音路町スニーカー〜音路町ストーリー3〜

回転饅頭。

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音路町スニーカー

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 子供の頃、何かしょぼい悪い事をした時。例えば冷蔵庫のプリンを食べちゃった時とか。それにしても、冷蔵庫のプリンって、何で黙って食べたら怒られちゃう代名詞なんだろうな?
――ってのはいいとして、そんな時咄嗟に嘘をついたりして、誰かに謂れもない罪をなすりつけた事ないかな?
 まぁ、それくらいなら可愛いもんだよな。バレた時のカミナリは凄いけどね。でもそれが刑事罰になっちゃうような罪だとすると、なすりつけられた方はたまったもんじゃない。謂れもない罪だからとは言っても、何かしらのレッテルが、趣味の悪いタトゥーのように刻み込まれるわけだ。そうなると、誰でも思う。
 誰がやったんだってね。
 今回は、この音路町に突如現れた窃盗団の話だ。奴ら、事もあろうに【捜し屋】の名前を騙りやがった。
――いい度胸をした奴らだ。ホント。



 今年初の台風が過ぎ去り、公園にも街路にも無残にへし折られた小枝やむしり取られた木の葉が散乱している。それを掃除するのは街のボランティアのおっちゃんだ。昔から稼業をやってるうち【今川焼きあまかわ】の現在の店主の俺も、そのボランティアのおっちゃんに混ざって清掃活動に勤しむ。幸い、うちには看板娘の美音もいる。だるそうにする美音を起こして、【NACK】のクレープをダシに連行する。
 おっちゃんの元締めみたいな自治会長がホムセンで買って来た箒と塵取り、あとは可燃ごみの袋を手にして、軍手を嵌めた俺と美音は欠伸を噛み殺しながら通りに溜まった枯葉や小枝を掃いては回収する。

「あっ、アマさんだ!」
「あ!桜さん!」

 メロンパン専門店【恋するウサギ】の店長の桜も清掃活動に参加していた。だるそうな俺たちとは違い、背筋もしゃんとしており、ちゃんとこっちに身体を向けて腰を折ってお辞儀をする。かなり律儀な性格なのだ。

「MLちゃんも!朝からご苦労さまです!」
「桜もな。にしても朝から元気だな。感心」
「そんなことありませんって!あ、そうだ。知ってました?アマさん」

 桜の顔色が変わる。

「昨日、宝石泥棒が出たんですって」
「物騒だな…」
「その事で、ちょっと気になる事があるんです」
「?」
「実はその泥棒……」

 言いかけた桜を遮るように、見慣れた顔がこちらに近づいて来た。目が開いてないのかってくらい細い男。連れてるのはガタイの良い男と、中学生にしか見えない眼鏡の女……警察だ。御夕覚と、星花、哪吒。
御夕覚はこっちをぎこちない顔で見て手を上げる。

「天河。ちょっといいか」
「どうした?」
「すまないな。人にあまり聞かれたくないんだ」
「…美音。頼むな」
「いや、美音ちゃんも一緒のほうがいい」

――何か、嫌な予感がする。俺は桜に一言告げると、御夕覚達に付いて行った。



 そうは言っても向かったのは喫茶店でもなけりゃ、ファミレスでもない。キッチンカーの中だ。やや狭くはあるが、何とか5人は入る。

「すまないな。いきなり」
「お前が洒落も何も言わないって事は、笑えない話なんだろ?」
「笑えないというより…」
「悪い話ですね」
「悪いというか、とっても悪い話であります」
「…哪吒。それはいい」

 哪吒はしょんぼりと肩を竦めた。あまり喋りたくなさそうな御夕覚に、私が話しますと言うと、星花が口を開く。

「捜し屋に、逮捕状が出てるんです」
「何で?」
「窃盗容疑です」
「はぁ?あたいら何もしてないし!」
「だと、思いたいんです。だから、お話を通しておきたくて…」
「ちょっと待ってくれ。窃盗容疑がかかってるってことは、俺たちの仲間の誰かが疑われてるってことなのか?」
「全員です」
「ありえねぇな」

 御夕覚は溜息をついて言った。

「だよな。お前ならそう言うと思ってたよ」
「なら…」
「俺様達はお前らを精一杯庇うつもりだ。でも、そうはいかない場合もある」
「じゃあ、どうすりゃいいんだ?」
「お兄ちゃん、ひょっとしたらさ…桜さんが言ってた宝石泥棒。あれがあたいらのせいにされてるって話じゃない?」
「桜はそれを言おうとしてたんじゃないかな?」

 御夕覚は立ち上がる。

「あまり、目立った行動はしないほうがよさそうだぞ」
「…悪いな、御夕覚。黙ってるわけにはいかない」
「……だよな」
「分かってくれ」

 とりあえず、仲間に話を聞く必要が生じたらしい。
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