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闇
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目覚ましもかけていなければ、こんな時間まで眠ってしまうのだろう。榛名は目を擦りながらベッドから起き上がり、スマホを見た。時間はもうじき正午を指そうとしている。
何かを口にしないといけないと考え、榛名は冷蔵庫に入れていたミネラルウォーターをグラスに注ぎ、買い置きしてある品の中からカロリーブロックを手にして箱を開いた。2階からは何も音が発されることはない。崇彦はもう起きているのだろうか?榛名は包みを開いて固いカロリーブロックを齧った。
「はぁ…」
歳のせいか、疲れが抜けない。気分を落ち着ける為にまた始めた煙草を吸っても逆効果だろうな。榛名はカーテンを開き、高くなった日差しを家に入れた。
スマホが鳴動をはじめたのは、それからほどなくしてからである。着信は越川からだった。白髪混じりの草臥れた男のシルエットが榛名の脳裏を掠めた。
「はい」
「榛名さん、越川です」
「えぇ、先日はどうも」
「カウンセラーの先生が、いらっしゃる事になったんですが…」
「ほう」
「榛名さんのご都合はいかがでしょうか?明後日の昼過ぎというのは…」
偶然、榛名はその日は有給休暇を取っていた。何もする事はないが、年に5回は最低有給休暇を取らなければいけない。
「構いませんよ」
「よかった!」
心底安堵したような声で越川は言った。何もなくただ単に消化するだけの休みを過ごすよりも何倍も良い。榛名は場所を訊いて通話を切った。
何かを口にしないといけないと考え、榛名は冷蔵庫に入れていたミネラルウォーターをグラスに注ぎ、買い置きしてある品の中からカロリーブロックを手にして箱を開いた。2階からは何も音が発されることはない。崇彦はもう起きているのだろうか?榛名は包みを開いて固いカロリーブロックを齧った。
「はぁ…」
歳のせいか、疲れが抜けない。気分を落ち着ける為にまた始めた煙草を吸っても逆効果だろうな。榛名はカーテンを開き、高くなった日差しを家に入れた。
スマホが鳴動をはじめたのは、それからほどなくしてからである。着信は越川からだった。白髪混じりの草臥れた男のシルエットが榛名の脳裏を掠めた。
「はい」
「榛名さん、越川です」
「えぇ、先日はどうも」
「カウンセラーの先生が、いらっしゃる事になったんですが…」
「ほう」
「榛名さんのご都合はいかがでしょうか?明後日の昼過ぎというのは…」
偶然、榛名はその日は有給休暇を取っていた。何もする事はないが、年に5回は最低有給休暇を取らなければいけない。
「構いませんよ」
「よかった!」
心底安堵したような声で越川は言った。何もなくただ単に消化するだけの休みを過ごすよりも何倍も良い。榛名は場所を訊いて通話を切った。
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