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第一章 討伐騎士団宿舎滞在編
21 玉ねぎ地獄を堪能しよう
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「只今から皆さんのお料理講師になりました、山野ケイです!改めてよろしく!」
調理場に入るなり自己紹介する私に四人が何事かとポカーンと見つめている。
まだ食事の準備前。よし、間に合った。
「それってどういう事ですか?」
ルーが問いかける。
「簡単に説明するね!皆さんは、私が作る食事の作り方を覚えてもらうのでそれを真似しながら騎士達の食事を作ってください!……以上」
「……そういう事か」
「今までとそんなに変わらないです」
「ぼくはマヨネーズさえあればいいよぉ」
「え、それって……あの、っ……」
三人組は呑気だ。
ルーは聡いので一瞬でことの重要性と大変さと、プレッシャーに気付いて青ざめているけど……大丈夫、君ならできる。知らんけど。
「って訳で早速今日のメニューを発表します。お昼はミートパイを作りまーす」
「ミートパイ?」
「詳しい事は作りながら説明します!じゃあ食料庫行こう!」
4人を引き連れて食料庫に。
ミートパイはボリュームもあるし、夜ご飯の事を考えてそうしてみた。
まずは大量の玉ねぎと肉。牛肉っぽいのと豚肉っぽいのを選ぶ。
今日はお昼を作るついでに晩御飯の準備もしようと思っているのだ。
なので肉と玉ねぎは大量にね!
あとはニンニク、人参、セロリ、トマト……などと、サラダに使う野菜などを適当に拝借。
「あれ?粉類の袋の位置がかわってませんか?」
「気付いてくれた?ちょっとね、種類ごとに分けたんだ」
「粉に種類が!?」
「あるんだよ、ヤックくん。ついでに見分け方教えてあげる」
ヤックが気付いてくれたので他の子達にも小麦粉の判別方法を教える。
ルーなんて真面目だからメモなんかしてたけど、慣れたらすぐ分かるのに……そこがルーの凄いところだよね。
お昼に小麦粉は使うので丁度良かったな。
後はバターと、クリームチーズとヨーグルトの乳製品を揃えたらお昼と晩御飯の材料は揃う。
調理場に戻って簡単に作り方の説明をして行く。作りながらより事前に簡単でも聞いていた方が理解しやすいだろう、との魂胆だ。
「では、早速分担するね。まずはポールが肉担当、ルーは野菜切り担当、ダンは晩御飯の下準備やその他サポートで私とヤックがパイ生地担当ね。では各自作業開始!」
各々に材料を渡して、パンっと手を叩き合図する。分からなくなったら聞きに来たりする体制にしたけど、流石長年調理しているだけあってみんなの手際は良い。
「じゃあ、ヤック。重要な生地作りだよ」
「僕なんかが……重要な生地担当……!?」
「うん、なんか冷たそうだし」
「……え?」
「手。冷たそうだったから」
私の言葉にハテナを飛ばすヤック。
これから始める作業は、絶対バターを溶かしたらいけないからね。
ここは譲れなかったのだ。
「ヤックは風と水魔法が得意って聞いたからさ」
「確かに風と水の魔法は得意ですし、そういった者は体質的に体温が低く冷たいですが……」
「それがいいんだよ!特に今回の生地はバターを溶かさないってのがポイントだからね」
「はあ……ありがとうございます……?」
納得いってないヤックはほっておいて生地作り開始です。
バターは細切れにして準備。小麦粉は軽くダマをつぶしたら、細切れにしたバターを転がすように入れ、混ぜないようにさっくりと切るように馴染ませる。
この時バターと小麦粉を練らずに、バターをさらに細かくしつつ小麦粉を纏わせていくのがポイント。粉っぽくて大丈夫。
「全体的にまとまったら冷水を加えてまた混ぜるけど……絶対練ったらダメだよ」
「どうしてです?」
「んーと、グルテンっていう物質は練れば練るほど粘り気が強くなって固くなるから」
「固くなったらダメなのです?」
「そうだね、今回のレシピはだめだね」
基本練れば練るだけいいと思っていたらしく、練らないというレシピに、驚きつつも上手に生地は出来た。
そうか、練れば練るだけいいと思っていたからこそのあの堅パンなんだな、と納得。
そこは酵母が出来上がったあとに正していこう。
生地の方は粉っぽさが残ったまま、まとめたら冷蔵庫に寝かせる。
とりあえずこれで一段落だ。
「思ったより簡単なんですね……」
「基本ズボラ料理だから恥ずかしいけど、美味しさは保証するよ?」
私達が作業を終えると、ダンが近づいてきた。
「おい、晩飯の肉切り終わったぞ」
「あ!ありがとう!じゃあ、生地とか待ってる間にサワークリームを作ろう!」
「「サワークリーム……?」」
どんどんと知らない単語が出てくるので二人とも戸惑いつつも先程レシピを伝えていたので材料を持ってきてくれた。
足りないものは口頭で伝えて覚えてもらう。
ダンに切ってもらった晩御飯用のお肉はルーの玉ねぎみじん切り待ちなので暫し冷蔵庫待機です。
「では!サワークリームをつくろーう!」
「「おー!」」
相変わらずノリのいい二人で嬉しいね。
本来のサワークリームは生クリームとヨーグルトを発酵させたものだけど、今回はそんな時間無いので簡易サワークリーム!
クリームチーズとヨーグルトを混ぜるだけ。
終わり。
「え、これだけ?」
「簡単すぎませんか?」
「ズボラ料理だから。本当は生クリームとヨーグルトを発酵させて作るんだよ?でもそんなの待ってられないしめんどくさいしこれはこれで同じ味だからいいの」
「「はあ……」」
呆れてる二人に胸を張って言う。
時間かけた料理も美味しいし、ズボラにズボラを重ねた料理だって美味しい。
そういう手抜きを覚えないと大量生産するこの厨房では間に合わないだろう。
特に昼ごはんなどは朝と晩とは違って調理時間がとれないので、時間との勝負なのだから。
私はそう言う事を教えていきたいと思っている。
「ケイ様あ!あうぅ、玉ねぎおわりましたあ!……ぐすっ」
サワークリームが出来上がった後、ルーが涙を流しながら報告してきた。
「凄い!あの量を短時間で!?」
「が、頑張りましたあ……ぐすっ」
みればボウルに山ほどのみじん切りがみっつ。……かなり頑張ったことがわかる。
「終わったら手伝おうと思ってたんだよー?あの大量の玉ねぎを1人で作業するなんてすごいね!」
「う、うう……嬉しいけどもう二度とやりたくないですぅ……」
褒められたことが嬉しいのか、笑顔を見せるが余程過酷だったのだろう、ルーにしては珍しく弱音を吐いた。
そりゃあそうだろう、私だってこんな大量の玉ねぎ地獄を前にしたら逃げ出す選択肢を選ぶ。なのに立ち向かうルーは偉い。
「玉ねぎは色々な料理にいっぱい使うから……対策考えようね……」
「はい、絶対ですよお!?」
力いっぱい頷かれた……。
日本だったら眼鏡だとかあればいいけど……ここは異世界。布マスクに……ゴーグルか?ゴーグルくらいはあるだろう。今度宿舎を探検してみよう!
ルーが弱音を吐いてる横で黙々と肉をミンチにしたポールが自分も出来たと報告してきたので次の工程に入ろうと、魔道コンロに。
私含め五人で魔道コンロに並んでもまだ広々としている。無駄にでかい。
「まずはバターで玉ねぎを飴色になるまで炒めてからダンが切ってくれた人参やセロリを炒めて、ポールが作ったミンチを最後に炒めるよ!」
「飴色ってなんだ?」
「んー……きつね色?」
ダンが問いかける。飴色は茶色とも言えるが、こっち基準だとどうも変換が難しい。
「ねえ、ルー?きつねってフレイムフォックスかな?」
「そうかもしれませんね」
「でもあれ赤色だよね?」
「え?本体なら黄色なんじゃねーの?」
「どの炎の色なんだろうねえ?」
「……。とりあえず炒めてみるから、みんなも同時進行で炒めてね!」
皆が何やら不穏な事を言っているがスルー!
火を纏う狐とか普通に怖いんで。
バターが溶けたら玉ねぎをフライパンにドバっといれて、木べらでかき混ぜる。この時絶対焦がしたらダメなので弱火でじっくりがポイント。
「はい、こんな感じのが飴色でーす」
「腕が……訓練でもこんな事にならないのに……っ!」
「疲れた……玉ねぎごときにこんなに気を使ったのはじめてだ」
「この状態は焦げる寸前なのでは?」
「でも、いいにおーい!」
ルーと三人組が各々感想を言い合ってる間に、寸胴のような大きなナベに炒めた野菜を入れさせてもらう。
「……こんな、美味しいものになるなら、僕は……玉ねぎ地獄でもいい……」
炒めた玉ねぎを少し味見したルーが夢見心地に呟いている。
飴色になるまで炒めるとあまーくなって美味しいからね。これはルーのためにオニオンスープも教えてあげねばだなあ。
調理場に入るなり自己紹介する私に四人が何事かとポカーンと見つめている。
まだ食事の準備前。よし、間に合った。
「それってどういう事ですか?」
ルーが問いかける。
「簡単に説明するね!皆さんは、私が作る食事の作り方を覚えてもらうのでそれを真似しながら騎士達の食事を作ってください!……以上」
「……そういう事か」
「今までとそんなに変わらないです」
「ぼくはマヨネーズさえあればいいよぉ」
「え、それって……あの、っ……」
三人組は呑気だ。
ルーは聡いので一瞬でことの重要性と大変さと、プレッシャーに気付いて青ざめているけど……大丈夫、君ならできる。知らんけど。
「って訳で早速今日のメニューを発表します。お昼はミートパイを作りまーす」
「ミートパイ?」
「詳しい事は作りながら説明します!じゃあ食料庫行こう!」
4人を引き連れて食料庫に。
ミートパイはボリュームもあるし、夜ご飯の事を考えてそうしてみた。
まずは大量の玉ねぎと肉。牛肉っぽいのと豚肉っぽいのを選ぶ。
今日はお昼を作るついでに晩御飯の準備もしようと思っているのだ。
なので肉と玉ねぎは大量にね!
あとはニンニク、人参、セロリ、トマト……などと、サラダに使う野菜などを適当に拝借。
「あれ?粉類の袋の位置がかわってませんか?」
「気付いてくれた?ちょっとね、種類ごとに分けたんだ」
「粉に種類が!?」
「あるんだよ、ヤックくん。ついでに見分け方教えてあげる」
ヤックが気付いてくれたので他の子達にも小麦粉の判別方法を教える。
ルーなんて真面目だからメモなんかしてたけど、慣れたらすぐ分かるのに……そこがルーの凄いところだよね。
お昼に小麦粉は使うので丁度良かったな。
後はバターと、クリームチーズとヨーグルトの乳製品を揃えたらお昼と晩御飯の材料は揃う。
調理場に戻って簡単に作り方の説明をして行く。作りながらより事前に簡単でも聞いていた方が理解しやすいだろう、との魂胆だ。
「では、早速分担するね。まずはポールが肉担当、ルーは野菜切り担当、ダンは晩御飯の下準備やその他サポートで私とヤックがパイ生地担当ね。では各自作業開始!」
各々に材料を渡して、パンっと手を叩き合図する。分からなくなったら聞きに来たりする体制にしたけど、流石長年調理しているだけあってみんなの手際は良い。
「じゃあ、ヤック。重要な生地作りだよ」
「僕なんかが……重要な生地担当……!?」
「うん、なんか冷たそうだし」
「……え?」
「手。冷たそうだったから」
私の言葉にハテナを飛ばすヤック。
これから始める作業は、絶対バターを溶かしたらいけないからね。
ここは譲れなかったのだ。
「ヤックは風と水魔法が得意って聞いたからさ」
「確かに風と水の魔法は得意ですし、そういった者は体質的に体温が低く冷たいですが……」
「それがいいんだよ!特に今回の生地はバターを溶かさないってのがポイントだからね」
「はあ……ありがとうございます……?」
納得いってないヤックはほっておいて生地作り開始です。
バターは細切れにして準備。小麦粉は軽くダマをつぶしたら、細切れにしたバターを転がすように入れ、混ぜないようにさっくりと切るように馴染ませる。
この時バターと小麦粉を練らずに、バターをさらに細かくしつつ小麦粉を纏わせていくのがポイント。粉っぽくて大丈夫。
「全体的にまとまったら冷水を加えてまた混ぜるけど……絶対練ったらダメだよ」
「どうしてです?」
「んーと、グルテンっていう物質は練れば練るほど粘り気が強くなって固くなるから」
「固くなったらダメなのです?」
「そうだね、今回のレシピはだめだね」
基本練れば練るだけいいと思っていたらしく、練らないというレシピに、驚きつつも上手に生地は出来た。
そうか、練れば練るだけいいと思っていたからこそのあの堅パンなんだな、と納得。
そこは酵母が出来上がったあとに正していこう。
生地の方は粉っぽさが残ったまま、まとめたら冷蔵庫に寝かせる。
とりあえずこれで一段落だ。
「思ったより簡単なんですね……」
「基本ズボラ料理だから恥ずかしいけど、美味しさは保証するよ?」
私達が作業を終えると、ダンが近づいてきた。
「おい、晩飯の肉切り終わったぞ」
「あ!ありがとう!じゃあ、生地とか待ってる間にサワークリームを作ろう!」
「「サワークリーム……?」」
どんどんと知らない単語が出てくるので二人とも戸惑いつつも先程レシピを伝えていたので材料を持ってきてくれた。
足りないものは口頭で伝えて覚えてもらう。
ダンに切ってもらった晩御飯用のお肉はルーの玉ねぎみじん切り待ちなので暫し冷蔵庫待機です。
「では!サワークリームをつくろーう!」
「「おー!」」
相変わらずノリのいい二人で嬉しいね。
本来のサワークリームは生クリームとヨーグルトを発酵させたものだけど、今回はそんな時間無いので簡易サワークリーム!
クリームチーズとヨーグルトを混ぜるだけ。
終わり。
「え、これだけ?」
「簡単すぎませんか?」
「ズボラ料理だから。本当は生クリームとヨーグルトを発酵させて作るんだよ?でもそんなの待ってられないしめんどくさいしこれはこれで同じ味だからいいの」
「「はあ……」」
呆れてる二人に胸を張って言う。
時間かけた料理も美味しいし、ズボラにズボラを重ねた料理だって美味しい。
そういう手抜きを覚えないと大量生産するこの厨房では間に合わないだろう。
特に昼ごはんなどは朝と晩とは違って調理時間がとれないので、時間との勝負なのだから。
私はそう言う事を教えていきたいと思っている。
「ケイ様あ!あうぅ、玉ねぎおわりましたあ!……ぐすっ」
サワークリームが出来上がった後、ルーが涙を流しながら報告してきた。
「凄い!あの量を短時間で!?」
「が、頑張りましたあ……ぐすっ」
みればボウルに山ほどのみじん切りがみっつ。……かなり頑張ったことがわかる。
「終わったら手伝おうと思ってたんだよー?あの大量の玉ねぎを1人で作業するなんてすごいね!」
「う、うう……嬉しいけどもう二度とやりたくないですぅ……」
褒められたことが嬉しいのか、笑顔を見せるが余程過酷だったのだろう、ルーにしては珍しく弱音を吐いた。
そりゃあそうだろう、私だってこんな大量の玉ねぎ地獄を前にしたら逃げ出す選択肢を選ぶ。なのに立ち向かうルーは偉い。
「玉ねぎは色々な料理にいっぱい使うから……対策考えようね……」
「はい、絶対ですよお!?」
力いっぱい頷かれた……。
日本だったら眼鏡だとかあればいいけど……ここは異世界。布マスクに……ゴーグルか?ゴーグルくらいはあるだろう。今度宿舎を探検してみよう!
ルーが弱音を吐いてる横で黙々と肉をミンチにしたポールが自分も出来たと報告してきたので次の工程に入ろうと、魔道コンロに。
私含め五人で魔道コンロに並んでもまだ広々としている。無駄にでかい。
「まずはバターで玉ねぎを飴色になるまで炒めてからダンが切ってくれた人参やセロリを炒めて、ポールが作ったミンチを最後に炒めるよ!」
「飴色ってなんだ?」
「んー……きつね色?」
ダンが問いかける。飴色は茶色とも言えるが、こっち基準だとどうも変換が難しい。
「ねえ、ルー?きつねってフレイムフォックスかな?」
「そうかもしれませんね」
「でもあれ赤色だよね?」
「え?本体なら黄色なんじゃねーの?」
「どの炎の色なんだろうねえ?」
「……。とりあえず炒めてみるから、みんなも同時進行で炒めてね!」
皆が何やら不穏な事を言っているがスルー!
火を纏う狐とか普通に怖いんで。
バターが溶けたら玉ねぎをフライパンにドバっといれて、木べらでかき混ぜる。この時絶対焦がしたらダメなので弱火でじっくりがポイント。
「はい、こんな感じのが飴色でーす」
「腕が……訓練でもこんな事にならないのに……っ!」
「疲れた……玉ねぎごときにこんなに気を使ったのはじめてだ」
「この状態は焦げる寸前なのでは?」
「でも、いいにおーい!」
ルーと三人組が各々感想を言い合ってる間に、寸胴のような大きなナベに炒めた野菜を入れさせてもらう。
「……こんな、美味しいものになるなら、僕は……玉ねぎ地獄でもいい……」
炒めた玉ねぎを少し味見したルーが夢見心地に呟いている。
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