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第一章 討伐騎士団宿舎滞在編
10 衛生観念は大事です。
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「ここが調理場です」
食堂を出てぐるっと半周。裏口っぽい所へ案内された。ドアを開けると床は食堂と同じく石畳、多分コンロみたいな所、ルーがさっき居た洗い場、作業場……うん、こういうのは日本と作りはそんなに変わらないよね。
ドア付近でキョロキョロとしてる私に、ルーが気付く。
「すみません、一応……浄化をかけますね?」
ルーが“浄化”と言った瞬間、ふわっと私の周りに小さな光の粒が纏った……と思ったらすぐに消えた。
こ、これが魔法というものなのか!!
こういうのを期待してたんですよ!異世界来たならやっぱりみたいよね、魔法!
私が感動していたら、ルーが不思議そうに見ている。
そうか、ルーにとってはこれが日常なんだもんね。私だったら手を洗って……とやってる所だけどね。
「すごいね、ルーくん!これが魔法なんだ!?」
「ルーでいいですよ、ケイ様」
「わかった、ルーね!私のことも呼び捨てでいいんだよ?」
「いえ!それはいけません!!」
ルーよ……両手をブンブンと降ってまで否定することなのでしょうが……ちょっと悲しい。
身分的なものに厳しい騎士団だからってのもあるんだろうな。この年齢にしてはかなり礼儀正しいし、しっかり働いているのが偉い。
そして何より衛生観念がしっかりしてるのが良いよね。
ちゃんと浄化してからじゃないと調理場には入れないって言うルールはとてもいい。聞いたらそのルール作ったのルーなんだって!
少し前までは騎士達が当番制で食事を作っていたのだけど、今はルーを中心とした下働きの見習い騎士達が食事を担当してるとか。
その理由が、ルーが来る前は食事などはおざなりだったらしく調理場も汚れて悲惨だったとか。
身体が主本のくせに食事を疎かにして尚且つ調理場も汚いとなれば騎士達の体調にも影響してくるわけで、そこで白羽の矢がたったのがルーだったと……。つまり、お鉢が回ってきた的なやつだろう。
だけど元々、騎士団に入る前は家事などを率先してやっていたルーはその状況が許せなかったらしく今では騎士の仕事より食堂の方が忙しいという本末転倒。
それなら新人に押し付けずにちゃんとした料理人を雇えばいいのに、この騎士団には居ない。
理由を聞いたけど、ルーは苦笑いだけで誤魔化した。きっとルーの立場では言えないことなんだろう。
どうしても気になったら団長さんに聞いてみよう。絶対なにか問題があるんだろうな。
でも私的には当面の問題は塩味だけの食事なのでそういうのは後回しにさせてもらう。
「ねえ、このコンロみたいなのはどうやって火をつけるの?」
見た目ステンレスみたいな、地球にもある調理コンロなんだけど、ガスコンロじゃなくて、天板の上に小さな魔法陣が描かれていて、その中心には綺麗な赤い石がはめ込まれている。
壁にはフライパンが吊るされているから多分ここはコンロ。
ただ、天板の上はつるんっとしてるからIHみたいな方がイメージしやすい。……が、どこにもレバーやスイッチみたいなのが見当たらない。
「ああ、これは魔力を流すと魔石から熱が出る仕組みなのです」
「魔力……魔石!!」
「付けてみますか?」
「お願いしますっ!!」
ルーの言葉を食い殺さんばかりに速攻でお願いしてしまった私に、初めてルーが笑った。
楽しいを隠せない大人ですみません。
人懐っこい笑顔を見せてくれたルーは、今ので緊張が解けたのかビクビクしていたのが止まった。
よかった……いつまでも恐れられていたら仲良くなれないもんね。
「魔石に触ると危ないですからね。この魔法陣に手をかざして……はい、これで使えます」
「おお!魔石が光ってるー!」
「わわっ、ケイ様!火傷します!危ない!」
ルーの手のひらが光ったな、と思ったらその光が魔石に吸い込まれてキラキラと輝いている。それが点火の合図らしくふわっと暖かい空気が流れている。
思わず火が灯ったか確かめたくて魔石の上に手をかざしたらめっちゃ怒られた。
「これ、私にもできるかな!?」
「魔力さえあれば出来ますが……やってみますか?」
「やりたい!!」
「わかりました、ではこの隣の魔法陣に手をかざしてみて下さい」
言われた通り私は魔法陣に手をかざした。
すると意識するでもなくかざした手が熱くなってくる。多分これが魔力というものなのだろう、と思ったらルーの時と同じく私の手が光った。
そして先程と同じように魔石へと魔力が吸い込まれて……
「うわぁ!ケイ様!!入れすぎ!魔力入れすぎ!」
「へ??」
ルーの時と光り方が違い、真っ赤に光り輝く目の前の魔石。
かなりの高熱がおきているんだろう、赤から白へと光が変わっていくのがわかった。
思わずかざした手を引っ込めたけれど、時すでに遅し。
「ケイ様!一体どれだけ魔力入れたんですか!?」
「え、いや……ルーが言った通りにしただけだよ?」
「ええー……本当ですか……?」
疑いの目を向けられているけど、やり方はルーのやってるのを見ただけだし、こちとら魔力なんてものはじめましてだし!
というか自分にも魔力あったことが嬉しいです。
ステータスで魔力がそこそこにあるのは分かってたけどやっぱり実際使わないと、ね?
むしろ初めてで魔力を引き出せた私を褒めて欲しい。
「うわ、凄い……さっきのでここのコンロ全部、暫く魔力補充しなくていいくらい溜まってる……ええー……」
なんかやらかしたっぽいけど私は知りません。
気を取り直して、次は食料庫へ。
調理場の一角を区切って食料庫になっていて、扉を開ければそこはヒヤリと冷たい冷蔵庫になっていました。
ここにも魔法と魔石が仕掛けられていて、この温度を保つための魔石と氷の魔法がかけられているから年中この温度なんだそう。
だからここには常温で保存出来ないものがいっぱいあった。
特に肉類は豊富で、何の肉か分からないものが沢山ありました。
聞いたら食べられなくなりそうだからあえて聞かない。
地下もあるみたいでそこは冷凍庫になってて、氷と肉を保存しているんだそうです。寒いからここはパスしました。元々保存用に作られているから氷と肉以外何もないって。
あとはワインセラーとかあるみたいだけど、それは調理場とは違うところにあるそう。
ざっとみたけど食料は地球と変わらないものが多くて、なんだこりゃー!?っていうものは少なかった。
野菜の基本、じゃがいも人参玉ねぎは普通にあるし、ミルクやチーズも作られている。
小麦も大麦もあるし、豆もあった。
ワインセラーがあるってことは酒造もしてるんだということが分かる。
そしてお酒があるならお酢もある筈。
……いや、使ってないということはそもそもお酢ということが分かっていない可能性がある。
お酢ってお酒のアルコールが飛んで熟成されたものだから、調味料のない、この世界では腐ったと認識されてそうだな。
「お酒さぁ、あけたら匂い変わってるやつとかある?」
「匂い……ですか?ツンっとくるものは失敗作なのでそういうのは捨ててますよ?」
「そ・れ・だ!」
やっぱりありました!お酢!
ワインには当たり外れがあって、時々数本が酸っぱくなっているのがあるんだそうだ。そういうのは開けないと分からないからワインを買う時は大量に買うのが当たり前なんだって。水より安いから大量買いが出来てる、てのはびっくりしたけど、確かに水が濁ってそのままだと飲めないから仕方なくお酒にして飲んで脱水を免れたってどこかの国の歴史モノ番組で見た気がする。
お酢になっちゃうのは製法とか保存方法とか確立してないからそうなるのは、仕方ないよね。まあ、私はどうしてだか分かるので黙っておくけど……いずれは広めたいよね。お酢もお酒の保存方法も。
そして、ルーに聞いたらまだ捨ててないビンがあるそうだったので、それを何本か持ってきて貰った。
ついでに甘口の白ワインとリンゴも持ってきてもらう。
「あの……持ってきましたけど、これ何に使うんですか?」
「ふふふ……今から、地球の科学をお見せしようと思います!」
「カガク……?」
レイスディティアが魔法溢れる世界であれば、地球には魔法のような科学というものがあるのだよ!
さっきちょっと魔法で失敗したので、次は私がルーに科学を教えようと思う!
決して自分の、得意分野を自慢したい訳じゃない!うん!
食堂を出てぐるっと半周。裏口っぽい所へ案内された。ドアを開けると床は食堂と同じく石畳、多分コンロみたいな所、ルーがさっき居た洗い場、作業場……うん、こういうのは日本と作りはそんなに変わらないよね。
ドア付近でキョロキョロとしてる私に、ルーが気付く。
「すみません、一応……浄化をかけますね?」
ルーが“浄化”と言った瞬間、ふわっと私の周りに小さな光の粒が纏った……と思ったらすぐに消えた。
こ、これが魔法というものなのか!!
こういうのを期待してたんですよ!異世界来たならやっぱりみたいよね、魔法!
私が感動していたら、ルーが不思議そうに見ている。
そうか、ルーにとってはこれが日常なんだもんね。私だったら手を洗って……とやってる所だけどね。
「すごいね、ルーくん!これが魔法なんだ!?」
「ルーでいいですよ、ケイ様」
「わかった、ルーね!私のことも呼び捨てでいいんだよ?」
「いえ!それはいけません!!」
ルーよ……両手をブンブンと降ってまで否定することなのでしょうが……ちょっと悲しい。
身分的なものに厳しい騎士団だからってのもあるんだろうな。この年齢にしてはかなり礼儀正しいし、しっかり働いているのが偉い。
そして何より衛生観念がしっかりしてるのが良いよね。
ちゃんと浄化してからじゃないと調理場には入れないって言うルールはとてもいい。聞いたらそのルール作ったのルーなんだって!
少し前までは騎士達が当番制で食事を作っていたのだけど、今はルーを中心とした下働きの見習い騎士達が食事を担当してるとか。
その理由が、ルーが来る前は食事などはおざなりだったらしく調理場も汚れて悲惨だったとか。
身体が主本のくせに食事を疎かにして尚且つ調理場も汚いとなれば騎士達の体調にも影響してくるわけで、そこで白羽の矢がたったのがルーだったと……。つまり、お鉢が回ってきた的なやつだろう。
だけど元々、騎士団に入る前は家事などを率先してやっていたルーはその状況が許せなかったらしく今では騎士の仕事より食堂の方が忙しいという本末転倒。
それなら新人に押し付けずにちゃんとした料理人を雇えばいいのに、この騎士団には居ない。
理由を聞いたけど、ルーは苦笑いだけで誤魔化した。きっとルーの立場では言えないことなんだろう。
どうしても気になったら団長さんに聞いてみよう。絶対なにか問題があるんだろうな。
でも私的には当面の問題は塩味だけの食事なのでそういうのは後回しにさせてもらう。
「ねえ、このコンロみたいなのはどうやって火をつけるの?」
見た目ステンレスみたいな、地球にもある調理コンロなんだけど、ガスコンロじゃなくて、天板の上に小さな魔法陣が描かれていて、その中心には綺麗な赤い石がはめ込まれている。
壁にはフライパンが吊るされているから多分ここはコンロ。
ただ、天板の上はつるんっとしてるからIHみたいな方がイメージしやすい。……が、どこにもレバーやスイッチみたいなのが見当たらない。
「ああ、これは魔力を流すと魔石から熱が出る仕組みなのです」
「魔力……魔石!!」
「付けてみますか?」
「お願いしますっ!!」
ルーの言葉を食い殺さんばかりに速攻でお願いしてしまった私に、初めてルーが笑った。
楽しいを隠せない大人ですみません。
人懐っこい笑顔を見せてくれたルーは、今ので緊張が解けたのかビクビクしていたのが止まった。
よかった……いつまでも恐れられていたら仲良くなれないもんね。
「魔石に触ると危ないですからね。この魔法陣に手をかざして……はい、これで使えます」
「おお!魔石が光ってるー!」
「わわっ、ケイ様!火傷します!危ない!」
ルーの手のひらが光ったな、と思ったらその光が魔石に吸い込まれてキラキラと輝いている。それが点火の合図らしくふわっと暖かい空気が流れている。
思わず火が灯ったか確かめたくて魔石の上に手をかざしたらめっちゃ怒られた。
「これ、私にもできるかな!?」
「魔力さえあれば出来ますが……やってみますか?」
「やりたい!!」
「わかりました、ではこの隣の魔法陣に手をかざしてみて下さい」
言われた通り私は魔法陣に手をかざした。
すると意識するでもなくかざした手が熱くなってくる。多分これが魔力というものなのだろう、と思ったらルーの時と同じく私の手が光った。
そして先程と同じように魔石へと魔力が吸い込まれて……
「うわぁ!ケイ様!!入れすぎ!魔力入れすぎ!」
「へ??」
ルーの時と光り方が違い、真っ赤に光り輝く目の前の魔石。
かなりの高熱がおきているんだろう、赤から白へと光が変わっていくのがわかった。
思わずかざした手を引っ込めたけれど、時すでに遅し。
「ケイ様!一体どれだけ魔力入れたんですか!?」
「え、いや……ルーが言った通りにしただけだよ?」
「ええー……本当ですか……?」
疑いの目を向けられているけど、やり方はルーのやってるのを見ただけだし、こちとら魔力なんてものはじめましてだし!
というか自分にも魔力あったことが嬉しいです。
ステータスで魔力がそこそこにあるのは分かってたけどやっぱり実際使わないと、ね?
むしろ初めてで魔力を引き出せた私を褒めて欲しい。
「うわ、凄い……さっきのでここのコンロ全部、暫く魔力補充しなくていいくらい溜まってる……ええー……」
なんかやらかしたっぽいけど私は知りません。
気を取り直して、次は食料庫へ。
調理場の一角を区切って食料庫になっていて、扉を開ければそこはヒヤリと冷たい冷蔵庫になっていました。
ここにも魔法と魔石が仕掛けられていて、この温度を保つための魔石と氷の魔法がかけられているから年中この温度なんだそう。
だからここには常温で保存出来ないものがいっぱいあった。
特に肉類は豊富で、何の肉か分からないものが沢山ありました。
聞いたら食べられなくなりそうだからあえて聞かない。
地下もあるみたいでそこは冷凍庫になってて、氷と肉を保存しているんだそうです。寒いからここはパスしました。元々保存用に作られているから氷と肉以外何もないって。
あとはワインセラーとかあるみたいだけど、それは調理場とは違うところにあるそう。
ざっとみたけど食料は地球と変わらないものが多くて、なんだこりゃー!?っていうものは少なかった。
野菜の基本、じゃがいも人参玉ねぎは普通にあるし、ミルクやチーズも作られている。
小麦も大麦もあるし、豆もあった。
ワインセラーがあるってことは酒造もしてるんだということが分かる。
そしてお酒があるならお酢もある筈。
……いや、使ってないということはそもそもお酢ということが分かっていない可能性がある。
お酢ってお酒のアルコールが飛んで熟成されたものだから、調味料のない、この世界では腐ったと認識されてそうだな。
「お酒さぁ、あけたら匂い変わってるやつとかある?」
「匂い……ですか?ツンっとくるものは失敗作なのでそういうのは捨ててますよ?」
「そ・れ・だ!」
やっぱりありました!お酢!
ワインには当たり外れがあって、時々数本が酸っぱくなっているのがあるんだそうだ。そういうのは開けないと分からないからワインを買う時は大量に買うのが当たり前なんだって。水より安いから大量買いが出来てる、てのはびっくりしたけど、確かに水が濁ってそのままだと飲めないから仕方なくお酒にして飲んで脱水を免れたってどこかの国の歴史モノ番組で見た気がする。
お酢になっちゃうのは製法とか保存方法とか確立してないからそうなるのは、仕方ないよね。まあ、私はどうしてだか分かるので黙っておくけど……いずれは広めたいよね。お酢もお酒の保存方法も。
そして、ルーに聞いたらまだ捨ててないビンがあるそうだったので、それを何本か持ってきて貰った。
ついでに甘口の白ワインとリンゴも持ってきてもらう。
「あの……持ってきましたけど、これ何に使うんですか?」
「ふふふ……今から、地球の科学をお見せしようと思います!」
「カガク……?」
レイスディティアが魔法溢れる世界であれば、地球には魔法のような科学というものがあるのだよ!
さっきちょっと魔法で失敗したので、次は私がルーに科学を教えようと思う!
決して自分の、得意分野を自慢したい訳じゃない!うん!
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