ、牙っ。殺傷能力は充分です」
必死に止めるアリスだがクラリアは全く意に介さずぐいっとボー子の鼻先にリンゴを押し付けた。ボー子は忌々しそうにクラリアを睨み付けるとパクッと一口でリンゴを食べた。無言でムシャムシャとリンゴを頬張るボー子。背中がぐやじい~っと語っていた。それは本来ならアリスの立ち位置。そのボー子の背中をクラリアは満足そうに眺めると、
「はい」
とアリスに手の棒を手渡した。反射的に受け取ったアリスは、
「はい?」
「後はお願いね」
クラリアは笑顔でそう言い残しちょうど顔を出した分室長や幹部のおじ様達の方へスタスタと行ってしまった。中身のたっぷり詰まったカゴを抱えたメイド3人と共に残されたアリスは、
「えーっ!」
メイド達は心なしかグイグイグイとカゴをアリスに押し付けてくる。リンゴを食べ終えたボー子はさっさと次を寄越せと言わんばかりの目でアリスを睨み付けている。
「ううっ、頑張ります…」
棒を握り直したアリス。そこにルミアがパタパタと駆け寄って来た。
ああ、やはり持つべきものは友っ。
アリスはルミアに、
「ルミア~、ボー子に一緒にゴハンを…」
「それより、アリスッ」
しかしルミアはアリスの言葉を遮った。好奇心一杯の顔は白衣のおじ様達と会話の弾むクラリアをじーっと見つめている。
「ルミア?」
「さっきジョエル様が自分を褒めていらしたと聞いた時のクラリア様が満更でもない様子でいらしたでしょう。今も特別分室のおじ様方と楽しそうに語らっていらっしゃるし、やっぱりクラリア様は年上の方がお好みなのかしら?御本人がとても大人びてらっしゃるし同世代の男子なんて子供ぽく感じられるのかかな。私ですらリュカってホントに子供ねって思うんだから。まあ、リュカはそこも良いんだけど♪」
何気に惚気けるルミア。しかしアリスはそんな事は耳に入らない程にショックを受けていた。
クラリア様、国を救うのが先決だって、お子ちゃまに興味は無いって条例が怖いって言ってたのに。
でも条例外の大人は?
…まさか私が研究所内を連れ回されたのって、クラリア様が付き添ったのって、まさか…。
思い当たりまくってしまったアリス。
じいっと物言いた気な視線を送るアリスに気付いたクラリアはニコッと笑顔を返してそしてアリスからスッと視線を逸らした。アリスの足元がガラガラと音を立てて崩れていく。
「…もう」
「もう?」
「もう誰も信じられない…」
「いきなり何?!」
「はい、どーぞ」
「こっちもどーぞ」
とメイドが渡す果物や野菜を長い棒の先に刺した物を柵の向こうに差し出していた。
「おおっ」
思わず声を上げるアリスとルミアの手にはいつの間にか長い棒。後ろには野菜や果物の入ったカゴを抱えたメイドがスタンバイ。
「さあ、二人共、もぐもぐタイムよ。安全の為に手で直接ではなく棒の先に刺してあげてね」
「はい、えーと」
アリスはカゴの一番上のカボチャと手の棒を見て、アリスとカボチャを見ているブラックビーストを見た。
針のような毛並みや鋭い牙はまさに魔物。だが、
ちっちゃいな。
マジカルクリスタルランドキャラクターマスコットのブラックビーストは体高3m超えの魔物だが目の前の子は体高は1m位の普通の猪サイズ。ちょこちょことアリスの目の前まで来るとフンフンと鼻を鳴らすブラックビースト。つぶらな瞳でアリスを見つめるブラックビースト。
つん。
クラリアがアリスの脇をつついた。
「ほら、ボー子がカボチャが欲しいって」
「はっはい」
アリスは言われるままにカボチャを取り切れ目に棒を差し込んで柵の向こうに差し込んだ。
パクッ。
すぐさまカボチャにかぶりつくとボー子は美味しそうにカボチャを食べ始めた。
「…ボー子?」
「ええ、この子の愛称よ」
「ウリ坊のボー子?」
「ワイルドボウのボー子ちゃん」
「ボー子ちゃん」
ボー子は一心不乱にアリスの上げたカボチャを食べている。アリスは思った。
ゴワゴワ毛並みだけど、牙は鋭いけど、可愛いじゃないかボー子!つぶらな瞳で食いしん坊な所とか愛され要素満載だ。確かにたーんとお食べ♪したいっ。
隣りでルミアがせっせと棒にジャガイモを棒に刺している。そこにアリス達に気付いた作業服の男性がアナベル&セシルに一言断った後にこちらに向かって小走りに走ってきた。
「彼はボー子の飼育主任、ジョエル・フロイセ様。候爵家令息よ」
クラリアが耳打ちして教えてくれる。スラッと長身で精悍な顔立ちの赤毛の青年は三人の前に立つと爽やかな笑顔を見せた。
「お久しぶりです、クラリア様。それと御学友の方ですね。初めまして、ジョエル・フロイセです」
「またお目に掛かれて嬉しいですわ、ジョエル様」
会釈を返すクラリアに合わせて会釈を返しながらアリスは、
この人、見覚えがあるというか面影がどこかで、
と思った。
精悍な顔立ちに赤毛、フロイセ候爵家、アーサーの兄ちゃんかっ?!
正解だった。
「ウチの弟が大変申し訳ありませんでした!」
次の瞬間、ジョエルはクラリアに向って深々と頭を下げていた。流石のクラリアも面食らっている。
「ど、どうぞ、顔をお上げ下さいませ。私は何も」
「いえ、あのバカの浅はかな振舞いに不快な思いをされたでしょう。後でシッカリと叱っておきますから」
「私は別に…」
平謝りのジョエルに困惑顔のクラリア。それを眺めながらアリスは、
この人がボー子を助けた若い騎士か。エピソードに絡む人だけあってカッコイイな~。てゆーかアーサー本人よりゲームアーサーに近くない?流石は元騎士様。本人も見習うべきだわ。
などと呑気な事を考えていた。その間にジョエルの謝罪の言葉を、
「どうか丸坊主になんてお止め下さいませ」
と剣呑な一言で締め括ったクラリアはメイドが抱えていたカゴからリンゴを手に取る。
「ボー子はリンゴが好きだから沢山用意しましたの」
ジョエルはクラリアの手からリンゴを取るとメイドの渡す棒の先にリンゴを刺してから棒をクラリアに手渡した。
「ありがとう御座います」
笑顔で受け取ったクラリアはスッとリンゴをボー子の鼻先に差し出した。
「はい、ボー子。召し上がれ」
ボー子はチラッとリンゴとクラリアとジョエルを見て何故かプイッと横を向いた。
「どうしたの、ボー子。大好きなリンゴよ」
クラリアの言葉に何の反応も示さずボー子はチラッと何故かアリスを見た。アリスは、
「?」
キョトンとするアリスにボー子は明らかに舌打ちをした。
「?!」
どうして?
ボー子はポカンとするアリスを無視して今度はルミアの前に行き、
「キャッ」
ルミアがボー子に食べさせようと棒の先に刺していたジャガイモを首を伸ばして食べた。
「どうしたのかしら?」
首を傾げるクラリアに慌てたジョエルが、
「こら、ボー子。クラリア様が自ら御用意して下さったのだぞ」
その時、クスクスと可笑しそうにアナベル&セシルが笑い出した。
『ボー子はお姉様に嫉妬しているのよね~』
「嫉妬?」
「ええ、先程までジョエル様がお姉様を褒めていらしたから」
「お姉様は美しく聡明で正に令嬢の鑑ですって」
「ちょ、ちょっとお止め下さいっ」
笑いながらばらすアナベル&セシルにジョエルは顔を真っ赤にして二人の言葉を遮った。が二人が止める訳が無い。
「あとは~、お姉様の美しい黒髪が~」
「羽の様に舞うダンスのお姿も~」
「お、お二人共、お酒でも召し上がりましたか?」
更に顔を真っ赤にしたジョエルはアナベル&セシルの前に飛んで行くと両腕で大きくバツを作った。
「その位でご勘弁下さい、大人をからかう物ではありませんよ」
「私達はお姉様の素晴らしい所を話しているだけよ。ねー、セシル」
「ええ、私もお姉様の白磁の様な美しい肌は手袋越しでさえ触れるのは申し訳ないと思うの、アナベル♪」
「だからマジで止めてくれっ」
「それでそれで~♪」
「何で君まで来るの?」
気付くとルミアもアナベル&セシルの横にいた。
「いつの間に…」
呟くアリスにクラリアは、
「社交辞令なのにね」
と肩を竦めて再びリンゴをボー子の前に差し出した。
「だから変な意地を張らないで食べなさい」
「あの、クラリア様。止めた方が…」
「どうして?使用人達が手を尽くして集めた一級品よ。美味しい品よ」
「それは確かにその通りです。が」
目の前に突き出されたリンゴにプイと横を向くボー子はどう見ても仏頂面でぷうと頬を膨らませている。
自分を助けてくれた運命の騎士様が褒めそやす令嬢が寄こした物なんて誰が食べるもんか、それが大好物のリンゴでもっ
とジェラシーの炎が燃え盛る瞳が訴えていた。アリスは思った。
ボー子って女のコだったんだ。
視線の端でアナベルら少女に囲まれて囃され困り顔で頬を赤くするジョエルを見て、
面白くないっ。
とムクレている魔物のハーフ、ボー子は超乙女だった。
ヤバい、ボー子のバックにピンクの薔薇が見える。
アリスが危機感を覚える程、ボー子は乙女ゲームの正統派キャラだった。
負けた。ポンコツキャラでスマン…。
ガックリとカタを落とすアリスの背中をクラリアはポンポンと軽く叩いた。
「クラリア様…」
「大丈夫よ、アリス、私に任せて」
クラリアは力強く頷くと再びボー子の前にリンゴを突き出した。
「クラリア様?!」
目を丸くするアリスにクラリアはきっぱり。
「もうカゴを載せた馬車を一台返してしまったの。食べて貰わないと困るのよ。これからクリスタルマジカルランドに行くのよ。お土産を乗せるカゴが減る」
「は?!」
「さあボー子、たーんと召し上がれ」
「無理ですってば~、ほら」
ツーンと横を向いたまま、
小癪なライバル女め、プンだ。
のボー子。
クラリアは腰に手を当てるとフッと意地悪そうに笑った。
「…令嬢の鑑なんて私には過ぎた言葉だけど騎士の鑑はジョエル様にピッタリの賛辞だと思わない?ボー子。ジョエル様の様な方にお前を守って頂けたら安心だとお父様が言ったような気の所為のような~」
クラリアの言葉にボー子の耳がピピッと小さく動いた。アリスは、
シェーッ!!
クラリア様、どうしちゃったの?!もしかしてクラリア様はフラグを折るのに根を詰め過ぎて所謂お仕事中毒的な、それとも悪役令嬢還りか?!
アリスは慌ててクラリアの袖を引っ張った。
「クラリア様っ。魔物にパワハラするなんて正気ですか?!ここでプチッされたらどうするんですか?」
「このサイズで魔物のハーフだもの。プチは無い」
「蹄っ、牙っ。殺傷能力は充分です」
必死に止めるアリスだがクラリアは全く意に介さずぐいっとボー子の鼻先にリンゴを押し付けた。ボー子は忌々しそうにクラリアを睨み付けるとパクッと一口でリンゴを食べた。無言でムシャムシャとリンゴを頬張るボー子。背中がぐやじい~っと語っていた。それは本来ならアリスの立ち位置。そのボー子の背中をクラリアは満足そうに眺めると、
「はい」
とアリスに手の棒を手渡した。反射的に受け取ったアリスは、
「はい?」
「後はお願いね」
クラリアは笑顔でそう言い残しちょうど顔を出した分室長や幹部のおじ様達の方へスタスタと行ってしまった。中身のたっぷり詰まったカゴを抱えたメイド3人と共に残されたアリスは、
「えーっ!」
メイド達は心なしかグイグイグイとカゴをアリスに押し付けてくる。リンゴを食べ終えたボー子はさっさと次を寄越せと言わんばかりの目でアリスを睨み付けている。
「ううっ、頑張ります…」
棒を握り直したアリス。そこにルミアがパタパタと駆け寄って来た。
ああ、やはり持つべきものは友っ。
アリスはルミアに、
「ルミア~、ボー子に一緒にゴハンを…」
「それより、アリスッ」
しかしルミアはアリスの言葉を遮った。好奇心一杯の顔は白衣のおじ様達と会話の弾むクラリアをじーっと見つめている。
「ルミア?」
「さっきジョエル様が自分を褒めていらしたと聞いた時のクラリア様が満更でもない様子でいらしたでしょう。今も特別分室のおじ様方と楽しそうに語らっていらっしゃるし、やっぱりクラリア様は年上の方がお好みなのかしら?御本人がとても大人びてらっしゃるし同世代の男子なんて子供ぽく感じられるのかかな。私ですらリュカってホントに子供ねって思うんだから。まあ、リュカはそこも良いんだけど♪」
何気に惚気けるルミア。しかしアリスはそんな事は耳に入らない程にショックを受けていた。
クラリア様、国を救うのが先決だって、お子ちゃまに興味は無いって条例が怖いって言ってたのに。
でも条例外の大人は?
…まさか私が研究所内を連れ回されたのって、クラリア様が付き添ったのって、まさか…。
思い当たりまくってしまったアリス。
じいっと物言いた気な視線を送るアリスに気付いたクラリアはニコッと笑顔を返してそしてアリスからスッと視線を逸らした。アリスの足元がガラガラと音を立てて崩れていく。
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