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序章 王宮での長い二日間
2 召喚は突然に②
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所変わってどっかの中庭です。
地下牢?はて?なんの事ですか?
いや、嘘です嘘です、ゴメンなさい。
危うく地下牢行きになる所だったんですけど、何やかんやとありまして、とりあえず今は中庭に居ます。
何でそうなったか?
……うん、それはね?
****************
【回想】
「お待ちください、殿下!」
私を捕える騎士の手が止まる。
王子の命令にサッと動いた下級騎士が私を捕らえようとしたのだけど私も私で抵抗したもんだからなんだかひっちゃかめっちゃかで謁見の間のちょっとした騒ぎに。
そんな中に響いた鶴の一声。
拘束はそのままに、一旦その場に緊張が走った。
声を上げたのは白いローブを着た人達の中でも、長い帽子と他より装飾されたローブを着ている、多分神殿的にも偉い人だと思う。司祭様、っていうんだっけな?
うーん、もっと異世界系の本みとけばよかったなあ。
その人はバカ王子(だってばかじゃんね?)に祈るように膝を折ると、発言を続けた。
「仮にもこのお方は儀式でやって来られた異世界人……聖女様かもしれない御方。殿下なれど神の御使いを地下牢などに追いやることは許されません。ましてやまだ、詳しく鑑定もしておりません」
おお!司祭様よくぞ言ってくれました!
私の中の白いローブのジジイは司祭様になりました。これが乙女ゲームなら私の好感度が上がってるところだよ。
しかしバカ王子はそんなお優しい司祭様の言葉も聞く耳持たないのか忌々しげに眉を寄せてる。
「だからと言って我に暴言を吐いた輩を許せと?」
あ、この世界、こっちの方言通じるんだね。
ちょっと意外だった。
伝わってなくても殺意さえ伝わってれば私はそれでいいけど。
「そうではありません。まずは鑑定をし、聖女かどうかなどを調べるのが先決かと。そして、然るべき時に然るべき事をなさればこの者も納得するのでは、と……」
つまりは時間稼ぎですね。
そこまで私を聖女にしたいんですか?嫌だわー、めんどくさい。
てか普通なら司祭様が言う通りなんだよ。
どこの誰が義理もない寧ろ怨みしかない異世界でいきなり命がけで国に尽せと言われて頷くんだっての。
まずは誠意だろ、誠意。
ため息ついてたら、視線を感じた。
未だに拘束はされているんだけど、私を庇うように覆いかぶさっている騎士が、私をじっと見つめてる。
銀に近い金髪で緑の色した瞳。
ちょっとタレ目でゴールデンレトリバーを思い出させる何とも不思議な雰囲気の騎士。
……うん、イケメンだ!
などと再びの現実逃避中、王子と司祭様にて話し合いが続いております。
「そなたの言うことも一理ある」
「ありがとうございます。この者……異世界人もまだこの世界に来て直ぐでございますし、混乱しておるのです。今日の所は神殿にて身を預からせて頂きたく」
「よかろう、では明日の朝またここへ連れてこい」
「寛大なお心、感謝致します」
ふむ、終わったらしい。
騎士達の拘束が解かれて司祭様が私を謁見の間から連れ出してくれた。
その日は神殿にお泊まりさせていただきまして、翌朝の話。
朝ごはんも食べずに今、また再びの謁見の間へ……。
ご飯くらい食べたかったけど、まだよく分かってないし、借りは作りたくないので――……一宿の恩義はあるけれどそれはまた別の話だと思う――お前らの施しは受けぬ!状態なのと、単に時間が無いってことで食べられずに王宮へと急かされた。
この世界の住人達、起床からの行動時間がクソ早いんですけどぉ!?
夜明け前から起きて行動とかどうなの?
神殿だからお祈り的なものはあるだろうけどそれにしても早いわ。
私も社会人としては普通に早起きな生活なんだけど、それより早いってどうなんですかね。
感覚が違いすぎて、起きるのが遅いって言われるのが新鮮すぎてよくわかんないや。
そして今度は謁見の間に入ると、昨日とは違って中央に鏡のようにピカピカに磨かれた大きな水晶?ガラス?みたいな大きな球体が出てきました。
周りを装飾されていて、いかにも我は高級で厳かな魔道具であるという佇まいです。
ほうけた顔してたのか、司祭様が横で耳打ちしてくれました。
「あれはこの世界の魔道具で、国内でも片手以下しかない鑑定の水晶です。大きさで鑑定で出る内容の詳しさが変わるのです。あれは国内でも最大の鑑定水晶でございます」
「へえ~……そうなんですか」
いかにも、でした。高そう……。
大きさで詳細が変わるってことはこれ以上詳しくはわからないってことか。
どこまで詳しく分かるんだろ?触るの怖いな……。
なんて思ってたらその魔道具が、私の目の前に置かれる。
大きい、といっても人の頭分もないくらいなので私は何となくネズミーランドのなんたらマンションにある水晶を思い出していた。
それでも大きいもんは大きいんだけど。
司祭様に導かれ、手を伸ばすように誘導されるが何となく嫌だ、と感じる自分がいる。
触ったらいきなり魔女とか出てこないですよね?
戸惑いつつじっと水晶を眺めていたら王子がふんっと聞こえるように嫌味ったらしい鼻息ひとつ。
「なんだ、今更怖気付いておるのか?」
むっかー!!
そんな事ないし!
怖気付くとかの問題ではなく、なんか、こう、周りに見られながら……ってのが嫌なだけであって、さらに鑑定なんて自分を暴かれるようで好きじゃない。
ましてや魔道具とかはじめましてのものですよ?普通に怖いんですけど!?
この感覚は、きっと私がこの世界の人じゃないからだと思うけど。
昨日ざっと聞いた司祭様の話によれば、この世界の人は10歳になると神殿に訪れて鑑定の水晶で自分を鑑定するのが習わしなんだって。
生まれた時にはまだ能力とかレベルが安定してないからスキルも表示されないし、この時期が丁度いいんだそうだ。
日本で言うと血液検査くらいの感覚なのかな?
それで自分のスキルとか適正とかをしって、自分に似合った職業を決めるんだとか。
もちろん、スキルにも色々あるし個人の夢とか希望もあるから必ずしもスキルにそった道を歩む必要はなくて、あくまでも将来の指針というか参考程度らしい。
己を知ることは大切だもんね。
大体の平均が10歳でレベル8~10。大人になるまでに15あれば生活に困らないし、冒険者とかなると20越えてないと駆け出しにもならないんだって。
鍛えれば鍛えるだけ上がるから、そこは本人の努力次第だそうだ。
筋肉みたいなもの……なのかな?
体力、魔力は30そこそこあれば生きていけるし、生活魔法全般がつかえる。
魔法使いとかだと50越えてないと才能なし。
宮廷魔道士なら70、その上の魔女やら大賢者は100は越えるらしいけど、そんな三桁クラスは滅多に居ないんだそう。
ちなみにこの国には居ないそうです。
スキルだって何かしら絶対付いてるらしいけど、大体が特技と同じ感じで身体系が多い――但し貴族などは血縁的なものの固有スキルがある――……らしく、なんだかとっても複雑で種類豊富そうだった。
まあ、そこまで聞いて頭がパンクしたので、寝たんだけども。
生死が掛かっている事なのに危機感無いって思われても仕方ないけどこっちは現実感ないんだから仕方ないです。
まあ、スキル=特技みたいなもの、と理解しました。
なんて考えながら水晶の前に数分。
痺れを切らしている王子が舌打ちしている。
それって一国を背負っていく王子の態度としてどうなの?他国怒っちゃわない?
「さあ、お早く」
王子の態度にちょっと焦り気味の司祭様。
そりゃあそうだ、昨日の今日ですもんね。
また怒らせたりしたら司祭さんの面目丸つぶれってやつですよね。うん。
一宿の恩義今ここで果たそう!それに女は度胸!やってやりますよ!
結果がどうなってもしーらね!!!
勢いのまま、手をかざしてみると水晶がふわっと光る。水晶を包むように光は広がり、やがて落ち着くと共に金色のスパンコールみたいな小さな泡みたいなのが無数に生まれてはパチパチと炭酸のように弾けて消えていく。
「おお……これは……精霊か!」
へえ、この世界精霊もいるんだ?
と、感心していたら、それまで座っていた王子が、ガタッと音を立てて立ち上がる。
その目は子供のようにらんらんとしていた。
――……よく見たら、この王子まだ子供みたい……?
期待に満ちた瞳で水晶を見る謁見の間の人々。
水晶の淡い光とスパンコールの弾ける光が消えると、半透明な、こう……RPGでよくあるステータス画面が目の前に現れた。
なんだその無駄演出。
それを覗き込み、あらかた目を通す司祭様。
「え……こ、これは……?」
謁見の間が昨日以上にザワついたこと、今でも忘れない。
地下牢?はて?なんの事ですか?
いや、嘘です嘘です、ゴメンなさい。
危うく地下牢行きになる所だったんですけど、何やかんやとありまして、とりあえず今は中庭に居ます。
何でそうなったか?
……うん、それはね?
****************
【回想】
「お待ちください、殿下!」
私を捕える騎士の手が止まる。
王子の命令にサッと動いた下級騎士が私を捕らえようとしたのだけど私も私で抵抗したもんだからなんだかひっちゃかめっちゃかで謁見の間のちょっとした騒ぎに。
そんな中に響いた鶴の一声。
拘束はそのままに、一旦その場に緊張が走った。
声を上げたのは白いローブを着た人達の中でも、長い帽子と他より装飾されたローブを着ている、多分神殿的にも偉い人だと思う。司祭様、っていうんだっけな?
うーん、もっと異世界系の本みとけばよかったなあ。
その人はバカ王子(だってばかじゃんね?)に祈るように膝を折ると、発言を続けた。
「仮にもこのお方は儀式でやって来られた異世界人……聖女様かもしれない御方。殿下なれど神の御使いを地下牢などに追いやることは許されません。ましてやまだ、詳しく鑑定もしておりません」
おお!司祭様よくぞ言ってくれました!
私の中の白いローブのジジイは司祭様になりました。これが乙女ゲームなら私の好感度が上がってるところだよ。
しかしバカ王子はそんなお優しい司祭様の言葉も聞く耳持たないのか忌々しげに眉を寄せてる。
「だからと言って我に暴言を吐いた輩を許せと?」
あ、この世界、こっちの方言通じるんだね。
ちょっと意外だった。
伝わってなくても殺意さえ伝わってれば私はそれでいいけど。
「そうではありません。まずは鑑定をし、聖女かどうかなどを調べるのが先決かと。そして、然るべき時に然るべき事をなさればこの者も納得するのでは、と……」
つまりは時間稼ぎですね。
そこまで私を聖女にしたいんですか?嫌だわー、めんどくさい。
てか普通なら司祭様が言う通りなんだよ。
どこの誰が義理もない寧ろ怨みしかない異世界でいきなり命がけで国に尽せと言われて頷くんだっての。
まずは誠意だろ、誠意。
ため息ついてたら、視線を感じた。
未だに拘束はされているんだけど、私を庇うように覆いかぶさっている騎士が、私をじっと見つめてる。
銀に近い金髪で緑の色した瞳。
ちょっとタレ目でゴールデンレトリバーを思い出させる何とも不思議な雰囲気の騎士。
……うん、イケメンだ!
などと再びの現実逃避中、王子と司祭様にて話し合いが続いております。
「そなたの言うことも一理ある」
「ありがとうございます。この者……異世界人もまだこの世界に来て直ぐでございますし、混乱しておるのです。今日の所は神殿にて身を預からせて頂きたく」
「よかろう、では明日の朝またここへ連れてこい」
「寛大なお心、感謝致します」
ふむ、終わったらしい。
騎士達の拘束が解かれて司祭様が私を謁見の間から連れ出してくれた。
その日は神殿にお泊まりさせていただきまして、翌朝の話。
朝ごはんも食べずに今、また再びの謁見の間へ……。
ご飯くらい食べたかったけど、まだよく分かってないし、借りは作りたくないので――……一宿の恩義はあるけれどそれはまた別の話だと思う――お前らの施しは受けぬ!状態なのと、単に時間が無いってことで食べられずに王宮へと急かされた。
この世界の住人達、起床からの行動時間がクソ早いんですけどぉ!?
夜明け前から起きて行動とかどうなの?
神殿だからお祈り的なものはあるだろうけどそれにしても早いわ。
私も社会人としては普通に早起きな生活なんだけど、それより早いってどうなんですかね。
感覚が違いすぎて、起きるのが遅いって言われるのが新鮮すぎてよくわかんないや。
そして今度は謁見の間に入ると、昨日とは違って中央に鏡のようにピカピカに磨かれた大きな水晶?ガラス?みたいな大きな球体が出てきました。
周りを装飾されていて、いかにも我は高級で厳かな魔道具であるという佇まいです。
ほうけた顔してたのか、司祭様が横で耳打ちしてくれました。
「あれはこの世界の魔道具で、国内でも片手以下しかない鑑定の水晶です。大きさで鑑定で出る内容の詳しさが変わるのです。あれは国内でも最大の鑑定水晶でございます」
「へえ~……そうなんですか」
いかにも、でした。高そう……。
大きさで詳細が変わるってことはこれ以上詳しくはわからないってことか。
どこまで詳しく分かるんだろ?触るの怖いな……。
なんて思ってたらその魔道具が、私の目の前に置かれる。
大きい、といっても人の頭分もないくらいなので私は何となくネズミーランドのなんたらマンションにある水晶を思い出していた。
それでも大きいもんは大きいんだけど。
司祭様に導かれ、手を伸ばすように誘導されるが何となく嫌だ、と感じる自分がいる。
触ったらいきなり魔女とか出てこないですよね?
戸惑いつつじっと水晶を眺めていたら王子がふんっと聞こえるように嫌味ったらしい鼻息ひとつ。
「なんだ、今更怖気付いておるのか?」
むっかー!!
そんな事ないし!
怖気付くとかの問題ではなく、なんか、こう、周りに見られながら……ってのが嫌なだけであって、さらに鑑定なんて自分を暴かれるようで好きじゃない。
ましてや魔道具とかはじめましてのものですよ?普通に怖いんですけど!?
この感覚は、きっと私がこの世界の人じゃないからだと思うけど。
昨日ざっと聞いた司祭様の話によれば、この世界の人は10歳になると神殿に訪れて鑑定の水晶で自分を鑑定するのが習わしなんだって。
生まれた時にはまだ能力とかレベルが安定してないからスキルも表示されないし、この時期が丁度いいんだそうだ。
日本で言うと血液検査くらいの感覚なのかな?
それで自分のスキルとか適正とかをしって、自分に似合った職業を決めるんだとか。
もちろん、スキルにも色々あるし個人の夢とか希望もあるから必ずしもスキルにそった道を歩む必要はなくて、あくまでも将来の指針というか参考程度らしい。
己を知ることは大切だもんね。
大体の平均が10歳でレベル8~10。大人になるまでに15あれば生活に困らないし、冒険者とかなると20越えてないと駆け出しにもならないんだって。
鍛えれば鍛えるだけ上がるから、そこは本人の努力次第だそうだ。
筋肉みたいなもの……なのかな?
体力、魔力は30そこそこあれば生きていけるし、生活魔法全般がつかえる。
魔法使いとかだと50越えてないと才能なし。
宮廷魔道士なら70、その上の魔女やら大賢者は100は越えるらしいけど、そんな三桁クラスは滅多に居ないんだそう。
ちなみにこの国には居ないそうです。
スキルだって何かしら絶対付いてるらしいけど、大体が特技と同じ感じで身体系が多い――但し貴族などは血縁的なものの固有スキルがある――……らしく、なんだかとっても複雑で種類豊富そうだった。
まあ、そこまで聞いて頭がパンクしたので、寝たんだけども。
生死が掛かっている事なのに危機感無いって思われても仕方ないけどこっちは現実感ないんだから仕方ないです。
まあ、スキル=特技みたいなもの、と理解しました。
なんて考えながら水晶の前に数分。
痺れを切らしている王子が舌打ちしている。
それって一国を背負っていく王子の態度としてどうなの?他国怒っちゃわない?
「さあ、お早く」
王子の態度にちょっと焦り気味の司祭様。
そりゃあそうだ、昨日の今日ですもんね。
また怒らせたりしたら司祭さんの面目丸つぶれってやつですよね。うん。
一宿の恩義今ここで果たそう!それに女は度胸!やってやりますよ!
結果がどうなってもしーらね!!!
勢いのまま、手をかざしてみると水晶がふわっと光る。水晶を包むように光は広がり、やがて落ち着くと共に金色のスパンコールみたいな小さな泡みたいなのが無数に生まれてはパチパチと炭酸のように弾けて消えていく。
「おお……これは……精霊か!」
へえ、この世界精霊もいるんだ?
と、感心していたら、それまで座っていた王子が、ガタッと音を立てて立ち上がる。
その目は子供のようにらんらんとしていた。
――……よく見たら、この王子まだ子供みたい……?
期待に満ちた瞳で水晶を見る謁見の間の人々。
水晶の淡い光とスパンコールの弾ける光が消えると、半透明な、こう……RPGでよくあるステータス画面が目の前に現れた。
なんだその無駄演出。
それを覗き込み、あらかた目を通す司祭様。
「え……こ、これは……?」
謁見の間が昨日以上にザワついたこと、今でも忘れない。
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