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序章 王宮での長い二日間
1 召喚は突然に①
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今日は楽しい楽しい野外キャンプ。
私、山野ケイは都会の喧騒から離れ、日々の疲れを癒すべく愛車の原付ちゃん(自分で塗装した赤色のスーパーカブ)にキャンプの荷物を縛って乗り、トコトコとのんびり楽しく鼻歌など歌いながら近場のキャンプ場に向かっていた。
――……向かっていた、んだよ。
「ようこそ!我が召喚の儀にて参られた異世界人よ!ここはレイスディティアであり、我が国はアズール王国、そして我はアズール王国第一王子リュファス・ティア・レオニードである!」
あれよあれよのうちに謁見の間という場所に連れられて来ました。
そしてよくわからないうちに偉そうに私の座っている(ってか床に転がされてる?)場所より数段高い位置に立って反りくり返ってる赤い髪と瞳をもつ王子……――なんか着てるものからして煌びやかだなと思ったらやっぱり王子だった。――に、ご丁寧にここは異世界だよって説明された。
話によると、ここはレイスディティアという世界で、剣と魔法にあふれる世界らしい。
そして例に漏れず瘴気と魔物にあふれる世界でもあるってよ。
つくづく王道異世界転移モノを地でいってるわ……。
そんでもって、私を呼び出したのはこの国……アズール王国。
なんでも100年も前から準備していたこの国きっての大計画だったらしく、100年かけて国民から魔力を供給してもらい、溜めた魔力と今世の選りすぐりの宮廷魔導士をかき集め、司祭とその上級信徒のサポートのおかげでようやく自分の世代で召喚の儀を行えたらしい。
そんでまんまと成功し、異世界からやってきたのがこの私!山野ケイだったと言う訳さ。
ふむ、こやつが王子なら私を中心として円を描くように周りにいる黒いローブを着ているのが、いかにも私共は魔法使いや魔道士です!ってやつね。
白いローブ着てる人たちは王子と私の丁度中間くらいにいるから、神殿的な人なのかな?
で、王子の左右にいるのがきっと宰相とか側近とか近衛騎士とかそういう人なんかな?よくわからんけど。王子はまだ長々としゃべっている。
なんで王が不在なのかは事情は話せないそうです。
自分が先導してやったので王は関係ない、でもいるから安心しろ。
……これ以上聞いたら異世界人でも不敬で打ち首だそうです。
私、王様の事なんて何にも聞いてないけどね。
1ミリも興味無いし。
なんてどうでもいいツッコミをしつつ延々と続いている王子の話を聞き流す。よく口がまわるし体力続くな……と感心していたら。
「召喚の儀に応えたそなたにはやらねばならん事がある!それはこの世界に蔓延る瘴気から生まれる魔物や魔王を倒すことだ!そしてそなたは見たところ……女か?女であるよな?」
ほーう?喧嘩売ってきたぞこいつ。
てか勝手に呼び出してるのはそっちだし、私は応じた覚えはないからね?気付いたら変な魔法陣の真ん中に居て、黒いローブ(複数)に羽交い締めされて連れてこられてここに居るだけだし。何で呼び出されただけでそんな命を懸けた使命を背負わされてるのか全然わかんないし、私にそれを成し遂げないといけない義理は無いはずなのになんで勝手に決定なのか。
そして人を見下して上から下まで不躾に見て?性別確認とかセクハラですか?
いいよいいよ、100歩譲って私の今の格好が男物のライダースーツだから?そりゃわからんでもないさ。
でもちょっとまてや。この素晴らしきBカップが目に入らんか!?……入らんのか、そうか。
……はっ倒す。絶対。
「まあ、そんな些末なことはいい!」
良くないけどな。
その後もなんか演説の様な王子のお言葉は続いたけど、私はここが異世界なのだと頭で理解するのが嫌だったみたいで、早速現実逃避です。
そりゃさ、この歳で(三十路前ですが何か?)いきなり貴女が聖女ですとか目の前でいわれてみ?そりゃあ現実逃避もしたくなりますわ。
まあ、でも私は偉いので王子から言われたことをまとめるとですね。
・ここは異世界(わかるけど?)
・お前は聖女(アラサーにはきつい)
・魔物を浄化せよ(男なら討伐)
・帰り方?知らん。(いやそれ説明面倒臭いだけじゃ?)
・それよりこの世界を救える英雄となれる事を誇れ(何様?)
……という事です。
いやまじで、俺様何様王子様?
こっちの意見なんて丸無視ですわ。ってかその前に聞かれてもないし、もう聖女だって決定事項だし。
とにかくこの世界がいかに素晴らしく、この国がいかに凄いか、それでいて召喚に選ばれたことが栄誉であり、難しい術に成功した偉業を讃えよ、この世界の中でこの国を救える使命までも与えてやったのだから感謝して身を粉にして死ぬまで仕えて働け。
というのがあちらの正義で常識らしい。
……ははっ。笑うしかねえな。
「む。貴様なにを先程からニヤニヤと笑っているのだ」
「……失礼、殿下。もしよろしければワタクシのようなものに一つ発言をお許し下さりますでしょうか?」
「ふむ、よかろう!」
私がいきなり自分勝手に発言をせず、許しを乞うて一歩引いてからの言葉と態度に、異世界人にしては礼儀がなっている、と王子がさらにふんぞり返って言う。
そんな馬鹿王子の態度にコメカミはピクピク。
火山は大噴火五秒前待ったナシ。
わざと丁寧に言うたに決まってるだろ、ぼけ!嫌味が通じないとか頭パッパラパーなんかな!そうだろうな!!
よくある異世界ものの本やアニメみてたらわかることじゃ!こちとらこじらせてベーコンレタスも百合も桜も全てを網羅したオタクだぞ!こういう場所での処世術なんかは社会人してりゃなんぼでも解るんじゃ!
なんなら黒歴史だがサークル作って創作もしたからな!
いや、今はそんな事どうでもいいや!
私はその場から立ち上がると息を最大限に吐き出し、吸った。
それはもう肺から腹からと。
元合唱団の声量と肺活量を今、使わんがために!!ここで使わにゃいつ使う!
このバカ王子&その他大勢に向かって言おう。
……いや、叫ぼう。
さあ、皆さんご一緒に。
「うっせえ!うっせえ!うっせえわ!!!!!」
「「「「「「「…………!?」」」」」」」
謁見の間に、私の歌みたいな叫びが響いた。
私の近くにいた人は余りの大声に耳を塞いで倒れてるし、王子に至っては溢れんばかりに目を見開いている。
「なんや黙って聞いとったら都合いい事ばっか言いくさってからよお!ここはブラック企業なんか!あん!?そげな危険で命はたかないけんこと、誰かハイハイ是非にィ言うて喜んでやると思っとんけ!!選ばれたとか知らんこっちゃねえが!きさん共が勝手に呼んで連れて来たんじゃ!なまじ聖女やらせるにしても言い方っちゅーもんがあるやろうが!それを名誉じゃ栄誉じゃとかええ事ほざきやかって、結局面倒事他人に押し付けてきさん共が楽ぅしたいだけじゃろが!こんド阿呆共が!!どつきあげてくらしあげるぞ!!!」
怒号の叫びは止まりません。
伊達に九州女やって無いので、言いたいことは言わせてもらいます。
地球の方言(ド級に汚い言い方で言ってやった)なんて意味わかん無いだろうけど殺意だけは伝わったらいいなって思います。
一通り言いたいこと言い終わったのでさっきの馬鹿王子と同じように真似してふんぞり返ってやった。
言いたいこと言ってスッキリ満足してたら、いち早く復活した王子が元から全身赤いのに、さらにほっぺや耳まで赤くして(多分めっちゃ怒ってる)こちらを震える指で指さして……
「こ、こいつを……地下牢に閉じ込めておけええ――ッ!!」
……と、叫びました。
ああ、地球にいる母さんお父さんお兄ちゃん弟妹、あと猫数匹よ。
私の異世界転移初日は、大変なことになりそうです。
私、山野ケイは都会の喧騒から離れ、日々の疲れを癒すべく愛車の原付ちゃん(自分で塗装した赤色のスーパーカブ)にキャンプの荷物を縛って乗り、トコトコとのんびり楽しく鼻歌など歌いながら近場のキャンプ場に向かっていた。
――……向かっていた、んだよ。
「ようこそ!我が召喚の儀にて参られた異世界人よ!ここはレイスディティアであり、我が国はアズール王国、そして我はアズール王国第一王子リュファス・ティア・レオニードである!」
あれよあれよのうちに謁見の間という場所に連れられて来ました。
そしてよくわからないうちに偉そうに私の座っている(ってか床に転がされてる?)場所より数段高い位置に立って反りくり返ってる赤い髪と瞳をもつ王子……――なんか着てるものからして煌びやかだなと思ったらやっぱり王子だった。――に、ご丁寧にここは異世界だよって説明された。
話によると、ここはレイスディティアという世界で、剣と魔法にあふれる世界らしい。
そして例に漏れず瘴気と魔物にあふれる世界でもあるってよ。
つくづく王道異世界転移モノを地でいってるわ……。
そんでもって、私を呼び出したのはこの国……アズール王国。
なんでも100年も前から準備していたこの国きっての大計画だったらしく、100年かけて国民から魔力を供給してもらい、溜めた魔力と今世の選りすぐりの宮廷魔導士をかき集め、司祭とその上級信徒のサポートのおかげでようやく自分の世代で召喚の儀を行えたらしい。
そんでまんまと成功し、異世界からやってきたのがこの私!山野ケイだったと言う訳さ。
ふむ、こやつが王子なら私を中心として円を描くように周りにいる黒いローブを着ているのが、いかにも私共は魔法使いや魔道士です!ってやつね。
白いローブ着てる人たちは王子と私の丁度中間くらいにいるから、神殿的な人なのかな?
で、王子の左右にいるのがきっと宰相とか側近とか近衛騎士とかそういう人なんかな?よくわからんけど。王子はまだ長々としゃべっている。
なんで王が不在なのかは事情は話せないそうです。
自分が先導してやったので王は関係ない、でもいるから安心しろ。
……これ以上聞いたら異世界人でも不敬で打ち首だそうです。
私、王様の事なんて何にも聞いてないけどね。
1ミリも興味無いし。
なんてどうでもいいツッコミをしつつ延々と続いている王子の話を聞き流す。よく口がまわるし体力続くな……と感心していたら。
「召喚の儀に応えたそなたにはやらねばならん事がある!それはこの世界に蔓延る瘴気から生まれる魔物や魔王を倒すことだ!そしてそなたは見たところ……女か?女であるよな?」
ほーう?喧嘩売ってきたぞこいつ。
てか勝手に呼び出してるのはそっちだし、私は応じた覚えはないからね?気付いたら変な魔法陣の真ん中に居て、黒いローブ(複数)に羽交い締めされて連れてこられてここに居るだけだし。何で呼び出されただけでそんな命を懸けた使命を背負わされてるのか全然わかんないし、私にそれを成し遂げないといけない義理は無いはずなのになんで勝手に決定なのか。
そして人を見下して上から下まで不躾に見て?性別確認とかセクハラですか?
いいよいいよ、100歩譲って私の今の格好が男物のライダースーツだから?そりゃわからんでもないさ。
でもちょっとまてや。この素晴らしきBカップが目に入らんか!?……入らんのか、そうか。
……はっ倒す。絶対。
「まあ、そんな些末なことはいい!」
良くないけどな。
その後もなんか演説の様な王子のお言葉は続いたけど、私はここが異世界なのだと頭で理解するのが嫌だったみたいで、早速現実逃避です。
そりゃさ、この歳で(三十路前ですが何か?)いきなり貴女が聖女ですとか目の前でいわれてみ?そりゃあ現実逃避もしたくなりますわ。
まあ、でも私は偉いので王子から言われたことをまとめるとですね。
・ここは異世界(わかるけど?)
・お前は聖女(アラサーにはきつい)
・魔物を浄化せよ(男なら討伐)
・帰り方?知らん。(いやそれ説明面倒臭いだけじゃ?)
・それよりこの世界を救える英雄となれる事を誇れ(何様?)
……という事です。
いやまじで、俺様何様王子様?
こっちの意見なんて丸無視ですわ。ってかその前に聞かれてもないし、もう聖女だって決定事項だし。
とにかくこの世界がいかに素晴らしく、この国がいかに凄いか、それでいて召喚に選ばれたことが栄誉であり、難しい術に成功した偉業を讃えよ、この世界の中でこの国を救える使命までも与えてやったのだから感謝して身を粉にして死ぬまで仕えて働け。
というのがあちらの正義で常識らしい。
……ははっ。笑うしかねえな。
「む。貴様なにを先程からニヤニヤと笑っているのだ」
「……失礼、殿下。もしよろしければワタクシのようなものに一つ発言をお許し下さりますでしょうか?」
「ふむ、よかろう!」
私がいきなり自分勝手に発言をせず、許しを乞うて一歩引いてからの言葉と態度に、異世界人にしては礼儀がなっている、と王子がさらにふんぞり返って言う。
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いや、今はそんな事どうでもいいや!
私はその場から立ち上がると息を最大限に吐き出し、吸った。
それはもう肺から腹からと。
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このバカ王子&その他大勢に向かって言おう。
……いや、叫ぼう。
さあ、皆さんご一緒に。
「うっせえ!うっせえ!うっせえわ!!!!!」
「「「「「「「…………!?」」」」」」」
謁見の間に、私の歌みたいな叫びが響いた。
私の近くにいた人は余りの大声に耳を塞いで倒れてるし、王子に至っては溢れんばかりに目を見開いている。
「なんや黙って聞いとったら都合いい事ばっか言いくさってからよお!ここはブラック企業なんか!あん!?そげな危険で命はたかないけんこと、誰かハイハイ是非にィ言うて喜んでやると思っとんけ!!選ばれたとか知らんこっちゃねえが!きさん共が勝手に呼んで連れて来たんじゃ!なまじ聖女やらせるにしても言い方っちゅーもんがあるやろうが!それを名誉じゃ栄誉じゃとかええ事ほざきやかって、結局面倒事他人に押し付けてきさん共が楽ぅしたいだけじゃろが!こんド阿呆共が!!どつきあげてくらしあげるぞ!!!」
怒号の叫びは止まりません。
伊達に九州女やって無いので、言いたいことは言わせてもらいます。
地球の方言(ド級に汚い言い方で言ってやった)なんて意味わかん無いだろうけど殺意だけは伝わったらいいなって思います。
一通り言いたいこと言い終わったのでさっきの馬鹿王子と同じように真似してふんぞり返ってやった。
言いたいこと言ってスッキリ満足してたら、いち早く復活した王子が元から全身赤いのに、さらにほっぺや耳まで赤くして(多分めっちゃ怒ってる)こちらを震える指で指さして……
「こ、こいつを……地下牢に閉じ込めておけええ――ッ!!」
……と、叫びました。
ああ、地球にいる母さんお父さんお兄ちゃん弟妹、あと猫数匹よ。
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