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第一章 討伐騎士団宿舎滞在編

38 うさぎおいし、かのやまー!

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 皆様、おはようございます。
 時刻は分かりませんが夜明け前です。
 普段だったら、まだ眠い、とかもう少し……と二度寝している所なのですが!
 今の私にとってはそんなもの!!眠気なんて二の次です!!

 なぜなら、今日の朝は特別だから!

 ルンルン気分で顔を洗って歯磨きして、いつもの服に着替えたら調理場に直行です!

「おはよー!」
「「「「おはよう」ございます」」」

 既に来ている四人に今日も挨拶。
ちょっと早めに私が来たものだから、驚いてる四人がいる。
 実は朝に弱いのであまり早朝の調理場には来てない。食べたいものがあるときだけ朝から来るけど、最近はもう四人に任せておけば朝は確実にモーニングセットが出てくるし、メニューも安定してるので任せっきりなのだ。
 パンやジャムを作ってからは、目玉焼きやベーコンや腸詰めなど基本の物、そしてスクランブルエッグもケチャップを作った時に教えてるので朝は基本セルフサービスに変わったのだ。
 それによって配膳する必要が無くなってルー達の負担も減ったから訓練にあてられる、と大喜び。
 そして私もお陰様で朝はのんびり寝坊出きてます!

「ライスは洗って水に浸してるよお」

 ポールがヤックを指さし報告してくれてる。
 なんやかんやでライス係はヤックなのかな?目線をヤックに向けたら、任せろとばかりの視線。……うん、炊くのもやる気だな、これは。
 ポールにお礼を言って、私は今日のご飯の準備。
 昨日ライスがあると知ってから絶対食べたかった日本食を作ろうと思います!!
 だから事前に四人に言っておいたのだ!

 今日のメニューはだし巻き玉子とお吸い物!

 海産物?干物屋さん?で購入したものを使って作っていきます。

 昆布、鰹節の塊、削るやつ……――これは鰹節もどきをかったら付いてきた――をバックパックから取り出す。

 水を入れた鍋に昆布をぽいっ。
 30分くらい放置するので、その間に鰹節の準備をする。削り箱っていうのかな?カンナみたいなのが付いた箱、と言えばいいのか。
 カンナと箱はカンナ部分が蓋になってて、スライドしたら取れる仕様になってる。

 この世界、どこかに日本人がいるのでは?と思ってしまうくらい食材豊富だし日本寄りなのでたまにびっくりする。

 まあ、気にしても特に変わりはないので私は鰹節を作ります。

 カンナ部分に鰹節を滑らす。するとシャッシャッと小気味いい音と共に削られた鰹節がどんどん箱に溜まっていく。
 久しぶりの鰹節の匂い……。
 それが楽しくて嬉しくてニヤニヤしてたんだろうか、ダンの目線がちょっと痛い。

「ケイ様楽しそうですね」
「へへ、楽しいよ!ルーもやる?」
「はい!」
「じゃあお願いします!箱いっぱいになったら言ってね」

 鰹節はルーに任せて、私は玉子を準備。
 察したダンが、すっ……と横から流してくれたのでボールに玉子を割っていく。何も言わなくても一緒に手伝ってくれてるの、優しいよね。
 溶き卵の状態にしておいて、後で出汁が出来たら合わせる。

 そんな感じでみんなと協力して朝の準備は進む。全ての準備が終わったら、今度は四人を集めて、今日は出汁のとり方を教えます。

「海産物で作る出汁のとり方を~知りたいか~!」
「「「「おー!」」」」

 毎回ノリが良くて本当に助かります!

 さっき放置していた昆布入りの鍋を沸騰直前まで煮詰めてから中の昆布を取り出す。目安は昆布に泡が着くくらいで引き上げると良い。沸騰するまで昆布を入れると雑味がどうのとか言っていたがもう忘れた事なのでスルー。
 そしてそのまま鰹節を入れるけど、今回は布袋に入れた簡易だしパックにしてる。
 本来なら鰹節を入れてザルに越すんだけど、こんな寸胴の鍋担げないからね。

 ある程度したら鰹節袋を取り出す。
 雑巾みたいに絞ったら鰹節から雑味が出るので水気を取るくらいで。
 薄茶の液体になっていれば1番出汁の完成だー!

「これが、出汁……」
「なんとなーく美味しい……のか?」
「魚介の味です?」
「んー……なんか、もうちょっと飲みたくなる味……」

 うんうん、味付けしてないから美味しくないのは仕方ないけど基本はこれだから覚えてもらいます!
 ちなみに出汁取ったあとの昆布と鰹節はもう一回出汁が取れる。その出汁を2番出汁というんだけど、1番出汁はお吸い物に。2番出汁は味噌汁や煮物に使う事を伝える。時として3番出汁ってのもあるけどこれは面倒臭いからやらない。せいぜい2番までが妥当だと思う。

 ちなみに昆布と鰹節は後で佃煮とふりかけにするので細かくしておく。

「出汁ができたからお吸い物とだし巻き玉子つくるよ!」

 お吸い物は簡単に酒と醤油とみりんで味付け。今回は私がもってるチート調味料で作る。ライス発見記念ってことで特別にね。
 お吸い物の具はこっちで買ったワカメ――……だと思うもの――だけ。

 だし巻き玉子はさっきの溶き卵と出汁、酒と砂糖と塩で味付け。
 本当は砂糖入れないけど私はほんのり甘いだし巻き玉子が好きなので入れます!

 当然卵焼き器なんてないから、普通にフライパンで作ったよ。
 見た目オムレツみたいだけど、薄焼き卵を作りながらくるくる巻いて作る作業を見せたらみんな目を輝かやかせてた。
 各々にやらせてみたけど、1番美味かったのはヤックだったね。さすがです!

 みんながだし巻き玉子を作ってる間に私は余った昆布と鰹節で佃煮とふりかけを作った。これは量が少ないからわたしと四人の分だけ。
 作った人の特権です!!文句は言わせないよ!

 騎士達の分を配膳しつつ、私はみんなの反応を伺った。当然、セルフサービスのパンも用意しているのでライスorパン?とか言ってみた。

「ん?今日は……これ、なんだ?」
「ライス、とか言ってたぜ?」
「え、それ家畜の餌だろ!?」
「でも、すっげーいい匂い……」

 滑り出し良好……かな?時々ライスを取っていく騎士がいるけど、やっぱり半分以上はパンだった。

「うおおおお!!ライス!ライスがこんなに美味しくなっているううう!」

 あ、この人貧民層出身の人かな?ありがとう、あなたのおかげで私はライスを発見出来ました……これからもライス友達だよ……。心の中でだけど。

 今度カレーライス作ろう。

********

「さて、では……待ちに待ったご飯タイム!」

 騎士達に配膳が終わったので、片付けて今度は私たちのご飯タイム。

 みんなで囲むご飯は和食です。

 待ちきれず、私はだし巻き玉子をひとくち。
 噛み切るとじゅわ~と甘い出汁が溢れてくる。普通の卵焼きと違って固くなく、ふわふわした噛み心地と出汁の味が醍醐味。
 ここにすかさずご飯をかきこんで、お吸い物と一緒に飲み込んだら、あとはもう何も言わない……至福の時。

「ケイ様がこれ以上ない至福顔を……!」
「うっわ、だし巻き玉子うめえ!」
「お吸い物も優しい味なのです!」
「佃煮おいしいぃ!ライスに合うよお!」

 みんな和食、気に入ってくれたみたいで良かった!
 今日も和気あいあいと食卓を囲って大満足……だけど。

「はあ……味噌汁……」 

 味噌や醤油が作れたらな、と思う私です。
 これはこれで大満足なのだけど、やはり味噌汁が飲みたい……醤油や味噌を作りたい。わがままなのは分かっている。
 今回はライス発見記念日だから特別に自分のチート調味料に頼ったけど、これが続くのは良くない。
 ライスがあれば日本酒作ったりしてないかな……無理か。

「味噌汁?ってなんです?」
「んと、大豆を発酵させたものなんだけどね、麹がないから作れなくて……ライスがあるならせめて日本酒が……うう……」
「日本酒……ライスリキュールです?」
「……え」

 このパターンは……もしや?

「ライスリキュールは僕らの村で作ってますけど」
「消毒用としてここにも卸してるぜ」
「村の冬の副業だよお」

 神がいた。いや、本当にいるけど。
 そうじゃなく、食の神様はここにいたんだね?三人が光り輝いてるよ……。

「……早急に、米麹を!米麹をお分け下さいと村に伝えて!!」
「え、あ……は、はい!」
「後!医務室どこ!?日本酒もってきて!」
「え!?お、おう!!」

 私の迫力にタジタジのヤックとダン。
 医務室から日本酒……ではなくライスリキュールが届き、匂いと味を確認。
 紛れもなく知ってる日本酒そのものでした!
 私が戸惑いなく飲むのでダンが止めたけど、これは消毒用ではなく飲むものです!!日本人はこれを日本酒として飲むし、神の飲み物として昔から崇めて飲んでるんだ!と、言ったらヤックが目の色を変えてました。
 多分近いうちに日本酒がお神酒として広まるであろう。

 ご乱心の私と止めるダンの喧嘩にルーがライスリキュールに浄化を施し飲めるものにしてくれた事で問題解決。

 灯台もと暗し、てこの事を言うんだなあ……って私は思いました。

 その後ヤックの村から米麹も無事に届いて、私は異世界でライス、日本酒、米麹と次々にゲット出来たのでした。ぐへへ。

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